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だから俺は同居したくなかった!  作者: ヤマトの山羊
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少女。幼馴染に怒り狂う

 外から聞こえる叫び声、何かあったのか!?二人の身に危険が迫ってるのでは無いのか!?俺はすぐさま外に出て、二人の元へと走る。

 「どうした!?何かあったのか!?」

 「「ぎゃあああああああああ殺人鬼ぃぃいいいいいいいいいいいいい!!!」」

 気付いた時には二人に殴られ、夏前の地味に熱いアスファルトの上に横たわっていた。俺が殺人鬼?何故だ・・・・・・・・もしかしたら、さっきのシーンを見間違えたのでは無いだろうか?鈴から包丁を取り上げた時に、偶然通りかかった幼馴染二人が偶々見てしまい。今に至る。てきな?

 考えるより先に二人の暴走を止めなければ。このまま騒がれては俺の身が危ない。

 「待ってくれ!俺の話を聞いてくれ!実は少女資格を持った子が俺の家に居候してきて、何だかんだあってその少女は若干のストーカーヤンデレ気質で、包丁を持ったその少女は自分を切ろうとして、阻止したらお前らがいて・・・それで・・・それで」

 「意味わかんない!現実と妄想の境目が分からなくなったのね。この妄想キモロリコン野郎!!」

 蹴り上げた足が顎にクリーンヒットし、俺はさらに地面に倒れこむ。このままじゃ、死んじゃう。(体と世間的に)

 俺の視界から見る見るうちに消えていく二人の姿を見ながら、軽く涙を零す。俺はここまでか。今日は本当に濃度が濃い一日でした。本当に、悔いまみれです。童貞は捨てたかった・・・・・・

 


 「「うわあああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」」

 遠くの方でかすかに聞こえる二人の断末魔。二人の身に何かおこったのか?

 ゆっくりと体を起こし、打撲した足を軽く引きずりながら玄関にたどり着く。すると、目の前に飛び込んできた謎の威圧感と怒りから溢れ出したかのような煮えたぎる何か。その正体は明白だった。


 「わ、私の!私の春斗さんに・・・・何さらしとんじゃぁああ!!!」

 片手には先ほどの包丁が握られていた。あいつに包丁は核爆弾並みに危険だ。二人の命を守るべく、打撲した足に喝を入れ、鈴に飛びかかる。

 俺の腕の中で暴れる鈴をどうにか落ち着かそうと、強く抱きしめる。怒りに震える声が徐々に元の声に戻っていくのを確認し、抱きしめる力を緩める。

 そんな二人を見た幼馴染は少し安堵する。理解してくれたのだろうか?

 「ま・・・まさか、あんたの家に少女資格を持った子がいたなんて。ごめん、誤解してたみたい。今のを見る限り、さっき見た春斗が少女を襲おうとしてたのは違ったみたいね」

 解ってくれて良かったよ。しかし、少女資格を知らなかったのは俺だけのようだな。そんなに有名なのか。

 「春斗さん。怪我ないですか?」

 「大丈夫だ。少し足を痛めただけだから」

 俺の言葉を信用してくれないのか、打撲した方の足をのぞき込む。ダメだ、この怪我を見せてしまうと、また発狂してしまう。

 「どれどれ・・・・・・・・青あざできてるじゃないですか・・・・・・・この人たち・・・・本格的に殺していいですか?」

 「駄目に決まってんだろうが!こいつらは俺の幼馴染なんだよ!」

 涙を流しながら怯える二人の前に俺は立ちふさがる。

 「もし幼馴染に手をだしてみろ。俺は、お前の事が嫌いになるぞ。もう一度言う。キ・ラ・イ・になるぞ。分かったな」

 鈴を今年一番の迫力で睨み付ける。思い通りにいってくれるだろうか?

 「春斗さんが・・・・・嫌いに・・・・?そんな・・・・・嫌です。嫌です。嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!ごめんなさい!!ごめんなさい!」

 包丁を投げ捨て、土下座をし始める鈴に俺を含め三人でドン引きする。ここまでされると、逆に俺らが悪いみたいになって来るじゃないか。

 戸惑う中、ずっと床に頭を擦り付けながら謝り続ける姿に俺は何かに目覚めた。しかし、それに気付くのは、また後なのである。

 「もういいから!もう謝るな。嫌いじゃないからさ。顔を上げてくれ」

 「グスッ・・・グスッ。ジュルルルッ」

 鼻水をすすりながら、涙で顔がぐちゃぐちゃになった鈴の顔が視界に飛び込む。しかし可愛い。


 どうにか落ち着き、リビングでお茶を入れる鈴を尻目に二人はいちゃつき始める。幼馴染二人がいちゃつくと俺は何故か悲しい気持ちになった。何故かなんて俺はとうに気付いてるくせに、わざと俺は気付かない様にする。認めてしまうと俺はどうにかなりそうな気がして、どうにか自分に言い聞かせる。

 「お前らさ・・・そろそろ一年だよな?」

 「うん。そうだよ。お前も早く彼女作れよな!毎日楽しいぞ~」

 「・・・・・・・・あぁ・・・」

 俺は強く拳を握る。この能天気さが俺には鼻についた。どうせお前には俺の気持ちなど分からないだろう。

 「先ほどは失礼しました。どうぞ、お茶です」

 静かに氷の入った麦茶を二人の前に置く鈴は、何故か俺の方をチラチラと見ながら微笑みかけてくる。もしかしたら気付いてるのかもしれないな。流石超優等生なだけあるな。

 「鈴、自己紹介しようぜ。こうやって和解もしたんだしさ」

 軽く返事をした鈴は、エプロンをそっと折り畳み、静かに俺の隣に座る。

 「初めまして、鳫八戸 鈴です。先ほどは本当にすいませんでした。お許しください」

 「いいよ、別に気にしてないからさ。俺の名前は能崎のざき 拓海たくみって言うんだ。よろしくな」

 「私の名前は道茂みちしげ 愛実めぐみ。私たちこそごめんね。変な誤解しちゃって」

 ペコペコし合う両者に俺は数回目の安堵と心のモヤモヤで満たされた。このままズルズルとモヤモヤし続けるのはどうかと思うが、解決方法なんて俺が見つけれる訳もない。

 取りあえず今は安堵した心に身を預けよう。

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