少女。彼氏と悩む
私達は正直、高城に会うのがとても怖かった。一年前私達が付き合うことになってからと言うもの、誘いの八割は断られ、着信もあまりでなくなり、私たちの元から一線引くようになった。それも当たり前だろう。急に仲の良かった幼馴染同士が付き合い始め、一人取り残されるのだ。気まずくなるのは勿論の事だ。
「春斗さ、どうみても俺達に一線を引いてたよな。やっぱり、恨んでるかな?俺たちの事嫌いになっちまったのかな?」
拓海もああ見えて高城の事をずっと気にしているのだ。一番の親友にあんなに距離を置かれると、誰でも心配になるだろう。
幼馴染なので家は三人とも近い。高城の二軒隣が拓海の家、さらに三軒隣が私だ。近くて遠い。正直、前の関係に戻れることは無いと思っている。この関係を犠牲にしてまで私は彼と付き合う事を決めたのだ。今更泣き言を言うつもりは無い。でも今はどうだろうか。怖いだの、気まずいなどと怯えてばかり。それでも私たちが高城を誘うのにも理由がある。それは、少しでも私たちの関係を認めてほしかったからだ。認めてもらっているのかいないのかが曖昧なため、確実に認めている事を確認したかった。逆にそれが高城の首を絞め、苦しめさせていたのではないか?そう思うと、私たちはなんて残酷な事をしていたのだろうか。
「もう、向こうから会おうってさ。誘われない限り会わないでいようか。その方が春斗も苦しまず済むだろ?もう少し考えていれば、あいつも苦しまなくてよかったのに」
拓海は頭を抱え込みながら地べたに座り込んだ。ゆっくり今後の話をしたいため、近くにある公園へと拓海の手を引きながら向かった。
「春斗さん。美味しいですか?今日は腕を振るいましたよ!!」
「うん。すっげぇ美味い!」
通常の2、3倍はあるロールキャベツを口に放り込む。中から肉汁とスープが溢れ出し、心のモヤモヤを吹き飛ばしてくれる。
録り貯めたテレビを選択し、お笑いの大会番組を見ることにした。今日は笑い飛ばしたい気分だ。存分に楽しもう、とことん楽しもう。
次の日
今日は金曜日だ。今週最後の学校なので、朝からテンション上がりっぱなしだ。今日は早く帰って、鈴と来週の食材の買い出しだ。
さて、そろそろ出ないと電車に間に合わないため、俺は教材で重くなったカバンを肩に背負い、鈴に行ってきますのキスをされ上機嫌で外に飛び出した。
自慢のマウンテンバイクにまたがり、勢いよくペダルをこぐ。
そして俺は誰かの視線を感じながら駅に向かうのであった。