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21. 蝕腫病と行方不明

この話に出てくる病気は架空の物です。現実の病気その他とは一切関係ありません。

 ある日、ギルドにある依頼が持ち込まれました。街の治癒院に泥棒が入り、患者のカルテを盗まれたそうです。依頼の内容はカルテの捜索です。


「カルテなんか盗んでどうするんだろうね?」


 エルーシャが疑問を口にします。


「個人情報を盗むなんて極悪非道ですね」

「連続鑑定魔のマリーンが言うなよ」

「私は2回つかまって2回とも無罪でしたが、何か」

「などと犯人は証言しており……」

「あなたは自分の仕事をしてください」


 私は捜索依頼を掲示すると別の業務に取り掛かりました。




 それから1週間が経ちました。カルテ捜索の依頼は冒険者に受注されたものの、まだ発見には至っていません。ちなみに犯人の捜索は別途衛兵が行っています。


 その間に、ある依頼が複数、ギルドに持ち込まれていました。その依頼とは行方不明者の捜索です。ここ数日で同じ依頼が5件。すべての行方不明者が、ある不治の病にかかっていました。


 その病とは、蝕腫病。突然変異を起こした細胞が際限なく増殖し腫瘍となる病気です。この病の特徴は、腫瘍が徐々に大きくなり時には別の場所にも転移して体を蝕む点です。発症するのは主に高齢者です。


 治療法はありません。ただ運動を控え食事を減らすことで代謝を減らし、腫瘍の増殖速度を遅らせる延命法があります。しかし、副次的な症状による苦痛と死ぬまで戦うことになります。あまりの苦しさに自殺をしてしまう方もいるほどです。


 そんな蝕腫病の患者がすでに5人行方不明。しかも5人とも、珍しく若くして発症した患者でした。


 そしてまた一件、捜索の依頼が来たようです。私は話を聞くことにしました。



 と思ったら来られた方、依頼人の使いでギルドに来たようです。依頼主が忙しいため私に出向いてほしいとのこと。貴族など高い地位の人が依頼を出す時にはよくある話です。




 私は依頼主の使用人であるというロックさんに案内され、ある商会のもとにやってきました。

 そこは街では大手の一つに数えられる豪商の本店でした。私は会長の執務室に通されます。



「私の息子が昨日から行方不明となった。ギルドにはあれの捜索を頼みたい」


 商会の会長はこちらに目を向けることなくそう切り出しました。机に山積みとなった書類仕事で忙しそうです。


「捜索依頼ですね。それでは息子さんについて詳しく教えてください。名前はなんといいますか」

「キャッシュだ」

「年齢や容姿は」

「……詳しいことはロックに聞け。私は見ての通り忙しい身でな」

「居なくなった時の状況などもお聞きしたいのですが」

「すべてロックが知っている。ロック、彼女を客室にお通ししろ。そこで話をしてやれ」


 私は執務室を追い出されました。呼んでおいてまともに話もしないとは。


「ではこちらへ。詳しく話させていただきます」


 ロックさんに連れられ私は客室に案内されたのでした。

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