17. 空虚な体
フルーさんのステータスはこうなっていました。
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人間 フルー 男 25歳
レベル:-
状態:死亡
HP:0/71
MP:34/34
筋力:58
耐久:40
俊敏:39
知力:51
スキル:【フルー LV1】「細工 LV7」「彫金 LV5」「料理 LV2」
「計算 LV1」「裁縫 LV1」
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スキルには格があり、「通常スキル」<『上位スキル』<【特異スキル】と強力なものになります。そして、フルーさんは 特異スキルを持っていました。【フルー LV1】、おそらく世界で一つしかないユニークスキルでしょう。
私は最初、これがどんなスキルか分かりませんでした。ですが次の瞬間、ある発想が私の中を駆け巡りました。それを否定してほしくて、私はメガネに質問をします。
『フルーさんの魂が違う形で残っている可能性はありますか』
『ないな』
『スキルが心を持つことがあるかもしれないじゃないですか』
『そういうスキルがある可能性は否定しないが、あれは違う』
私は残酷な現実を目の当たりにしました。それが本当なら、フルーさんは、フルーさんだと思っていたものは、フルーさんの真似をしているだけのただの死体に他なりません。
私は最初、フルーさんは理性あるアンデッド的な何かだと思っていました。ですが違いました。
先ほどの談笑も、それ以外のふるまいも、それはフルーさんが生きていたらそう行動するからそう動いただけ。スキル【フルー】が再現しているだけだったのです。
そんなの、虚しすぎます。
「お待たせしました。お釣りです」
フルーさんが戻ってきて、お釣りを手渡してきました。
「あれ? どうかされましたか? 体調でも悪いのですか?」
動揺が顔にでていたのでしょう。フルーさんが私を心配します。
信じたくありません。ですが、私は最後の確認をせずにはいれませんでした。
「あの、以前に死にかけた経験はありますか」
「ああ、数日前に道で転んで頭を強く打ちました。まる一日意識が戻らなかったらしいですよ。医者の話では一回心臓が止まったそうですが、奇跡的に動き返したそうです。ひょっとして居合わせた方ですか?」
おそらくその時にフルーさんは亡くなったのでしょう。そしてスキル【フルー】が肉体の後を継いだのです。
経緯も確認できました。彼は間違いなく死体なのでしょう。ですが終わりではありません。私にはまだ彼の処置を決定するという仕事が残っています。
バタン!
そのとき店のドアが開かれ、大勢の衛兵が突入してきました。何事でしょうか。私は無意識に身構えます。そこに部隊の隊長らしい人が来てこう言い放ちました。
「貴様がアンデッドなのは分かっている! 大人しく駆除されるがいい!」