中間考査の後の授業
アルバイト選びに失敗したかも知れない。
家庭教師はバイト代も良いし、同性の子供相手なら気楽にやれると思っていた。
けれど、それが間違いだった。
今どきの子って、こんなにお洒落で可愛いものなのか。
ふわふわの栗毛にお洒落な服。化粧もしてないだろうにパッチリとした目に、綺麗な肌。
一方、私はといえば髪は重苦しい黒髪で服も安物。更には化粧でも隠し切れない目の下の隈。
こんなに可愛い子の隣にいると、何もかもに謝りたくなってくる。
せめてもの救いはこの子の部屋に二人きりなので、人目がないことか。
ただ、人目がないと言っても…、
「先生、この問題でつまっちゃって…」
「ああ、こっちの公式を使って、こうやってね…」
…何故この子は手元のノートではなく、私の顔ばかり見ているのか。
私は人の視線が苦手なのに。ましてやこんなに可愛い子の視線だと。
視線に緊張しながらも解き方を教えると、すぐに理解して問題を解いていく。
私の顔ばかり見ていて理解しているのか少し不安になったが、ちゃんと理解出来たようでホッとする。
顔ばかりではなく、この子は頭も良い。正直、私はもう不要ではないのか、と不安になる。
一度聞いてみたところ、
「先生が教えてくれるから解るんだよ?」
とのこと。
教え始めのときだって、この子は勉強の仕方が分からなかっただけで、少しアドバイスをしたらすぐに成績がよくなったのだ。
この子の学校の先生は質が悪いのではないか。この子はこんなに優秀なのに、とやや教員の質を不満に思う。
そんな事を考えていると、どうやら問題を解き終わったようだ。
「できたー」
「はい、お疲れ様。時間も丁度良いし、今日はここまでにしましょう」
私がそう言うと、この子は
「ちょっと待って、先生」
と言って、通学カバンを漁って、中から返却されたらしい答案用紙を取り出す。
「それは授業の最初に出さないと駄目じゃない。テストは出来なかったところの復習も大事なのよ?」
「90点だから大丈夫だよ。それに今日の課題を終わらせてから、ゆっくり褒めて貰いたかったし」
90点でも間違った10点分の復習は大事なのだが、まぁ子供は褒めて伸ばすものか。
「よく出来ました。次もこの調子でね。あと、間違った所は次の授業の時にちゃんと復習するわよ」
「先生、ちゃんと私の名前を呼んで、しっかり褒めて」
人の名前を呼ぶって恥ずかしいのよ!
しかし、じっとこちらを見つめる瞳には勝てず、私はこの子を念入りに褒めてあげることになった。