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正し屋本舗へおいでなさい 【改稿版】  作者: ちゅるぎ
第三章 男子校潜入!男装するのも仕事のうち
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【登校二日目の出来事】

更新が遅れてしまい申し訳ないです。


一応じゃれてはいますが、すぐに顔を出すシリアスっぽいものに苦戦中です。

次回は残酷&ホラー要素が入ります。



 翌朝の目覚めは、いいものとは言えなかった。


朝の点呼の時にはちゃんと返事をしていたのかどうかも怪しい。

禪からは呆れ果てた温度のない視線を頂戴していたけれど、もうそんなことどうでも良くなるくらいには眠気がすごかった。



(夜の調査、一日おきくらいにならないかな…ねむすぎる)



確実に今日の授業は爆睡だろうな、なんて考えながらあくびを噛み殺してなんとか登校準備を終える。

 点呼の後、朝食になるまで身支度を整える三十分の猶予があるんだけど、サラシをまかなきゃいけないから特急準備だ。


 いやー、洗顔から更衣まで全力で支度したのは大学の再試験に寝坊した時くらいだよ。

流石に会場に着いたとき試験が始まってた時には絶望したね!全力で滑り込んで土下座したら、担当教授が苦笑して別室で特別にって受けさせてくれたけど。

…今でもこの話はよくされるもんなぁ。




「さて、と。あとはご飯食べて登校、かな。禪はどうするの?」



鞄の中には報告用の書類が入っているのだけれど、どのタイミングで渡すべきか…そんなことを考えて声をかける。

 禪はとっくに着替え終わって自分の机に向かって何かの書類を整理しているようだった。



「須川先生に渡す書類がある。報告書が出来上がっているようなら、もののついでだ、持って行ってやる」


「え、いいの?!じゃあお願いするよ。あー…助かった。どうやって渡そうか考えてたんだ」



実際編入したてで妙に目立つ立ち位置にいる私が頻繁に赴任したばかりの教師のところへ行くのは不自然だろうし、ただでさえ…なんか認めたくないけど身長のことで目立っているみたいだしさ。



「じゃあ、学校でねー」


「…違うクラスだ。会うこともなければ話すこともないだろう。会話なら部屋で出来る」


「冷たい、冷たいよ禪!社交性ってのを今から身につけておかないと社会に出たとき大変なんだぞっ!」


「問題ない。実家を継ぐ予定だ」


「まさかの就職内定者…ッ!あの生き地獄を味わわなくていいとかどんだけ恵まれてんだ!ずるいっ」


「?優は正式な社員、なのか?まだ高校に行っている年齢だろう」


「………ソーダネ」



そうだったね、とうっかり口をすべらせかけたので慌てて口をつぐむ。

 二人で、というか一方的に私が話しかけながら施錠を済ませて部屋を出ると靖十郎が待っていてくれた。



「ひ…ッ!!お、おぉおおはよう」


「おはよー、靖十郎。じゃあ、禪宜しく頼んだ」


「ああ、間違いなく渡す」



悲鳴を上げて飛ぶように後退した靖十郎を気にかけた気配もなく禪はあっさり舎監室へ向かった。

 流石のスルースキル持ち!なんてちょっと感心していると靖十郎がチラチラと禪の後ろ姿を眺めながら急かすように手を取った。



「い、行こうぜ。今、封魔に席取ってもらってるからすぐ座れるし…できれば、生徒会チョーがいない方が助かるし」


「あはは。本当に苦手なんだ?でもさ、禪って結構いいやつだよ?物言いは冷たいし表情もあんまり変わらないけど…ってまだ一日同室で寝起きしただけなんだけどさ」


「…いや、それで名前呼びになるのはスゲェって。でもまぁ、うまくいってるみたいでよかった。優がダメそうなら四人部屋に移りたいって先生に相談しようかとも思ってたんだ。丁度、四人部屋が一部屋だけ空いてるし」




食堂へ向かって歩きながら寝起きは比較的いいらしい靖十郎は昨日と変わらず元気そうだ。

お肌もつやつやだし、快活さにあふれる姿は見ていて気持ちがいい。


 靖十郎の笑顔に釣られて、楽しく会話をしていると点呼をとっていた寮長が洗面所のある方から出てくる。

首にはハンドタオルがかかっていて、益々宅配便のお兄さんっぽい。



「おはようございます!」


「おはよーございます。寮長はこれから朝飯ですか?」


「おう、おはよ。お前らはホント仲いいんだな。ま、江戸川は入ったばかりだから靖十郎がフォローしてやってんだろうけど…ついでだから一緒に食堂に行くか?」



ニカッと白い歯を見せて笑う面倒見のいいお兄さんといった風の寮長を加えて、三人で食堂へ。


 食堂に近づくにつれて賑やかに、それでいて人も多くなってくる。

食べ終わった生徒やこれから食べる生徒の出入りが結構激しいようだ。



「この様子だと結構待ちそうだな…もしかして封魔の奴が席取ってるのか?」


「はい、そうです。あ、どうせだから俺らと一緒に喰いません?四人席だから寮長も座れますよ」



名案だと顔を輝かせた靖十郎に私も同意しているという意味で肯けば、寮長は嬉しそうに笑って私たちの頭を撫でた。

 …完全なる年下扱いっていうのもこの年になると貴重だな。

ちょっと心中は複雑だけども。



「んじゃ、お邪魔するわ。いつも食べるダチは先に食べたらしいからなー…お、ラッキ。今日は俺の好きなビーフシチューのパンがある」


「マジっすか!じゃあ、俺もそれにしよう。あとは…飯も食うかなぁ…絶対昼飯まで持たないし。優は?」


「こっちかな。鮭の粕漬け定食。結構魚好きなんだ」



もっと食えよ、なんて言われながらそれぞれ朝食をもって封魔が座っているテーブルへ行くと寮長がいることに少し驚いていたものの、彼も好意的に寮長の相席を受け入れている。


 この寮長さんは結構後輩たちに慕われているようだ。

まぁ、気さくだし面倒見のいい兄ちゃんって感じだもんね。

話しやすいし、寮長に選ばれるだけの人間なんだろう。

 和やかに会話をしながらご飯を食べ勧めて、食べ終わる間際でふと封魔が口を開いた。




「そーいや、学校の七不思議って寮長詳しいんじゃなかったっけか」



ぼそっと独り言のような呟きだったけれど同じテーブルにいた私たちの耳にはしっかり聞こえた。

 って、夜の調査に気を取られてすっかり忘れてたけど、私禪に七つ不思議のこと聞いてない!

これじゃ、調べるって決めてる手前動きにくいじゃないか!と驚愕していると寮長は訝しげに首を傾げた。



「そりゃ、代々俺ら寮長が新入生に話してるけど…お前、そんなにこの手の話に興味持ってなかったろ。どうしたんだ?なんか変なもんでも食ったか?」


「俺じゃなくて、コイツっすよ。優は昨日編入したばっかで知らねーし、その手の話好きだっていうんで禪の奴に聞けって言ったんですけど寮長から聞いた方が確実なんじゃねーかと思って」


「!確かにそーだよな、優、寮長に話してもらえよ!それなら俺たちも一緒に聞いてやれるしさ」



何故か妙に乗り気な靖十郎に首を傾げつつ寮長を見ると何か考えているようだったけけれど、私の視線に気づいたらしくニカッと歯を見せて笑う。



「俺としちゃ構わないけど、江戸川はそれでいいのか?いいなら…丁度今日の放課後は空いてるし、俺の部屋で話すぞ。あ、封魔お前なんか摘めるもん頼むわ。飲み物は俺が奢って…」


「いや、飲み物なら俺が用意します。話聞きたいって言ったの俺だし、それに結構お茶入れるの得意なので」




仕事柄ね、と心の中で付け加えれば寮長はそれならと頷いてくれた。

 こうして、放課後の4時頃に寮長の部屋に集まることが決まったのだ。

渡りに船というか棚からぼた餅的な話の進み具合に感謝しつつ、封魔を加えて靖十郎と私の三人で教室に向かう。


 食事を終えたら軽く歯磨きとかして終わりだから大して時間はかからなかった。

 校舎には少なくない人数の生徒達が既に登校していて賑わっていたし、授業は相変わらず…というか今のところ順調。

何度か寝落ちしたけれど、教師たちは私が夜間“仕事”をしているのを知っているので苦笑するだけにとどめてくれた。

まぁ、寝ていたら起こすというスタンスの先生の授業がなかっただけなんだけどね。




「はー、あと一時間で飯だぁ。って、優、お前大丈夫か?なんかすっげー眠そうだけど」


「ん…?んー…どう、だろ。おかしいな授業中結構な勢いで寝落ちしたような気はするんだけど」



ふぁあ、とあくびを噛み殺して滲んだ涙を拭えば靖十郎だけじゃなく封魔からも気遣うような視線を向けられる。

 どうやら相当眠たそうな顔をしているらしい。



(眠たい、のは眠いけど…この倦怠感が謎なんだよね。おっかしいな…いくら夜の調査していたとはいえ完全に徹夜してた訳でもないのに)



実は学校に足を踏み入れた瞬間から眠気が増しているのだ。

 なんだろう、と違和感と疑問を覚えつつHRだけじゃなくて休み時間の間も起きていた記憶がない。



「取り敢えず、次の授業は休んでもいいんじゃね?体調不良だとかなんだってことでうまくいっておいてやるからよ。保健室で一時間ぐっすり眠れば体調も戻るだろ」



ほれ、と立ち上がった封魔に手を差し出されて無意識に自分のそれを乗せると、反対側に靖十郎がつきそうようについてくる。

どうやら二人共保健室まで連れて行ってくれるつもりらしい。



「たすかる…なんでこんなに眠いんだか…やっぱ、環境の変化が…あったからか、な」



このまま廊下で眠ってしまおうかと思うほどの強烈な眠気に徐々に意識が混濁して、足に力が入らなくなってくる。

 転びそうだなぁ、なんて人ごとみたいに考えたのを最後に意識が完全に途切れた。

多分、痛みがないところを見ると封魔か靖十郎が受け止めてくれたんだと思うんだよね。

ホント、二人には面倒をかけるなぁ。



 申し訳ない、と思う気持ちはあるけれど体がもう言うことを聞いてくれないので私はあっさり意識を保つのをやめる。

意識が途切れる間際で考えたことがあった。



(やっぱりこの仕事私が主軸になるのって無理があるんじゃないかなぁ…だって、こんなにも     なのに)



何か、大事な感覚だったんだけど思考はまとまらないどころか眠気に絡め取られて、ずぶずぶと沈んでいく。

遠くで靖十郎と封魔らしき声がするけれど、もう体に力は入らないし、眠気に抗う気力自体がそもそもない。




ブラックアウトする視界の隅で、何かの嗤い声が聞こえたような気がした。




目を通してくださってありがとうございます!

誤字脱字などがあればビシバシもしくはこっそり教えてください。

できるだけ気づいたら直します。

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