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婚約破棄は肉体言語

作者: 睡蓮

勢いで書いた第2弾(´・ω・`)

ヤマもオチもありません(´・ω・`)

「フェリーチェ!」


王族主催の夜会シーズン到来を知らせるシーズン最初の夜会でこの国の王子、ライアン・ファウスクロー第一王子が叫んだ


夜会も半ばでダンスや会話が盛り上がり皆が楽しんでいた

しかし、第一王子の声で演奏が止まりダンスが止まり会話が止まる


そして声のするほうへ皆の注目が集まる

そこには第一王子とその婚約者フェリーチェ、第一王子の隣にいるクレア伯爵令嬢が対峙していた


「まぁ…ライアン様、そのように大きな声を出すものではなくってよ?演奏が止まってしまいましたわ」


名前を呼ばれたフェリーチェ公爵令嬢がライアンを窘める

フェリーチェはワインのように赤く長い髪と月を写したような金の目、涼し気な目元にぷっくりとした赤い唇の通りすぎれば誰もが一度は振り返るような美人だった


「大事な話がある。みなも聞いてほしい」


ライアンは周りを見渡し片腕を広げた

そこだけを見ていれば、金の髪に正統派王子を思わせる整った顔、そして堂々とした立ち振る舞いで未来の王を彷彿とさせた


「フェリーチェ、お前との婚約を無かったことにしたい」


「……隣のご令嬢はどなたかしら?」


扇子を広げ口元を隠しスっと細めた目でライアンを射抜く


「っ…あ、ああ。クレア伯爵令嬢だ。クレアは優しく、私の心を癒してくれる」


フェリーチェの視線に一瞬、たじろいだがクレアの腰を力強く抱き自分の気持ちを伝えた


「ようするに、浮気……ですわね?」

獲物を見つけた獣のような鋭い視線

美しい見た目も手伝って心から凍りそうな寒気がした


「い、いや…浮気というわけでは…」


「フェリーチェ様!申し訳ありません…私が気持ちを隠しきれず伝えてしまったのがいけないのです。ですから、フェリーチェ様が私にしたことも黙っていようと思ったのです。ですが……」


クレアは胸の前で両手を組み、涙ながらに訴える

クレアの可憐な見た目と大きな目が涙に濡れる様子は守ってあげたくなるような雰囲気だった


「そうだ。様々ないやがらせをクレアにしたと聞いた。それを目撃した令嬢達もいる。未来の王妃となる者が感情で動くなどあってはならない。王妃として私の隣に相応しいとはいえないのではないか?」


(((感情で動いてるお前がいうなよ)))

会場にいる者達は声には出さなかったが、呆れた顔をしていた


「まぁまぁまぁまぁ、私が嫉妬をしたとでも?そしてあろうことかそこな令嬢に嫌がらせをしたと?本当にそう思っていらっしゃるのですか?」


「ライアン様を疑うなんてひどいわ!私にしたことは謝っていただければと…ただ……それだけでしたのに…」


俯き肩を震わせるクレア

国が違えばきっとその様子に心打たれる男性は多かっただろう

だが、住んでいる国が悪かった

正確には王族と上流貴族にある暗黙のルールが悪かった


「ふふ、ふふふふふ」


「何がおかしいんですか!」


「私がもし万が一にでも嫉妬をした場合、そのようなことはしませんわ。あら?でも今ここで浮気してます宣言した婚約者がいらっしゃるわね。ふふ、ふふふふふ…」


パチリと扇子を閉じライアンのほうへ歩き出した

ライアンの前まで行くと少し体勢を低くしたかと思った瞬間、素早い蹴りがライアンの左首にヒットした


「え?」


蹴りを繰り出したフェリーチェはドレスをふわりと翻し、よろめくライアンへ更に回し蹴りをした


「ぐっ…!」


「さぁ!立ちなさい!言葉は不要!肉体で語るのみですわ!」


フェリーチェはダンスを踊るかのごとくドレスを華麗に翻し次々に攻撃を始めた

ライアンはその攻撃に防戦一方

隙をついて攻撃するも躱されカウンターの一撃を食らう


「な…何を…っ!」


驚いて止めに入ろうにもただの令嬢でしかないクレアに止める術はない

誰かに止めてもらおうと周りを見渡しても誰も止めに入る者はいなかった


そう、この国の王族と上流貴族には何かあった場合、拳で語るという昔からのルールがあった

なぜそのようなルールがあるのか歴史の専門家でも未だに謎を解けないでいる

しかし、そのルールで今まであらゆる問題を解決してきているので肉体言語のルールが廃止になることはなかった


王族を敬う気持ちはどの貴族も変わりないが、肉体言語の場面になれば王族も貴族も問答無用のガチバトルへと発展する


「まだまだ甘いですわ!……ふっ!」


しばらく続いたバトルだったが、フェリーチェがうつ伏せに倒れそうになるライアンの首に足を掛け、ギュッと絞め技を出したところで終了した


「言いたいことはありまして?」


締まりすぎないようでも抜け出せないように力加減を調節しライアンが話せるようにした


「……今のでわかったんじゃないのか」


「さぁ?なんのことでしょう?」


「くそっ……。やっぱり俺にはフェリーチェが1番だ…」


悔しそうだがどこかほっとしたような表情のライアンを笑顔で見たあと、一歩も動けずにいたクレアのほうへと視線を移した


「クレア様、ライアン様の隣にいたいのであれば私と語り合いましょう?そこで私が納得したら私は潔く身を引きますわ」


今のバトルを見たあとのクレアには「ちょっと顔貸しな。最後まで立っていたほうがライアン様の婚約者な」に聞こえた


「あ…い、いえ。私…何か思い違いをしていたみたいです。嫌がらせも今思えばフェリーチェ様ではなかったように思いますわ」


クレアは物理的に叶わない相手から一刻も早く逃げたくて仕方がなかった


「あら…そうでしたの。見間違うこともありますわよね」


「え、ええ。思い違いで失礼なことをしてしまい申し訳ありません。私、そろそろお暇致しますわ」


クレアはフェリーチェに向かい綺麗な礼をして足早に会場を後にした


フェリーチェは足をライアンから外し立ち上がると扇子を手に持ち、演奏者へ演奏を再開するよう指示をだした

音楽が鳴り出すと会場は何もなかったようにまたダンスや会話で盛り上がった






◇◇◇◇◇


「それにしてもフェリーチェは相変わらず見事だったな」


翌日、城の一角にある東屋でライアンの幼なじみでライアン専属近衛騎士のルヴァルトが笑いながらお茶を飲んだ


「笑いごとじゃない。今回は自信があったのになぁ」


「前よりは強くなったよ。ただ、それより更にフェリーチェ様が強くなったってだけだ」


「差が縮まらない…」


「あきらめな。んで?もしお前が勝ってたら婚約破棄するつもりだったのか?」


「いいや。婚約をなかったことにすると言っただけで破棄するとは言ってない」


「はぁ?」


「……今回勝てたら……する……んだ」


「何だって?」


「だから!今回勝てたら、婚約じゃなくて結婚をしようと思ったんだ!」


「…………」


真っ赤になったライアンを見て本気でそう思っているんだろうということは伝わってきた


「あー……ちょっと聞いていいか?」


「なんだ」


「あの令嬢は何だったんだ?心が癒されるとかなんとか言ってただろ」


「ああ、あの令嬢は猫を飼っていてねお茶するときには必ず連れてくるんだよ。その猫が可愛くて癒されるんだ」


「……そうか。なんであの場で言ったりしたんだ?婚約者なんだから会う機会なんていくでもあるだろ」


「2人きりのときだと、勢いで言えないというか…肉体言語の前に躱されてしまうからな」


「……そうか。嫌がらせがどうのとかはなんだったんだ?」


「あれはクレア嬢がそう言っていただけだ。まぁそう言えばフェリーチェと語り合うことができるだろうと思って利用させてもらったが」


「……そうか。けど、婚約してるんだしいつかは結婚するんだろ。わざわざそんなことしなくてもいいんじゃないか?」


「良くないだろ!政略結婚とはいえ、自分の力でフェリーチェを自分のものにしたいんだ。そのためにはフェリーチェより強くなって力を示してこそだろ」


「……そうか。」


ルヴァルトは男らしさの発揮する方向が若干間違ってる気がしないでもなかったが、さっきまで落ち込んでいた幼なじみがやる気に満ちているのを見て何も言わず紅茶を飲んだ


「今日も空が青くて平和だな……」

王子はMなんですかね(´・ω・`)

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