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正し屋本舗へおいでなさい 【改稿版】  作者: ちゅるぎ
第三章 男子校潜入!男装するのも仕事のうち
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【学生寮と自室】

 説明回です。

本当はまだ続いていたんですが長いんで分けました。



 校舎から寮へ移動するには、どうしても外に出る必要がある。



上履きからスニーカーへ履き替えて靖十郎と封魔の案内で寮へついた。

 森の小道を抜けると見える大きな建造物はお金持ちの別荘かと思うほどの規模だ。

校舎も大きければ寮も大きいらしい。



「随分とでっかいんだね…学生寮っていうくらいだからもっとこう、下宿先です!みたいに年季が入ってるのかと」



中央の建物から三つに分かれた棟はまるで羽子板で使う羽根のよう。

 生徒の半分が生活しているだけあって部屋がある棟は結構な長さだ。

傍目から見てもかなり大規模なそれに感心していると靖十郎が来い来いと手招きをしていることに気づいた。



「正面玄関から左に犬小屋と花壇、あと家庭菜園みたいなのがあるんだ。で、反対側には運動場。まぁグラウンドよりは狭いけどバスケができるようにはなってる。サッカーとかは流石にグラウンドじゃなきゃ無理なんだけどな」


「寮の周りは完全に森だからいくら騒いでも平気な代わりに虫がすげーから気をつけるんだな。うっかり窓を開けたまま寝ると確実に刺されんぞ」


「あー…そっかこの時期は蚊もいるよね。気をつける」



ちらっと見せてもらった犬小屋には中型の雑種らしき犬が一頭、生徒達に撫でられて嬉しそうに尻尾を振っていた。

 窓の下には花壇があってそこには野菜や花が無秩序に植えられていた。

いい意味での適当さは男子校ならではなのかもしれない。



「じゃ、早速入るか。靴箱は寮ごとに分けられてるから覚えておけよ。優はここだな、で…帰ってきたら入口すぐにある舎監室で鍵を貰うんだ。夕食前までは宿直の先生の代わりに用務員のオジさんがいるから名前を言えば鍵はもらえるし、寮を出る時はここで鍵を返すんだ」


「んで、休みの日の外出は前もって外出届けっつーのを書かなきゃなんねぇ。これが面倒でよ、教師が一々親に連絡入れることになってるんだよなァ。ま、親元離れてるから仕方ねぇのかもしんないけどなァ…何代か前のOBが色々やらかしたってのも聞くし」



自動ドアをくぐって、まず正面に見えたカウンター付きの部屋は舎監室。

舎監室の左には食堂、反対側には大交流室があるんだとか。

鍵を受け取る前に食堂や大交流室を見たけれど規模は大きい。

食堂は完全に学校のそれと遜色ない規模と作りに見えたけれど、学校のそれより広く作られているそうだ。


厨房と直接つながっているらしく、美味しそうな匂いや調理をする音が聞こえてきた。

入口から並んで受け取る方式になっているらしい。

あと、それとは別に小さなIH式のコンロと流し台もあった。

コレはちょっとした食事を作ったり、時間外で食事を取ったあと後片付けができるように付けられているらしい。




「…なんだか、今日一日で色々大きなものを見すぎた気がするよ」



人といい施設といい、設備といい何もかもがマンモス級だ。

 ぐったりしている私を連れて舎監室で鍵を受け取った後は、入ってきた時とは別にあるドアから出ていく。


そこは、大きな両開きの扉が三つ。


扉の上にプレートが掲げられていて、そこそこ大きな文字で名前のようなものが書かれている。



「何、この『山桜』『夜桜』『桜雲』って。もしかして寮の名前かなにか?」


「おう。これ、創設者がすっげー桜好きだったらしくってさー、この寮も校舎も『桜山』って呼ばれてた山を買い取って立てたらしいぜ。学校名はもう既に変更できなかったから寮の名前は桜にちなんだものを…って事らしい」


「優は俺らと同じ寮だから『山桜』だな。ちなみに寮の色ってのがあって『山桜』は緑、『夜桜』は青、『桜雲』は赤っつー感じな。俺らはもっぱら色で呼んでるから優もそうしとけ。ついでに学生寮は『葉桜寮』ってのが正式名称なんだと」




わかった、と返事を返せば靖十郎が早速と言わんばかりに『山桜』というプレートが掲げられているドアノブに手をかけた。


 広がった空間は、意外と…というか想像以上に清潔感があって正直驚く。

扉を開けるとまず、結構な広さのデイルームがお出迎え。

大人数掛けのソファと大きなテレビ、分類別のゴミ箱が並んでいるのがいかにも共同生活の場ですって感じ。




「なんか随分と広いっていうか綺麗なんだね。正直もっとこう、雑然としてるかと思ってたんだけど」



ゴミもなく、所定のものが所定の位置にしっかり収まっているという印象を与えるデイルームに関心半分驚き半分で思わず本音が溢れた。



「一年に一度は学校見学とか親の寮見学なんかもあるし、汚ぇよりいいだろーが」


「そーそ。それに毎日就寝前の…えーと八時半から一斉清掃で三十分掃除の時間があるんだよ。俺らの寮では学年関係ないランダムで班を決めてローテーション制で掃除してんだ。後で掃除当番表も見せてやるよ」


「意外とちゃんとしてるのか…あ、こっちのゴミ箱横ってシャワー室になってるんだ?うわ、洗濯乾燥機もあるし。洗面台まである」



ゴミ箱が置かれた場所の横には、更に別の空間があるようだったので行ってみると、そこにはまず、五台の洗濯乾燥機があって、三台は大型、二台は中型のようだった。

 そうだよねー、洗濯物も自分でやらないといけないんだよね…って、私の洗濯物どうしよう?

服とかは男物だけど…下着は流石に女物だし。

ブラは晒しで抑えてるから幸いにも不要だけど…パンツは見られたら一発でアウト。

ヤバイ性癖の持ち主認定されるかバレるかのどっちかだと思う。



(これは、あれだ。須川さんに要相談の案件だよね)



選択室からは二つの入り口に分かれていて一つはずらっと並んだトイレ。

個室が五箇所綺麗に並んでいて、きれいに掃除が行き届いていた。

おしゃれな芳香剤なんかもあったしね。


 もう一つはシャワー室のようだった。

簡易の隣と隣を仕切る壁に、カーテンというプールに備え付けられているシャワー室みたいな感じの作りだ。

 一応、は見られないようにはなっているけど…ふざけてカーテン開けられたら確実にバレる。

というか、そもそも脱衣所が一緒だからそこでアウトだろうけどね。

個室にはシャワーと鏡、自分で使用する為のちょっとした台が置かれているだけだった。




「シャワーも三十分交代制な。時間帯で学年ごとに仕切ってるんだ。まぁ、部活で遅くなった場合は上級生や下級生と一緒になることもあるけどな」



靖十郎の説明に半ば絶望しながら相槌を打つ私に封魔から朗報がもたらされる。

 それを聞いて私の部屋割りに納得もしたんだけどね。



「けど、お前はこっちのシャワー使わねぇんじゃね?あの部屋なら部屋自体にシャワー室と小型の洗濯乾燥機ついてんだろ」


「なにそれ?どういうこと」



デイルームに戻ってきた私たちは、生徒たちが寝起きする部屋がある棟へ足を踏み入れる。

 デイルームから部屋のある棟に行く際に仕切りのようなドアはなく、あっという間にドアが並ぶ廊下に足を踏み入れる。

廊下自体は大人が余裕で三人並んで歩ける程度の広さで、窓が大きいからか明るさもあった。



「お前が入る部屋は代々生徒会が使う用の部屋なんだよ。各寮に一つずつあって、生徒会長と生徒会の副会長、書記はその部屋を割り当てられる。拒否もできるけど、殆ど有効活用してるっぽい。生徒会のメンバーがいない場合は寮長が使う習わしな」


「ふーん…?でもなんで生徒会?」


「そりゃ資料室権執務室があるからな。寮長がいるとはいえ、生徒会の管轄で寮のイベントを開いてるんだ。それで歴代の企画書とか成績表とか色んな資料が揃ってるらしい。ま、禪のヤツは生徒会の仕事も持ち帰ってやったりしてるらしいけどな。生徒会も結構忙しいんだと…ホレ、この学校の学園祭は規模が規模だし、他校との交流会は結構な頻度であるしよ」



そう、なんだ?と内心首をかしげつつ頷いていると靖十郎がぴたっと足を止めた。

 ドアの右上には名前を入れるスペースがあって、そこには靖十郎と封魔のフルネームプレートが入っている。

どうやら、二人の部屋の前らしい。



「ここが俺らの部屋な!後で遊びに来いよ」


「うん、わかった。名前がこうやって書いてあるならわかりやすいし迷わなくていいや」


「取り敢えず、優も荷物の確認とかあんだろ?部屋で待ってるからよ、先に自分の部屋見てこい。禪と同じ部屋だってんなら廊下の突き当たりにあるデカいドアを開けりゃいい」



んじゃあな、と封魔は私の頭をかき混ぜてさっさと部屋に入ってしまった。

 寮の中は人があまりいない時間帯らしく廊下に立っているのは最早、私と靖十郎だけだ。

彼は私と一緒に行くのかと思ったけれど、気まずそうに視線をそらしたのを見てそういえばルームメイトになった生徒会長さんが苦手だったことをようやく思い出す。



「そ、そーゆーことだからさ、俺も部屋で待ってる。なんかあったら言えよ?この時間は生徒会チョーいないとおもうし、ついて行ってもいいんだけど落ち着かねーから」


「それは構わないよ。あんまり遅くならないで部屋にいけると思う。荷物は…そこそこしかないと思うんだ。じゃあ、後で」



須川さんが気合を入れすぎて用意してないことを祈りつつ靖十郎とも別れ、言われた通りに廊下を進む。

 白いドアの前を歩いて突き当たりの大きなドアの前まできた。

封魔が大きいというだけあって、両開きの重厚な作りをしたドアは本当に特別感がある。

ドアノブに手をかけると思ったよりも簡単に空いたので少しホッとした。


 ドアの向こうには小さな廊下があってシャワー室、トイレが別についている。

まるでちょっとした一人暮らし物件のようだ。



「シャワー室の所に洗濯乾燥機もあるんだ。まぁ、これなら…ルームメイトが居ない間に洗濯すればバレない、かな?うん」



念の為下着の類は見えないケースに入れておくつもりだ。

見ない、とはおもうけどね…わざわざ人のタンスを開けて同室者のパンツなんか。

渡り廊下の向こうにあるドアを開けると、そこには大体10畳ほどの広さの部屋があって、大きな本棚と大きな執務机、金庫に書類棚なんかがあった。



「…これ、完全にオフィスじゃない?」



おいおい、と引き攣る顔をそのままに執務室の奥にあるドアを開けると漸く、居住空間が現れた。

 衝立もない大きめの部屋にはベッドやクローゼット、机なんかが二組ずつ置かれている。

入って左側は生徒会長さんが使っているっぽいんだけど…ベッドメイキングが完璧で一瞬ホテルかと思った。



(えーと、私物らしい私物が見当たらないんですが。モデルハウスかなにかでしょうか?)



そんな阿呆なことを思いつつ、どんと置かれた荷物を急いでクローゼットや机のあるべき場所に収納する。

 教科書も届いていたようだったので、机の上に立てて並べ、着替えやなんかはクローゼットにしまう。

ベッドは須川さんが発注したのであろう無駄に高そうなマットレスとかベッドカバーとかがあったけど、既にベッドメイクされた後だった。

…交換用のシーツがテレビで見たことのある超高級寝具メーカーだったような気がするのは気のせいだろう。



「で、霊刀やら呪符作成用の道具とかはどうしよう。事情知ってるとは言ってもむき出しはまずい、よね?」



迷った挙句にクローゼットの中に隠しておくことにする。


 靖十郎や封魔が来ないとも限らないし、対策をしておくに越したことはない筈だ。

念の為、須川さんが用意してくれた仕事道具や手配してくれたものを確認していく。

注文したぬいぐるみもしっかりあったので、それはベッドに寝かせておいた。

ふっふっふっ!数量限定品だからダメ元だったけど頼んでよかった。

 いいよね、このくらいの贅沢とわがまま。寝るときに抱き枕にもなるし。


 ざっとした確認を済ませた私は待たせている靖十郎と封魔の部屋に向かうことにした。

生徒会長であるルームメイトはどうやらまだ帰ってきそうにないみたいだし…ね。

トイレや何かを済ませてから私は颯爽と彼らが待つ部屋へ向かう。




今のところ、寮内で不審な感覚はない。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

次は会話多め…かな?

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