第三話~神獣襲来と覚醒~
ミアとふたりで露店を冷やかしながら見て回る。言い忘れていたが、ミアは部屋のある建物の一階部分にある喫茶店で働いているらしい。今は少し長い休暇なのだそうだ。
一つの露店の前で訊ねる、
「それにしても、見たことないものが沢山あるぞ。」
「はい、この街にあるものは殆どが自分の体に起こった変化によって与えられたチカラで生み出されています。」
「例えば、猫人族は何が作れるんだ?」
「う、…実は猫人族は身体能力や状況把握能力が主に変化するので売れてもせいぜい毛が関の山でしょう。」
人間で言う髪の毛を売るようなものだろうか。
「ただ、それぞれの生成物にはその種族のチカラが宿ります。馬人族のヒヅメや鬣は自らの俊敏性や持久力を上げると言われてい…「カランカランカラン!」マズイです!神獣が来ます!!」
いきなり腕をつかまれ、引きづられるようについていく。後ろから人の波が押し寄せてくる。ユウは不覚にもその波に乗り損ねてしまった。必死に伸ばした手もミアと離れてしまう。人の波が過ぎ去ると、小さな犬耳の少女が転んだのか、逃げ遅れていた。
耳が壊れそうな足音の方を見ると、見上げるような巨体の狼が走ってきた。
「下がってください!!」
いきなり前にミアが現れる。ミアの足元に大きな円形の青白い光が現れる。どこからともなく現れた二つの短刀を持って狼と対峙した。
「私も足止めくらいしかできません!ユウはそこの少女を連れて逃げて!」
頷くと、少女の手を取り走り出す。振り向くとミアが狼にはじき飛ばされるのが見えた。
「クソッ!おい!そこのお前!早く走って逃げろ!」
少女は怯えた目で見ていたが小さく頷くと、走っていく。
「ぐおおおおッッッ!!」
ミアは壁に追い詰められ、今にも噛み砕かれそうな状況に陥っていた。
ふざけるなッ!おい!俺にはあいつを助けられないのか!ふと、日本にいた時の交通事故を思い出した。ユウの目の前で少女が吹き飛ばされたのを思い出す。気づくとユウは叫んでいた。
「おい!俺の中には神様がいるんだろッ!あいつを助けてくれよッ!」
『少年よ見返りはなんだ?』
頭の中に響いた声に即答する。
「俺の全てをッ」
『よく言った少年よ!我が力使うが良い!』
突然頭の中でスイッチが入る音がする。気付くと、口が勝手に動いていた。
『我が下僕たるフェンリルよ 吾に従い吾の中に帰るが良い』
強い風が吹き始め、巨大な狼はみるみる小さくなり果てには、カードになった。
ユウは糸が切れたように倒れる。驚き駆け寄ったミアはユウの右手に文字が刻まれているのが見えた。
「Chaos……?」
それがギリシャ神話史上最も古く、最も強大な力を持つ神の名前であるのを知るのは、もう少しあとのことになる……




