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40. 新人野外研修

新人野外研修編、全5話です。

 皆さんこんにちは。マリーンです。冒険者と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。


 誰も訪れたことのない秘境に赴き、貴重な素材を採取する冒険でしょうか。それとも、危険な魔物を打ち払い民衆からたたえられる英雄譚でしょうか。


 もし冒険者になってこれらのような活動をするには、ある条件を満たす必要があります。それは、野外研修を受けることです。



 冒険者ギルドでは、魔物との戦闘に関わる依頼を受けるための研修の受講を義務付けています。これは冒険者の死亡を減らすための規則です。何も知らない素人がいきなり森に入っていっても、魔物のエサになって終了ですよね。


 魔物を狩るつもりがこっちが狩られたなんてことになれば、冒険者を送り出したギルト関係者はつらい思いをするでしょう。主に遺族への対応で。弱肉強食、人間には大自然の掟は厳しいのです。


 よって街の外で活動するための最低限の知識と経験を得てもらう研修、それが野外研修です。この研修を受けないと冒険者ランクは最低のEランクのまま、受けるとDランクに昇格し街の外で活動する許可が下ります。


 まあ、研修を受けたからと言っても大抵の人は物語のような冒険はできませんが。弱いので。



「研修の準備めんどくさー。冒険者家業は自己責任がルールなんだから、わざわざこっちが指導しなくていいじゃん」


 エルーシャが愚痴を言いました。もうすぐ月一回の野外研修です。私とエルーシャはその準備に大忙しでした。


「冒険者ギルドは冒険者の安全に配慮していると内外に示す必要があるのですよ。そうでないと事故があった時に責任を追及されかねませんからね。危機管理の怠慢だ、とか」

「そんな裏事情は聞きたくなかったよ……」

「人間は相手に非があると思うとどこまでも非情になれますからね。責任逃れできるようにしておかないと、被害者が付け上がります」

「もうちょっとこう、人命第一とかの精神はないの?」


 エルーシャが遠い目をしています。


「私は人命第一のために研修の準備をしていますよ」

「どの口が言うか、どの口が。さっきまで腹黒な権力者みたいなこと言ってたくせに」

「はて、何の事やら」


 私たちは軽口を叩き合いながら準備を進めました。



 そして野外研修当日となりました。まだ日が顔をのぞかせたばかり。日の出をしらせる鐘が時計塔から鳴り響きます。私は街の門前の広場にやってきました。そこで研修に参加する新人冒険者の集合を待ちます。


 それからしばらくして、研修の参加者がそろいました。研修生26名、指導を行う冒険者10名、ギルド職員5名です。


「ではそろったので出発しましょうか」


 私たちは門へと向かいました。門の前では外へと出る人や馬車が短い列を作っていました。街の出入りは衛兵の審査をパスしないといけないので、審査を待つ人々が列を作っているのです。私達も列に加わりました。


 審査と言っても、街を出入りする人は大体が通行許可証を持っているのでそれを見せるだけで済みます。というより細かく審査していては門が大渋滞してしまうので簡潔にせざるを得ないというのが実情です。許可証を持っていない人だけは、鑑定を受け指名手配されてないかなどのチェックが入ります。犯罪者が出入りしては大変ですからね。


 そして私たちの審査の番が来ました。冒険者とギルド職員は研修後に発行される許可証を見せれば自由に街を出入りすることができます。また、今から研修を受ける新人は仮許可証を発行してあるので例外的に出入りできます。私達は問題なく審査を終えました。


 そのとき、向かいの方の審査で騒ぎが起きました。どうやら街に指名手配犯が入ろうとしたようです。犯人は自分が指名手配されていると知らずに審査を受けたのでしょう。犯人を衛兵たちが取り囲みました。そして捕縛しようと飛び掛かった衛兵でしたが、犯人はなんと衛兵をジャンプして飛び越えました。そして街中に入るためこちらへと走ってきます。あ、犯人が剣を抜きました。


 私はブレスレットで犯人に攻撃しました。風魔法のエアーボムが直撃し、犯人は吹っ飛び気絶しました。こうして犯人はあえなく逮捕されました。指名手配なら賞金がかかっているので臨時収入ゲットです。


 ちょっとした事件に巻き込まれたものの、私たちは無事街の外に出ました。研修は既に始まっています。これから野営地点まで徒歩で移動です。重い荷物を持って数時間の行軍は慣れていても辛いです。新人たちの最初の試練が始まりました。

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