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61. 動物人間

犯罪ギルド編、全17話です。(←長い!)

かつてない激闘をお楽しみいただければ幸いです(注意!死者が多数発生します)。


 薄暗い夜道を二人の衛兵が歩いていた。周囲は寝静まっている中、石畳を歩く音だけが強調され響いていた。彼ら衛兵はヨハンの治安を守るために巡回をしていた。


「ったく、こうも毎晩巡回じゃあ寝不足になるぜ」


 衛兵の一人がそう言った。眠気を紛らわすためだろう。その声は少しやつれていた。


「しかたないだろ。ここ最近事件が多発してるんだからな。巡回が増えるのも仕方ない」

「切り裂き魔に放火魔だろ? 犯人共もよくもまあ眠いの我慢して犯罪にいそしむもんだ」

「悪いやつらは不眠症なのかもな。他にも細々とした事件も起こっている。気を抜きすぎるなよ。いつ遭遇するか分からんからな」

「分かってるよ」


 ヨハン建設祭から数日、ヨハンでは急激に犯罪数が増えていた。祭りに乗じて犯罪者が集まってきたのだろうか。住民からすれば迷惑極まりない事である。そして駆り出される衛兵にはかなりの負担がかかっていた。愚痴の一つ二つ出ても当然である。


「どうせならかわいいねーちゃんを追いたいぜ。何が悲しくて犯罪者を探さなきゃいけないんだ。そう思うだろ?」

「まあな」


 そんなことを言いながら歩き回ってしばらくし、二人が商業地区に差し掛かった頃である。


「きゃああああああああああ!!!」


 突如として女性の悲鳴が聞こえてきた。二人は一瞬目を合わせ、すぐに声のした方へ向かう。


 そして曲がり角を曲がったところで二人が見た物は、全身から血を流し倒れた女性と、その横にたたずむ一人の男だった。


「出やがったな! 切り裂き魔!」


 衛兵の一人が剣を抜いて男に斬りかかる。その間にもう一方は女性に駆け寄り手早く傷を確認した。女性は体中を斬られ死んでいた。


「くそっ、死んでる!」


 女性の死を確認した衛兵は剣を抜き同僚に加勢した。相手は連続切り裂き魔、一対一では危険だ。


 状況は二対一、しかしその程度の数の有利は、切り裂き魔にとっては有利たりえなかった。切り裂き魔の剣が衛兵の一人に迫る。それを阻止するためもう一方が背後から切り裂き魔に斬りかかったが、切り裂き魔が新たに抜いた剣に阻まれた。


「二刀流か!?」


 そう驚く間にも切り裂き魔の剣が衛兵に迫る。とっさに剣で受けようとした衛兵だったがそれは叶わなかった。剣で斬撃を受け止めたと思った次の瞬間、衛兵は全身を斬り裂かれていた。致命傷である。


「また殺してしまった……。もったいない」


 切り裂き魔がそうつぶやく。


「てめえ! よくも!」


 残った方の衛兵が激昂するが、怒りで大振りになった攻撃は切り裂き魔には届かなかった。腕を斬られ剣を落としてしまう。さらに足も斬られた衛兵は逃げることもできなくなり地面に倒れ伏す。


「よし、今度は殺さずに済んだ。うれしいなあ」


 切り裂き魔はそう言いながら倒れた衛兵を見下ろした。


「ぐふっ……てめえ、こんなことして何が、うれしいんだ……」


 衛兵の問いに切り裂き魔はにやりと笑った。そして問いに問いで返す。


「人間はねえ、特別な存在だと思う? 万物の霊長だなんて言うけれど、本当にそうかな? 人間が他の動物よりも上だと思うかい?」

「そりゃ、そうだろ」

「僕はそうは思わない。人間だって動物だって、肉の塊でしかない。解体すれば分かる。同じ肉だ。なのに人間の多くはそれを認めない。考えもしない。だから教えてあげてるんだよ。人の体が動物と違わないってことを、その体を解体しながら」


「この……クソサイコ野郎!」


「そうか、まだ分かってくれないのか。じゃあ分かるまで斬り刻んであげよう。大丈夫、すぐには殺さないから。安心してね」

「クソがッ!!」

「うるさいからまずは喉から斬るね」



 次の日の朝、ヨハンの住宅街で三名の男女の遺体が見つかった。そのうち二名の死体は衛兵であり、三名とも死因は失血死であった。そして衛兵の一人の死体は解体されていた。


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