14. 準備完了
私のスキルで物に生まれる自我は、毎回ランダムです。そしてどうやらこのメガネは変態のようです。
『変態ではない。私は人間を愛しているだけだ。その全てを覗き、しかし手は出さない、まさに紳士というものであろう』
いいえ、あなたは変態です。もしこの場にハンマーがあれば叩き壊していたかもしれません。
『他人のステータスを許可なく調べるのは違法行為です』
『しかし、君は他人を鑑定するために私を生み出したのだろう?』
『あなたは趣味ですが、私は仕事です。仕事なので仕方なくと言うやつです』
『では私も君の仕事のために仕方なく鑑定すればいいということか』
『そういうことです』
そう、仕方なくです。これは仕事。死者を探すために行き交う人々を鑑定して回る必要があります。これは必要な事なのです。
「まずは性能を確認しないといけませんね」
私はメガネをかけてエルーシャを盗み見ました。メガネが鑑定した情報がレンズに表示されます。
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人間
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そうですね。彼女は人間です。ご苦労様です。
『これではエルーシャのステータスを暴けないじゃないですか』
『スキルレベルが1なのだ。もっと経験値が必要だ』
『これでどうですか』
私はより多くの魔力をスキルに込めて経験値として渡し、メガネのスキルをレベルアップさせました。再びエルーシャを盗み見ます。
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人間 エルーシャ
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レベルアップ!
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人間 エルーシャ 女 18歳
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もう一度レベルアップ!
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人間 エルーシャ 女 18歳
レベル:9
状態:過労
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まだまだですね。最低でもスキルまでは暴きたいです。好奇心が抑えきれません。
しかしもう魔力がありません。レベルアップに必要な経験値も上がっているようです。私は魔力ポーションを買ってきました。そうして魔力ポーションを何杯もがぶ飲みした末に、メガネの「鑑定」レベルを7にまで上げました。飲みすぎで吐きそうです。
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人間 エルーシャ 女 18歳
レベル:9
状態:過労
HP:46/49
MP:31/31
筋力:25
耐久:21
俊敏:34
知力:50
スキル:「事務 LV2」「料理 LV1」「短剣術 LV1」
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すばらしいです。個人情報が丸裸に。なんという全能感でしょう。
それにしても「料理」スキルを持っているとは意外です。スキルを見ればその人の人生が大まかにわかると言います。ずぼらな彼女でも料理はできたんですね。
私はエルーシャのステータスを覗けて満足し、街へと調査に繰り出しました。