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5. 命より重い

 私達3人は未知のダンジョンに足を踏み入れました。入口は人一人通るのが精いっぱいの広さでしたが、中は結構広そうです。水平に通った洞窟の天井が落ちて入口となったようです。奥は暗い空間が広がっていて見えません。


「待って、明かりをつけるわ」


 そう言ってメリーさんが松明に火をつけました。火の光が洞窟内を照らし、岩肌が光を反射します。キラキラと光る岩肌が幻想的です。


「この岩、普通の岩ではないわね」

「ニスのようなものでしょうか。表面に何か塗り固められていますね」

「そんなことよりジェミーを追おうぜ。足跡がある」


 私たちはジェミーさんの足跡をたどっていきました。それほど離れてはいないはずです。曲がりくねった一本道を進むにつれ、前方から光が見えてきました。どうやらジェミーさんに追いついたようです。


「メリーさん、火を消してください。見つかります」


 私たちは火を消して光のほうに近づきました。そして曲がり角からジェミーさんの姿を覗き見ました。



 ジェミーさんの周りは大量の金塊であふれていました。地面も、壁も、天井も金で埋め尽くされています。ジェミーさんは足元の金塊をはがしリュックに入れる作業に没頭していました。


「あいつ、これを独り占めにしていたのか」


 ダルドさんがあきれた声で呟きました。


「これ全部売ったら、10年は遊んで暮らせるわよ」


 メリーさんは興奮気味です。


「ギラギラしていて目に毒ですね」


 私はそこまで興奮しませんでした。最近街で出回っている偽の金の存在を知っているからです。まだこれが本物の金とは限りません。むしろ、これが偽金の正体では。


「サンプルだけ採って帰りましょう」


 ここはダンジョンです。いつ魔物が出るかわかりません。金塊を背負っていれば逃げるのも困難になります。


「うわあああああああああ!!」


 その時ジェミーさんの悲鳴が上がりました。ジェミーさんの方を見ると、それはいました。ピンク色の皮膚、木の幹ほどもある太い体、長い全長、全身を覆う粘液。その正体は、


「巨大ミミズ!!?」


 心配したそばから魔物が出てきました。巨大ミミズはジェミーさんをエサと認識したのか、口を広げました。円状に並んだ牙が三段に重なっています。気持ち悪い光景です。絶対に食べられたくありません。


「ジェミーさん、逃げてください!」


 私は尾行を中止しジェミーさんに声を掛けました。ジェミーさんはこちらを見て驚いた顔をしましたが、すぐに立ち上がってこちらに逃げ始めました。金塊の入ったリュックを背負って。


「そんなもの捨ててください! 追いつかれますよ!」


 命より金の方が大事なのでしょうか。


「あれじゃ追いつかれちまうぞ」

「しかたない。援護するわよ」


 ダルドさんとメリーさんが構えました。どうやら戦うしかないようです。

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