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だから俺は同居したくなかった!  作者: ヤマトの山羊
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少女は優しく包み込む

 コップの水滴が落ち、コップの淵に水が溜まる。無言のまま20分が過ぎようとしていた。

 ほんの1年前までは、話なんて絶えることなくしゃべり続けたのに、今となっては三人で集まるのが半年ぶりだ。まぁ、誘われ続けてるのを俺が断ってるだけだが。

 個人で会うのはよくあるのだが、三人となると俺の心がもたない。正確に言うと、会いたくない。俺の中ではもう今までの幼馴染の関係では無いからだ。

 できるならば、1年前に戻りたい。そんな思いなど二人には伝わらないだろう。でも、二人が幸せなら充分なんだ。そう言い聞かせる。

 「だ・・・大丈夫?やっぱり私が怪我させちゃったから・・・痛んできた?」

 やばい。できるだけ嫌な空気は作りたくなかったんだけどな。

 「いや、大丈夫だから。本当に」

 「何か高城さ、私達によそよそしくなったね。やっぱり・・・」

 「あ!鈴、高級茶葉あったろ。それ淹れてくれないか?」

 駄目だ、ここでギクシャクしてたら二人にも申し訳ない。畜生。余計な事を考えるな俺。

 そしてまた無言になる俺達の部屋に響き渡るのは、お茶を注ぐ音だけとなった。



 「俺達そろそろ帰るわ。今日はごめんな!また来るからよ!」

 「あぁ。い、いつでも来いよ!!」

 最後の元気を絞り出し両手をめいいっぱいに振る。するとノリの良い拓海は俺のマネをして両手をブンブン振り回すが、愛実は何か疑ってる様な目をしながら手を振ることもなく視界から消えた。悪い事しちゃったかな・・・

 肩を落としながら玄関のトビラを閉める。完全に次会う時気まずくなるのは、逃れれないだろう。

 靴を乱暴に脱ぎ捨て、早足で自室に向かう。今日は本当に疲れた。

 ベッドに横になり今日の出来事を思い出す。色々あったが、さっきの出来事が頭から離れない。

 「明日からどうやって顔合わせたらいいんだよ~」

 頭を掻き毟りながらベッドに問いかける。答えてくれるはずなんて無いのに。


 コンコン


 扉がゆっくりと開かれる。案の定鈴が立っていた。しかし何故か目が潤んでいた。

 「どうした?何かあったのか?」

 俺の問いかけに答えず、無言で抱き付いてくる。

 「どうしたんだよ。俺に言ってみろよ。な?」

 「春斗さんは、頑張りました。私には分かりますよ、春斗さんの気持ち。私なら泣いてましたよ」

 どうやら俺を慰めに来てくれたらしい。鈴の優しさに、今まで我慢して来たものがプツンと切れ、溜まりに溜まった感情が全て押し流された。止まらない涙に止まらない嗚咽。全てを、今抱きしめてくれている鈴にぶつけた。優しく頭を撫でられながら、ひたすら「頑張った、頑張った」と言ってくれる。ただそれだけで俺は、徐々に落ち着きを取り戻した。

 「ありがとう。もう大丈夫。鈴のおかげで、元気百倍だ」

 完全なる空元気だが、俺にはこれが精一杯だ。鈴も当然気付いてるだろうが、元気がでたと判断し俺の元から離れていった。

 「もうすぐ夜ですね。ご飯の支度して来ますので。ではまた」

 できるだけの笑顔で鈴に答えると、向こうも可愛い笑顔で颯爽と支度にとりかかりに向かった。

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