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辺境のマリーン 〜ギルド嬢の事件簿〜  作者: 源平氏
不正スキル編

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111/138

111. 散りゆく者たち

どんどん死にます

乱戦書くのって難しい……

 テツジがトールを殺した。それはつまり、テツジが[限界超越]を手に入れたことを意味する。



 魔王たちの敵意がテツジに集中した。



「実幻覚、裂体!」


 ナイトメアが幻覚を発動した。かかれば最後、幻覚は現実となりテツジの体は張り裂ける。


「無駄だ! もう効かねえ!」


 しかしテツジに幻覚は効かなかった。幻覚の効果を吸収したのである。万物吸収はデバフや状態異常の効果も吸収することができる。ゆえに幻覚魔法も意識すれば吸収できるのだ。


 先ほどナイトメアがトールに逃げられたのも幻覚に対応された隙を突かれたからであった。


「おらっ!」


 テツジが地面を蹴り凄まじい速度でナイトメアに迫った。以前とは桁違いの速度にナイトメアは回避が遅れてしまう。


 そこにオグニが割って入った。


「どけナイトメア! 次元斬!」


 オグニは大上段から渾身の力で刀を振り下ろした。


 次元斬が斬り裂くのは世界の有り方そのもの。ゆえにこの世界のあらゆる物は、物質であろうと魔法であろうと、概念すら抵抗なく斬る事が出来る。そんな斬撃がテツジに迫った。


 どんな物でも斬れる攻撃と、どんな物でも吸収し無力化する防御。その二つがぶつかった。まさに矛盾である。



 だが矛盾は成り立たなかった。勝ったのは万物吸収。オグニはテツジの体当たりを受け左半身が消滅した。即死である。



「なるほど、これが[限界超越]か。身体強化にいくらでも魔力が込められるぜ!」


 テツジは新たなスキルの使い心地に笑みを見せた。


 [万物吸収]を持つテツジは魔力を無限に得ることができる。その無限の魔力を今までテツジは垂れ流しにしていた。なぜならほとんど使い道が無かったからである。


 テツジが他に持つスキルは「身体強化 LV5」程度。万物吸収が強力過ぎたため、他のスキルは経験値が溜まらず習得できなかった。


 身体強化程度では膨大な魔力を消費しきれない。注げる魔力量に上限があるからだ。


 だが[限界超越]を手に入れた事でその上限は無くなった。有り余る魔力をすべて身体強化に注いだテツジは、この場の誰よりも速く、強く、硬くなっていた。



「重力崩壊砲!」


 上空にいた悪魔王デヴィルがテツジに魔法を放った。光すら吸い込む高重力の球体がテツジに迫る。


 テツジが跳んだ。限界を越えた身体強化により砲弾のごとく空を飛ぶ。


 そして重力崩壊砲ごとデヴィルを貫通した。デヴィルは致命傷を負って落ちていく。



「パラドックスブレス!」


 空を舞うテツジにブレスが攻撃を放った。最初にテツジに放ったものよりもさらに威力を高めた全力の一撃である。その威力はトールの全力の一撃をも凌駕していた。


 テツジはブレスの直撃を受けた。大気が振動し閃光が飛び散る。


 ブレスが収まった後には、無傷のテツジが居た。



「無駄だ! もうダメージは食らわねえ!」


 テツジは着地してそう言った。


 テツジの魔力量は上限の3倍にまで溜まっていた。限界超越を得た事により魔力保持量の上限を越えて吸収ができるようになったのだ。


 以前なら吸収しきれない程の威力の攻撃は有効だった。だがそれももう効かなくなっていた。


「俺が最強だ!」


 テツジが勝どきを上げる。



「アースニードル!」


 ルークがテツジの足裏を狙った。だがテツジは生えてきた石の槍を踏みつぶす。素の防御力も高くなっているため生半可な奇襲は通じない。


「てめえには足に穴をあけられた借りかあったな。楽に死ねると思うなよ?」


 テツジがルークを見据える。そして別の方向に視線を移した。そこに居るのはアキハ。



「よし決めた! てめえは最後にして先にあの女からスキルをいただくぜ!」


 テツジがアキハの方へ向かった。ルークに絶望を与えてやろうと、他の不正スキルを揃えてからなぶり殺しにしてやろうと考えたのだ。


 テツジは余裕を得たことにより普段以上の残虐性を発揮していた。もともと一つの事に夢中になりやすい素直な性格である。既にテツジの脳内にはアキハを殺す事しかなかった。



「まずいわ! 止めないと!」


 ナイトメアがテツジを止めようと後を追った。だがナイトメアの速度では今のテツジには追い付けない。


 一方でブレスはアキハに対しブレスを放とうとした。だがブレスを放つには溜めが必要である。その溜めはテツジがアキハに接近するのに十分な時間であった。




「うわっ! 来た!」


 魔王2体が瞬殺されたのをアキハは当然見ていた。その死に様を思い出し冷汗が流れる。



「死ね!」



 テツジが迫った。



 アキハは動かない。



 テツジは勝利を確信していた。



 そして、アキハのスキル結界に踏み込んでいた。



 他の異世界人がアキハのスキル結界に入るのは、この戦いで初めての事となる。



 テツジは知らなかった。なぜルークとトールが決してスキル結界に入らなかったのかを。



 テツジが今まで結界に入らなかったのは、トールばかりを狙っていたからである。



 そのためテツジはアキハの能力をよく知らなかった。



 テツジは勝利を確信したまま、




 頭を破裂させて死んだ。







 スキル結界の本領はスキルの効果範囲の延長ではない。ましてや魔法をノータイムで発動できる事でもない。


 その真の使い道は、体内への直接攻撃。


 どんなに高いステータスであろうと体内は相応に脆弱である。そして弱点だらけである。


 アキハはテツジの脳に直接ファイアーボールを撃ちこんだのだ。


 体内で吸収は発動できない。発動した途端に自分の体を吸収してしまうからだ。ゆえに吸収は体の表面のみで行われる。


 体内に発動したファイアーボールに対し限界越えの身体強化は何の意味も成さず、テツジは頭蓋骨の内側から破壊され、そして弾けた。



 スキル結界は通常は所持者が狙いをつけるため、目にもとまらぬ速さで移動すれば体内攻撃を逃れることも可能である。


 だがアキハには補助人格がある。テツジの速度は確かに凄まじかったが、それでも補助人格のレプリカには十分狙いを付けられる速度でしかなかった。


 触れた相手しか攻撃できないテツジなど、アキハにとっては雑魚でしかなかったのだった。




「ありがと、レプリカ」

『これ位朝飯前だ』


 アキハは自分を鑑定した。そこには不正スキルが4つ並んでいた。




 テツジ、死亡。


不正スキル編、残り5話

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