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126. 別れと独り立ち、そして

 魔法陣から光が放たれました。光は枷に繋がれたフルーさんに降り注ぎ、そしてフルーさんに覆いかぶさっていた私を照らします。


「なっ!?」

「マリーンさん!?」


 フルーさんとクルツさんが驚きます。そりゃそうですよね。だって私はこれで神級スキルを失ってしまうのですから。


 私はフルーさんの身代わりとなることを選びました。フルーさんの願いを無視したわがままです。それでも私はフルーさんに死んで欲しくありませんでした。



『皆さん、ごめんなさい。きっとあなた達の命は消えてしまうでしょう』


 私はアイテムたちにそう謝罪しました。アイテムの命の維持にはスキルが必要です。スキルを失えばそれもできなくなります。



『構わん。それが主の願いならそれに従うだけだ』


 鑑定メガネがそう言いました。



『武器に心はいらないから平気』


 続いて鉈がそう答えます。



『もともと使い捨てにされる予定だったし? 別にいいし?』


 スキル「自爆」を付与した火魔石がそう言いました。



『これからも使い続けろよな!』


 スリングショットがそう言いました。



『いーよー!』『昇天だ! 昇天だ!』『さよならー!』『今まで楽しかったーい!』


 ブレスレットの風魔石たちが次々にそう言いました。



『お達者で』『お幸せにー!』『暇をいただきます』『ぐっどらっくです?』『イエーイ(遺影)!』


 私のアイテムたちも次々と答えます。皆文句も言わず受け入れてくれました。



 そして最後に声を上げたのは……


『とうとう独り立ちと言ったところですね。寂しいですが嬉しいです』

『……!? そうですか、ここまで声が届くのですね』


 私は驚きながらもそう返しました。なぜならその声の主はヨハンに置いてきたからです。スキルを通して会話できると言っても、まさかこんな遠く離れた場所からでも話せるとは思いませんでした。


『あなたはいつも一人だったので心配していましたが、もうその心配も必要ないですね。私たちアイテムが居なくてももう大丈夫です。自信を持ってください』


 その声には安堵が含まれていました。


『いえ、私はまだ半人前ですよ。一緒に居たいと思える人たちが出来ただけです』


 エルーシャに感謝しないといけませんね。エルーシャが私を親友だと言ってくれたから、今の私があります。


『それでいいのですよ、マリーン。それが人としての成長の第一歩です。いろんな人と関わりなさい。そうして人の人生は紡がれるのですから』

『ええ、そうします。というか自然とそうなるでしょうね。人は一人では生きていけません』

『その通りです。それがわかっていればもう何も言うことはありません。幸せになりなさい。それが私の最期のお願いです』


 これで最期。私はそのことに罪悪感を覚えていました。ですが私は自分の選択に後悔はしません。だからこそ胸を張って答えます。


『ええ、必ずなってみせます』

『良い返事です。それでは、さようなら。お元気で』


 声の主との記憶が思い浮かびました。私を今まで導き、そして見守ってくれた彼。私はそんな彼への感謝を言葉にします。


『はい。今までありがとうござました。お父さん』



 閃光



 そして……



 私は神級スキルを失ったのでした。












「どうして、私を助けたのですか?」


 光が収まり、覆いかぶさっている私にフルーさんがそう聞いてきました。


「それはあなたがす……」


 私は素で口走りそうになった言葉を飲み込み赤面しました。顔が熱いです。この体勢ではただでさえ顔が近いというのに。恥ずかしい。


 私は深呼吸して呼吸を整えました。そして意を決してフルーさんを直視します。



「フルーさん。あなたが好きです」


 言ってしまった。恥ずかしい。恐い。振られたらどうしましょう。心臓バクバクです。


 フルーさんはキョトンとしていました。きっと頭の中で私の言葉を反芻しているのでしょう。次第に顔が朱に染まっていきあわあわします。なにこれすごく可愛い。


「わっ、私は死者です! 死んでるんですよ!?」

「知ってます」

「他にもっといい人が……!」

「居ません。あなたがいいんです」


 フルーさん、顔が真っ赤です。さっきの私もこんな感じだったのでしょうか?


「フルーさん、あなたはあなたです。スキルがどうとか命がどうとか考えすぎです。もっとあなたの感情に従ってもいいのですよ?」

「ですが……」

「あーもう、じれったい! 返事は後で聞きます! そこで悩んでてください!」


 私はフルーさんの上から退くと立ち上がりました。私に対して猛烈に憤りを感じている様子の人がいるからです。私はその人と向き合いました。



 クルツさんが私を睨んでいました。

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