第一話~猫耳少女との出会い~
無人島のような島に漂着したユウを迎えたのは、その地下にひろがる広大な地底都市だった。
「なんだ…ここは…」
思わず喉から声が洩れた。一目見て様々な種類の人がおり活気に満ち満ちているように見えたからだ。
「ここは、天によって何らかの変化がもたらされた者達が暮らす、人工都市ゼウスです。この街を作った初代リーダーがゼウスのチカラを宿していたのに由来します。」
……ゼウス?なんだ?ギリシャ神話の話か?知ってるぞ雷を操るバイのおっさんだろ。ファンタジーの話か?それならもう帰るぞ、とそこまで考えていたユウに、猫耳の少女は止めを指した
「貴方にも何らかの変化が起こっているはずですよ。」
「あんな立派なお魚、私達猫人族でも素手では取れないのに」
…膨れ面をしていた。ただ、だらけた口元が隠しきれていない。案外顔に出やすいようだった。
「さっきから気になってたんだけど、なんていう名前なんだ?あぁ、俺は神谷ユウ、ユウって読んでくれ」
ハッとして口元を引き締めると、その少女は
「申し遅れました、この島に来て猫人族になりました、ミアです!ところで、貴方は体のどこに変化がありましたか?見たところ変わったところは見受けられませんが…」
「え…?この島にきたら誰でもそんな耳や尻尾が生えるのか?」
「いえいえ、もちろん違います!トカゲののようなウロコを持つ竜人族や体の一部に、虫の特徴が出る虫人族なんて人たちもいます。他にも様々な人たちがいますが、それぞれにそれぞれの種族特有の能力が与えられています。」
「そうなのか…特に身体には変化がなかったようだけど…」
「え………いやいやいや、そんなはずはありませんよ!身体をもっとよく調べさせてください!」
突然可愛い猫耳少女にこんなことを言われて、その子の部屋に連れてかれた経験を持つ人は、ぜひその対処の仕方を教えて欲しい、なんてことを考えなからなされるがままに引きずられていった。
ミアの部屋は少し古いヨーロッパの建物の中にあった。小綺麗な部屋だったが、ユウが前にいた社会で見た女子の部屋というものとは、随分と趣が違っていた。「さぁ!服を脱いでください!」
「いや…いやいや、恥ずかしいし!」
思春期真っ盛りの男子である、恥ずかしくないわけがない。だがミアの熱意に押され渋々着ていた衣服を脱ぎ始めた。
身体を嘗めるように観察していたミアは、
「か、か、身体に変化がありませんよ?」
「だから言っただろう。そんなに驚くことじゃないん じゃないか?」
「は、初めて見ました…これは神人族というやつかも知れません…」
「は……?」
「ごく稀に獣ではなく神の力を与えられる者がいるそうです。初代リーダーもその一人ゼウスのチカラを宿した神人族だったと聞いています。しかし…てっきり伝説の存在かと…」
「そんな珍しいのか…ところで俺にはどんな神のチカラがあるんだ?」
「そこまでは…いえ…でもこんな人がいると知られれば大騒ぎになります。暫くはこの部屋に隠れていてください」
こうして俺は漂着して早々猫耳少女と同じ部屋で暮らすことになってしまったのだった。