少女は血を吸う
表の顔は優しそうな、気の利く可愛い子。中身を開ければ好きな人にはどこまでも尽くし、気になることは徹底的に調べ上げ、少しストーカー気質。俺の求める最高の女の子。最初は怖がっていた俺だが、今となっちゃ興奮しっぱなしだ。現実でここまで思ってくれる女の子何てそういないだろう。
しかし、常に気を張らなければいけない。何をするか分かったもんじゃ無いからだ。昨日までは普通の女の子だと思ってたんだがな。
「お茶淹れようか?喉渇いてきただろ?」
「いけません!私が淹れますから、どうか、座っていてください」
「いや、これは俺がやりたくて言ってるから。座っててくれ。鈴も疲れたろ」
渋々受け入れてくれたようだ。鈴は働きすぎている。たとえ自分がやりたくても、少しくらい気を抜いてくれてもいいんだ。
棚の奥にある高級な茶葉を取り出し、鼻歌を歌いながらお茶を注ぐ。さすが高級茶葉、文句なしの香りだ。親戚が旅行先の青森で買って来たらしい。旅行なんて何年も行ってないな~。
お茶を注ぎ終わり、零れないように気を払いつつ、鈴の元へ戻る。
「お茶淹れ終ったぞ~ぉうとととととっ!!!」
ガシャンッ
段差に足を引っかけ派手にこける。ギリギリ鈴と俺にはお茶はかからなかったが、割れたコップが俺の指を軽く切った。血が少々だが床にポタポタと落ちる。
それを見た鈴は顔を青ざめながらかけ寄って来る。そんなに大した傷では無いのだが、彼女からしたら大事なのだろう。
「大丈夫ですか!?わわ私が血を止めまますから!」
血の出ている指をそっと持ち上げ自分の口へ持って行こうとする。
「私が血を吸って、舐めて止めます!」
そう言うと俺の指をくわえた。温かい口の中では必死に血を止めようと舌を使いながら器用に止めにかかる。正直気持ちいい。
口から出したかと思えばレロレロとさらに舐めまわす始末。もう、いいんじゃないかな?何故か甘い吐息を交わらせながら吸い付いてくる。え・・・エロイ。
「・・・んあっ・・・・・・・・はむっ・・・・・・・・・・・ふぅっ」
ようやく舐め終わり、自分の指を見てみると、予想通りベトベトで少し指がふやけていた。
「美味しいです。春斗さんの血」
「そうか?じゃあお前の血も舐めたいな!なんつって!」
謎の沈黙が生まれる。
「わかりました。私の血でよければ」
おもむろに台所まで走っていき、包丁を取り出す。
ま・・・・・まさか!?
「私を・・・ハァ・・・ハァ・・・私を舐めてくださいぃぃぃぃいい♡」
「やめろおおおおおおおおおおお!!!!!」
自分の指を切ろうと包丁を振り上げる。その瞬間に飛びかかり、間一髪の所で腕を掴む。すぐさま包丁を奪い取り、息の荒い鈴に俺は怒鳴りつける。
「アホかお前は!!!自分の可愛い手に傷つけるんじゃねぇよ!!」
泣き出しそうな顔の鈴に、申し訳ないがここは年上ということで。頭を軽くゲンコツした。
「もう少し、考えて行動をしろ。俺の事は二番でいい。自分の事を一番に考えろ。変な冗談を言った俺も悪いけど、全て受け入れる鈴も駄目だからな。わかったか?」
大粒の涙を零しながら縦に首を振る。
何とか丸く収まった。今日で俺の命をどれだけ削ったのか。常に心臓がバクバクしているのは今日が初めてかもしれない。
時計を見るとお昼がもうすぐやって来る頃。小腹も空いてきた事だし、今日は外食でもしようかな。よし、今日はハンバーグでも食べに行こう。
手に持った包丁を元に戻そうとした時、ある視線に気付いた。何だ、この視線わ。外か!?
外に目をやると、幼馴染二人が大声で叫んでいた。
次回、幼馴染が出ます。