第三話「旅」
そこは見覚えのない場所、そして知らない人がいた、しかし記憶にもやがかかるようにはっきり見えない、わからない。
(¥@さんそこにいる!)
(嘘!? おら!)
(お〜、&¥さんやる〜)
(あひる○&@体力△丈夫?)
(大丈夫だよ△○ちゃん)
(生き△○生きて$@○おうね)
何か聞き覚えのあるような声、だが知らない声、徐々に目の前の光景が離れて行く。
あひるはいつものように小鳥のさえずりと共にゆっくり目を覚ます。
「今のは......夢? ん〜」
あひるはふらふらねぼ家ながらもリビングへ向かう、リビングの机には、すでにリブが作った朝食が置いてあった、イグルドはすでに椅子に座っている。
「イグルドさんお早うございます〜」
「おはよう、どうした? 今朝はいつもより元気がないじゃないか」
台所から調理器具を片付け終えたリブがリビングにやってきた。
「先週も今みたいに元気ない時があったわね、なんかまた悪い夢でも見たの?」
「う〜ん......この前と同じ感じ、でも今回の方が少しだけはっきりしてたかな」
「どこかで聞いたんだけど、夢って記憶を頭が整理している時に見るものなんだって、もしかしたらあひるちゃんの失った記憶が戻りかけてるのかも。」
「私の記憶...」
あひるは失った記憶を思い出そうとしたが、今回も何も思い出せなかった、さらに夢の内容まで忘れてしまっていた。
「思い出せない......私の記憶、私の家族、私の友達、何も思い出せない......」
リブは、顎に手を当て何か考えているようだった、そして何か思いついたかのようにハッとした。
「それなら旅なんてどうかしら!」
「た、旅?」
「そう旅! 私達も長いこと旅をしていたの、旅は楽しいわよ! 色んな人に出会えたり、色んなことも知ることができる、もちろん辛かったり苦しい時もあったけど、それよりも得られるものは沢山あるわ! だからあひるちゃんも自分を探す旅に出るといいと思うの、それにこの半年間出かけたりして他の人と会ったこともないでしょ? 世界は広い! それにね、こんな小さい家じゃなくて、広い世界を見てきて欲しいし知って欲しい」
「自分探しの旅かぁ......良いかもしれない!」
「なら決まりね! 明日から出発よ!」、
「あ、でも......リブちゃんとイグルドさんとお別れになるんじゃ......前から話をしてもらって興味はあったけど、それに魔法もまだ......」
「別に一生会えないって訳じゃないわよ、寂しくはなるけどね、それに魔法は実は教えることは大体教えたのよね、後はあひるちゃんが物にできるかどうかよ」
「俺も賛成だ、旅に出て、そして俺たちに旅で得た物を聞かせて欲しい」
「でも......」
リブはあひるのところへ速足気味に向かい、あひるの両肩をがっしり掴んだ、あひるは驚き下を向いていた顔が一瞬で上がった。
「もう、まずは自分のことを解決しなさい! これは師匠である私からの試練です! その試練を完遂しその姿をもう一度見せに帰ってきて!」
「は、はい! 私は弟子として師匠が出した試練を完遂して再びここへ帰ってきます!」
あひるはリブのひと押しで少し強引に旅に出ることを決めた。
「それじゃあ、今日は私からあなたに教える最期の授業を行います」
「さ、最後の授業......」
翌朝......
今回は夢を見ずにいつも通りの朝、いつも通りにあひるは体を起こしリビングへと向かう。
「リブちゃん、イグルドさん、おはよう」
「おはよ〜朝ごはんできてるわよ」
玄関の扉の横には、おそらく用意してくれたであろう荷物が置いてあった。
「今朝はあひるちゃんが旅立つ前だから、栄養が沢山あるお魚にしました〜」
リブが机に出したのは、初めてこの家で食べた料理と一緒のものだった。
「あ! この料理懐かしいな〜、私がここで初めて食べた料理。」
「俺は朝にこれは重すぎると思ったんだが」
「だから朝はたくさん食べて栄養を貯めとかないとって言ったわよ? さ! いただきましょ!」
食後......
食事を終えあひるはお腹いっぱいに食べた、食器をかたしてリビングへ戻ってきた。
「それじゃ出発の準備をしましょうか!」
リブは玄関に置いてある、茶色い手作りのような袋を手に取り、あひるに手渡す。
「この中にお金が入ってるわ、このお金を使って宿に泊まったり、食料を買うのに使ってね、それと今日のお昼ご飯が入ってるから食べてね、でもその後は自力で食料調達をするのよ」
「わかった、サバイバル技術はある程度イグルドさんに教えてもらったから多分大丈夫」
「よし、あ、それとそれと」
リブは駆け足に台所の方へ向かった、しばらくすると何か布に巻かれた縦長の物を持って戻ってきた、リブはあひるの前でその布を取った、縦長のそれは魔法に使うための杖のようだった。
「はいこれ、これはメモリアルロッド
私が昔使ってた杖よ、かなり使い込んでるけど十分あひるちゃんの役に立てると思うわ、さすがに練習用はすぐ壊れそうだからね、大事に使ってね」
「良いの!? もちろん大事に使う!」
あひるは渡された杖を大事そうに抱える。
「それじゃ出発しようか」
「うん、また......会えるよね?」
「昨日も言ったでしょ? 試練を乗り越えたらまた会えるから」
「そうだね、じゃあまたいつか」
「うん、いつでも帰って来てね!じゃあ行ってらっしゃい!」
「行ってこい!」
「行ってきます!」
あひるは手を振りながら深く道のない森の中へと歩いて行く、それを見守り手を振るリブとイグルド、徐々に手を振り続けていたあひるが森の中へと姿を消していった。
あひるが見えなくなるとリブは軽いため息をついた。
「いつでも帰ってきてね......かぁ......嘘つきね、ここは迷宮の森、一度出たら全く違う森から出てきてしまう、帰るすべは私達だけが持っているのよ」
「その時が来れば俺たちがまた迎えに行けばいいさ」
「そうね、ねぇこれで良かったの?」
?「はい、ありがとうございます、これでようやく物語を進めることができます、御礼は必ずいたしますので」
「御礼なんてもうすでに貰ってるわよ、たくさんね」
?「そうですか、でもあの人はまだあげたりない、と言いますよ」
「かもしれないわね、さぁ、あひるちゃんがどんなことを成し遂げるか楽しみね」
あひるの冒険はこうして始まった、あひるはこれから様々な出会いが待っている、一方、とある夫婦が旅をしていた......
名はぼぼてん、そしてちゃびこ......
第3話完
次回から皆さんご存知のあの夫婦が登場します!
是非読んでください!次回!「旅人夫婦」