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28. 救いのない話

 ロックさんは重傷によって気を失いましたが、回復員の懸命な治療によって一命をとりとめ、治癒院に移送されました。


 キャッシュさんは完全に戦意を喪失し捕縛されました。


 そして、今回の作戦によって他2体の魔人が捕まり、3体の魔人と1人の人間が家から逃走しました。




「何で逃げられてるんですか!」


 私は頭を抱えました。一網打尽にできなかった以上、今後も魔人を追跡しないといけません。仕事が終われません。私も逃げたい。


 突入部隊によると、魔人たちの内1体は窓から逃げ出しました。これがキャッシュさんです。そして、3体の魔人と1人の人間が床下に掘られていた抜け穴から逃走、残りの2体はそのための足止めをした末に捕らえられました。


 調査の結果、抜け穴の先は下水道だと分かりました。下水道はヨハンの地下全域に張り巡らされており、点検補修のために人が通れるようになっています。


 逃亡者たちは行方をくらませていました。



 そして次の日、衛兵から私に報告書が届きました。捕らえた3体の魔人の尋問結果です。


 2体の魔人はだんまりを続けていましたが、キャッシュさんは素直にすべてを吐きました。


 その結果、魔人6体はやはり行方不明となっていた蝕腫病患者でした。そして魔人と一緒にいた人間は、私が追っている人物、ツモアだと分かりました。


 過去の瘴気がらみの事件に裏から関わり手引きした、謎の人物です。今まで名前しか明らかになっていませんでしたが、ついに手掛かりをつかみました。


 キャッシュさんの証言によると、ある日彼の元にツモアが現れ、ある錠剤を渡されたそうです。その薬は、今まで開発されていなかった蝕腫病の特効薬でした。


 ツモアはその薬なら蝕腫病が治ると言い、同時に副作用もあると言いました。その副作用とはなんと、魔人になるというものでした。


 しかし、キャッシュさんも他の5人も、薬を飲むことを選択しました。蝕腫病の苦しみから逃れられるなら死んでもいい、そう思うほどに彼らは闘病生活に疲れ切っていました。


 そうして魔人となった彼らはツモアのもとに集ったのです。



 また、キャッシュさんの証言からツモアの目的も明らかとなりました。その目的とは、人間が魔人を受け入れる世界を作る、というものでした。そしてそのために魔人の研究を行ってきた結果、蝕腫病の特効薬ができたらしいそうです。


 魔人たちは恩人であるツモアのために、その目的に賛同し協力することにしたそうです。


 キャッシュさんの襲撃は、父への恨みと、魔人となり力を得た事があいまって衝動的に商会を襲撃した、というのが真相でした。それによって魔人たちの存在が明らかになったのですから、何が幸いするかはわかりませんね。


 後、魔人たちの隠れ家を調べた結果、蝕腫病の特効薬と瘴気清浄機が見つかりました。特効薬は薬師ギルドに送られ現在調査中。瘴気清浄機は回収され瘴石は前回と同様に厳重に管理されることになりました。



「それにしても、病気になったからって自分の息子をぞんざいに扱うなんて、ひどい話だよね」


 エルーシャがそう言いました。私達はいつもの定食屋でお茶をしています。


「そうですね。会長さんよりむしろロックさんのほうが父親してましたよ」


 私は紅茶を口に含みました。うーん、まずい。


「捕まった魔人たち、どうなるんだろね?」

「過去の例から考えると、処刑の可能性が高いしょうね。特にキャッシュさんは被害者を出しましたし」

「そんなの救いがなさすぎじゃない? 彼らもツモアの被害者と言えば被害者じゃん?」

「魔人となるのを選んだのは彼らです」


「悲しい話だね」

「ええ、まったくです」


 私は残りの紅茶を一気に飲みこみました。その紅茶の味は、ひどく後味が悪いものでした。

これで蝕腫病編は一応終わりです。

事件の残りは次回、ツモア編に引き継ぎます。


次回予告:ツモア編

 魔人たちの運命は。黒幕ツモアは何をなさんとするのか。過去最大の戦いを前に、マリーンのスキルが本領を発揮する! 乞うご期待!

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