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93. 不正

 レイジはドラゴンを前にして逃亡した。それが私の記憶です。しかし、次の日にはレイジはドラゴンを討伐した英雄となっていました。


「レイジ様さすがですわ!」

「助けてくれてありがとうございましゅ」

「その、好きな女性のタイプってありますか?」


 レイジは今、少女たちを侍らせてギルドでくつろいでいました。少女たちはレイジによってドラゴンから救われたらしくベッタベタです。周囲の男たちがレイジに嫉妬の目を向けていますが、レイジは一人でドラゴンを倒せる実力者ですので絡んだりはしません。


「ははっ、かわいい子はみんな好きだよ」

「「「キャー!」」」


 イラッ。


 傍から聞いていて虫唾が走ります。なんですかこの見境の無い男は。少女たちも少女たちです。こんなののどこがいいのか。


 世間はレイジを英雄と認めていますが私は認めません。


 前までは自分の記憶がおかしいと思っていましたが、反乱騒動の痕跡を見つけた今、私は自分の記憶に疑問を持ってはいませんでした。ここまで露骨だと誰だってそう思います。


 レイジが人々の記憶に何かしたに違いありません。私の記憶違いの内容は全てレイジに都合がいいのです。



「で、どうするの?」


 エルーシャがそう聞いてきました。この事はエルーシャには既に話しています。


「まずは証拠を掴まないといけません」


 私は鑑定メガネをかけました。私の考えが正しければ、レイジは記憶に干渉できるスキルを持っているはずです。「記憶書き換え」とか「認識操作」とかそんな感じのスキルをです。


 私はロビーでイチャイチャするレイジを盗み見ました。鑑定。




===============================

 人間 レイジ・キタガワ 男 17歳

 レベル:38

 状態:馬鹿


 HP:1662/1662

 MP:1036/1620

 筋力:710

 耐久:685

 俊敏:622

 知力:557


 スキル:「火魔法 LV2」「計算 LV1」


 不正スキル:[再構築介入 LV2]


===============================


 うーん……どこからツッコめばいいのでしょうか。


 ではまず名前。なんと家名を持っています。つまりレイジは貴族か王族ということです。キタガワなんて家名聞いたことないですが、他国の出身なのでしょうか。


 状態が馬鹿って……。


 ステータス高いですね。Aランク上位くらいでしょうか。一般人の15倍くらいあります。


 スキル少な! しかも弱!


 不正スキルって何でしょうか。再構築介入?



「どう? スキル持ってた?」


 エルーシャがそう聞いてきました。あれだけ自信満々に記憶操作が云々と言っていたのが恥ずかしくなりました。


「残念ながら答えはノーです」


 私はエルーシャにレイジのステータスを伝えました。


「不正スキルって何?」

「さあ?」

「スキルの効果って鑑定で分かんないの?」

「スキル鑑定というスキルがあります。ちょっと待ってください。今から付与します」


 私は鑑定メガネに「スキル鑑定」を付与しました。そしてレイジの鑑定結果から[再構築介入]を鑑定します。



=====================================

 [再構築介入]


 不正スキルの一つ。

 世界の再構築に干渉し任意に世界を改竄できるようになる。干渉できる度合いはレベルによって変化する。

 また他の不正スキル所持者を殺害することで不正スキルを奪えるようになる。


=====================================



 世界を、改竄?


 私はそれがどれほどの力なのか想像しました。使用例はレイジの行いです。そして、この力がとてつもない力である事を理解しました。



 このスキルは過去を変えることができるのです。



 記憶操作どころの騒ぎではありません。過去の出来事を、自分の人生を、そして他人の人生をも書き換える事ができるのです。


 無論制限はあるのでしょう。他人が狩った魔物を自分が狩った事にしている事から、恐らく生き死にの結果は変えられないのだと思います。そうでなければ今生きている魔物を昨日狩ったことにすれば良いのですから、わざわざ他人の成果を奪う必要はありません。


 それでも十分すぎるほどこのスキルは強力です。レイジのレベルは38。ここまでレベルを上げるにはかなりの数の魔物を殺す必要があります。レイジは他人の狩った魔物を自分が狩った事にする事で、その経験値をも自分の物にできるのです。


 その結果、レベルが高いのに戦闘経験がないという状態なのでしょう。ドラゴンから逃げ出すわけです。戦う覚悟が出来ていないのですから。



 やはり私の記憶は間違っていませんでした。私の記憶が正しい歴史で、レイジによってそれが捻じ曲げられていたのです。


 反乱騒動でレイジは、貴族による平民からの搾取の不当性を訴えていました。しかし他者から搾取をすると言う行為をレイジ自身がやっていたのです。自己中を極めています。


 私が止めなければ、レイジは他人の成果を奪い続けるでしょう。




 証拠は掴みました。なら後は罪を追求するだけです。



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