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96. 追う者、追われる者

不正スキル編、始まります!

バトルメイン、全21話です。

そして世界観の核心にも……?

 ロード王国王都、そこに居を構える冒険者ギルド本部に一人の女性が訪ねてきた。すらっとしたスタイルに大きな胸、誰もが振り返るであろう美貌の持ち主である。


 女性の名はナイトメア。淫魔王として魔人たちの国に君臨する王であった。ナイトメアは受付嬢に声をかける。


「ここにトールという冒険者が居ると聞いたのだけど、間違いないかしら?」


 声を掛けられた受付嬢はいつの間にか目の前にいたナイトメアに驚き、次にその美貌に驚いた表情を見せた。しかしすぐに驚きを抑え込み返答する。


「Sランク冒険者のトール様の事でしたら確かにこのギルドを拠点とされています」

「会えるかしら?」

「生憎と依頼に出ておりまして、しばらくは戻りません」

「ではどこに行ったのか教えていただけるかしら?」


 無関係者にはお教えできない規則でして、そう答えようとした受付嬢は次の瞬間には規則の事を忘れ依頼表を確認していた。


「少々お待ちください……、辺境のヨハンという街に出向いています」

「そう、ありがとう」


 ナイトメアはそう言うと、冒険者たちの横を通り過ぎギルドを出ていった。ナイトメアは誰もが振り返るほどの美貌をもつ。しかし、ギルドに居た冒険者たちはなぜか一人も振り返ることはなかった。まるでナイトメアに気づいていないかのように。




 ナイトメアの目的は異世界人の捜索と抹殺である。他4名の魔王も総出で異世界人を捜索していた。だが結果は芳しくない。竜魔王、鬼魔王、悪魔王が担当した容疑者は全てはずれであった。


 そして血魔王ブラッドはというと……



「がはっ!」


 郊外の草原で、口から血を吐き膝をついていた。普段から血色の悪い顔はさらに血の気を無くし、体を巡る魔力は尽きかけていた。


「おいおい、お前魔王なんだろ? もっと頑張れよ。」

「ぐっ……!」


 ブラッドは正面に立つ少年を睨みつける。しかし少年は魔王の殺気を前に顔色を変えず、油断を見せていた。


 隙だらけ。しかしその隙を突けない。ブラッドのあらゆる攻撃は無力化され、逆に自分は圧倒的な攻撃力で削られて今に至る。吸血鬼としての再生能力で耐えてきたが、魔力が底をついた今ではそれももう続かない。


「忌々しい異世界人めっ!」

「もう逃げる力もないか? じゃあ死ね」


 少年はブラッドに近づき手を振りかざした。


「テツジいいい! おのれえぇ!!」


 テツジと呼ばれた少年はブラッドの頭をはたいた。その手は抵抗なくブラッドの頭を貫通し、ブラッドは手形にくり抜かれた頭から血を流し地に伏したのだった。














 この世界の人々は日の出と共に目を覚ます。新聞配達で早起きに慣れているつもりだった私でも眠気を感じるほどの早起きだ。やかましい目覚ましは私が起きるまでしつこく声をかけてくる。


『アキハ、おい起きろ。朝だぞ』

「……明けない夜はいつ訪れるの」

『寝言は起きて言え』

「うるさい目覚ましだなあ」

『誰が目覚ましだ。私はそんな安いスキルではない』

「はいはい、万能インテリジェントスキルのレプリカ様だもんね」


 私にしか聞こえない声とのやり取りで意識が徐々に覚醒する。目を覚ました私は荷物をまとめると宿を出た。


 そして出店で串焼きを買って食べ歩いているとレプリカが声をかけてくる。


『アキハ、尾行されている。数は7』

「わかった」


 私は街の外に出た。そのまましばらく歩いていく。途中で道をはずれて人気の無い所に着くと、追ってきた男たちが姿を現した。


「アキハ・ミヤゾノだな?」


 男の一人が剣を抜きながらそう問いかけてくる。


「だったら何?」

「神のためにここで死んでもらおう」

「やっぱり教会の関係者かぁ」


 私はため息をつく。教会に異世界人だとばれてから数日、毎日のように教会からの刺客が襲ってきていた。いい加減うんざりだ。一般人に迷惑がかからないようにわざわざこんな街の外に来る羽目になるし。


「悪しき力の持ち主よ、我が聖なる剣の錆にしてくれよう!」

「聖剣を錆びらせてどうすんのよ……」


 男たちが斬りかかってくる。私は見てるだけ。その時には既に男たちは私の魔法の直撃を受けていて気絶した。


『全員気絶。死者なし』

「ナイス調整」

『私に掛かれば当然だ。だがいいのか? 生かしておけばまた狙ってくるぞ?』

「いいよ。殺すのは同じ異世界人だけで十分だし」


 この世界に来てからもう数か月。早く他の異世界人を見つけて不正スキルを揃えないといけない。その焦燥感が私を突き動かしていた。


「本当に不正スキルを全部集めると日本に帰れるのよね?」

『もちろんだ。どんな願いも叶う。神にだってなれるぞ?』

「神なんてどうでもいいわ」


 どうして私がこの世界に送り込まれたのかは分からない。でも、私はなんとしても日本に戻る。絶対に。


 そのために同郷の人を殺す覚悟は、もう出来ている。


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