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6. 全力疾走

「おらぁっ!」


 ダルドさんが巨大ミミズに斬りかかりました。相手は大きかろうと所詮はミミズ。彼の剣はたやすく巨大ミミズを切り裂くと思われました。


 しかし、彼の剣は傷を与えることができませんでした。ミミズのまとう粘液が刃を滑らせ斬撃を防いだのです。


「くそっ、攻撃が通らん!」


 ダルドさんが吐き捨てるように言いました。剣士の彼では相性が悪そうです。


「ダルドどいて! アクアランス!」


 メリーさんが水魔法で攻撃しました。彼女は火力の花形である魔法職、これなら効くでしょうか。水でできた槍がミミズの頭に命中します。衝撃でミミズが後ろにのけぞりました。


「今のうちに逃げましょう!」


 私は撤退の指示を出しました。ここはダンジョン。今は相手が一体ですが、騒ぎを聞いて他の魔物が集まってくる可能性があります。逃げられるうちに逃げるが吉です。私達は入口に向かって走り出しました。


「ジェミーはどうした!? どこに行った!」


 ダルドさんが声を荒げます。


「さっき一人で逃げていきました。私達が戦っている隙に」

「畜生!」

「GYAAAAA!」


 巨大ミミズが咆哮をあげながら追いかけてきました。


「ぎゃあああああ!」


 私達は悲鳴を上げながら逃げます。元来た道を右へ左へ、曲がりくねった一本道を駆け抜けます。そしてジェミーさんに追いつきました。


「てめえっ! よくも俺たちに擦り付けやがったなっ!」

「あ、あんたら、なんでこんなとこにいるんだ!」

「いいから走って! 追いつかれるわよ!」

「お、置いていかないでくれ!」


 ジェミーさんが徐々に遅れます。どう見ても金塊を背負っているせいですね。


「そんなもん置いてけ! あほが!」

「いやだ! 俺は金持ちになるんだ!」

「GYAAAAA!」


 巨大ミミズが徐々に間を詰めてきました。


「ぎゃあああああ!」



「このままじゃ追いつかれるわよ!」

「足止めしてみます! このまま走ってください」


 私はそう言うとポケットから魔石を取り出しました。魔石というのは魔力を多く含む鉱石の総称です。それぞれ決まった属性があり、その属性の魔法を使う際に効果を高める触媒となります。この魔石は火属性のCランク、そこそこの値段が付く代物です。私はスキルを発動しました。


『足止めをお願いします』

『了解した。この身を捧げよう』


 私は魔石にお願いをすると、走りながら後ろに魔石を放りました。そして巨大ミミズが魔石を踏んだ瞬間、魔石は自爆しました。


 私のスキルは物と話すだけではありません。命を与える時に、スキルも与えることができます。今回与えたスキルは「自爆」。どうか安らかに魔力へと還ってください。


 爆発の衝撃で洞窟の奥が崩壊しました。ミミズは押しつぶされて死んだようでした。


「やったか!?」

「分かりません」


 洞窟は完全にふさがってしまっていました。


「そんな、せっかく見つけた金鉱脈が……」

「急ぎましょう。ここも崩れるかもしれません」


 私たちはうなだれるジェミーさんを連れて洞窟を出たのでした。 


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