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113. 不正スキルの組み合わせ

 一つ一つが非常に強力な不正スキル。それはたった一つ所持しているだけでも魔王と渡り合えるようになる異世界人限定のチートである。


 能力は強力になる程に相性の影響が強くなる。それは不正スキルも同様だ。



 例えば[万物吸収]。触れたものを魔力として吸収するスキルである。


 敵の攻撃を吸収して無効化するだけでなく敵に直接触れる事で攻撃にもなる使い勝手のいいスキルだ。さらに魔法スキルを持っていれば、無限に得られる魔力を使いいくらでも強力な魔法を使い続けることができる。



 ゆえに[万物吸収]は[限界超越]に対し優位に立つことができる。


 たかが強力なだけの魔法攻撃では吸収の防御を突破することは難しい。吸収しきれないほどの攻撃を行うには、ステータスに大きな差が必要となるからだ。


 一方で万物吸収には弱点も存在する。ルークがテツジを攻略して見せたように、吸収には対象外が存在するからだ。その選別基準は所持者があらかじめ決めておくか状況に応じて適宜変更する事になる。


 また体内で吸収を発動できないという問題もある。自分自身を吸収してしまうからだ。吸収対象を選別できるといっても、体内から自分に害を及ぼすものだけ吸収するというのはさすがに不可能だ。



 それゆえ[万物吸収]は、体内に直接攻撃できる[スキル結界]に対しては不利であった。




 では[スキル結界]が最も強力な不正スキルなのかと言うと、そうでもない。


 スキル結界は他のスキルの効果を遠距離で発動することができる。ゆえにスキル結界を使うには他のスキルが必要となり、スキルを多く持っているほど多彩な戦闘が可能となる。


 だが多彩になるだけである。技巧を凝らし工夫を重ねても、それごとひっくり返されるような強力な火力には対処できない。


 だからこそ[スキル結界]は[限界超越]には不利なのである。



 つまり[万物吸収]、[スキル結界]、[限界超越]は三竦みの関係であった。




 一方、[魔力学習]は有利不利とは無縁である。


 魔力を消費してスキルのレベルアップができるこの不正スキルは、何よりも準備期間の長さが物を言う。


 ルークは異世界人の中で一番最初にこの世界に送り込まれた。そこから3年かけ、ルークは数多くのスキルを取得しレベルをカンストさせた。


 そうして得た無数のスキルによりルークはほとんど何でも出来るようになった。そこまでした事によりどの不正スキルに対しても対応できるようになり、弱点を突いて攻略する事も可能となった。


 魔力学習は、戦いの前にどれだけスキルを取得し育てられるかが鍵となるのだ。




 では[補助人格]はどうだろうか。


 これは頭脳労働の類をすべて任せられる不正スキルである。むしろ所持者は何も考えずにすべて任せた方が強くなる程だ。


 無論、補助と銘打ってあるだけあって単体ではほとんど無力である。他のスキルを使いこなすというのが補助人格の一番の長所だからだ。



 補助人格は不正スキルの中で最弱である。しかし他の不正スキルと組み合わせると真価を発揮する。


 強力過ぎて人では使いこなせない不正スキルを、補助人格は使いこなす事が出来るのだ。その有用性は言うまでもない。




 そう、組み合わせである。


 単体でも強力な不正スキルは、組み合わせる事によりさらに凶悪な物となる。テツジやアキハの強さを考えれば一目瞭然だろう。



 [スキル結界]で[万物吸収]を発動すれば、触れることなく吸収できる。


 [補助人格]が[万物吸収]を制御すれば、吸収の守りに隙は無くなる。


 [万物吸収]による無限の魔力があれば、[限界超越]による一撃をいくらでも放つことができる。




 ルークはそこまで考えて、力なくため息をついた。


 テツジは不正スキルを2つ手に入れることで魔王を瞬殺した。その時点で手の付けようが無かったのに、そのテツジを殺してアキハは4つの不正スキルを揃えた。


 そんなもの、どうやったら倒せるのか。


「無理だ……」


 ルークは勝ち目がない事を嫌が応でも悟った。対応力が強みのルークでも最早どうしようもない。



 アキハはまだ止まらないだろう。止まるはずがない。あと一つ、ルークの魔力学習を手に入れれば願いが叶うのだ。




 その時ルークにある疑問が浮かんだ。どうして不正スキルがすべて集まると願いが叶うのだろうか、と。


 魔力学習をアキハが手に入れれば、不正スキルの組み合わせの効果は……



 そしてルークは気づいた。予測した結末に恐慌する。


「そんな……まさか……。こんなの酷すぎるよ。あんまりだ……」


 ルークはアキハを見た。アキハはナイトメアを消滅させた直後、何かと言い争っていた。おそらく相手は補助人格だろう。


 そして今、アキハは何かを決心したかのようにこちらを見て走り出した。そして風魔法で加速する。



「竜魔王ブレス! 僕を撃て!」


 ルークはドラゴンの姿のブレスにそう叫んだ。ブレスの目の前に立ち、そして全ての防御スキルを解除する。それまでルークを延命していたスキルも止まり、傷口からは一斉に血が噴き出した。


 アキハに魔力学習を渡さないために、ルークは自死を決断していた。ブレスとルークの目が合う。


 ブレスの口にはテツジを止めるために溜めた魔力が圧縮されていた。ブレスはルークの意図を察しブレスを放つ。


 絶対的な破壊力が込められた光がルークに直撃した。


 それと同時に、



 ブレスは突っ込んできたアキハのスキル結界に飲み込まれて消滅したのだった。


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