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01 ニート

 異臭が鼻孔をついて目が覚めた。

 ぼやけた視界が徐々に鮮明になり、黄ばんだ天井が俺の目に映る。

 汚ねーなと思いながら、こうも黄ばんだのはタバコを吸ってた所為だなと原因を明らかにし、同時に敷金が帰ってこない近い将来の現実に打ちひしがれた。


 むくっとベッドで上半身を起こし、頭を掻きながら部屋を見渡す。

 捨てられていないゴミの入ったいくつかのビニール袋が掃き出し窓を塞いでいる。

 また脱ぎ散らかした服やゴミが床に散乱していて、我ながら汚い部屋だと呆れてしまった。

 汚い部屋であるが俺は片づける気になれない。汚すぎてどこから手を出していいのか自分でもわからないからだ。わかってもどうせやらないだろうし自分でも諦めてしまっている。

 幸いまだGの姿は見ていない。奴の姿が見えないだけ安心だ。しかし、この部屋を見る限り時間の問題だろう。刻々と訪れる最悪の事態まで俺はなにもせず身を任せたままのだろうなと俺は悟った。


 テーブルの上にはタバコの吸い殻が大量に入った灰皿。起動して放置されたノートパソコン。

 俺は唯一ゴミや服で埋まっていない定位置の床に座り、マウスを動かし、ノートパソコンの黒い画面からデスクトップ画面へと切り替える。

 デスクトップには掲示板専用ブラウザとウェブブラウザが起動していた。ウェブブラウザには昨日見たエロ動画サイトがそのまま残っている。そういえば、昨日エロ動画サイトを巡回してて結局これといったものが見つからず、結局今現在開いている動画で我慢したのを俺は思い出した。

 今更未練などないのでその動画サイトのタブを閉じると、俺はニュースサイトにアクセスする。

 昔の大人が新聞を読むように、俺はニュースサイトで最近の世情を知る。

 新聞なんて時代遅れ。金払ってまで情報を知るなんてアホくさい。

 重要な情報は自然とネットで話題になり、嫌でも知ることになる。


 さて、なにか面白いニュースはないか。マウスホイールをくるくると動かしながら関心のあるニュースを探していく。芸能には全く興味が持てないので無視。政治は面白い時とどうでもいい時が激しいんだよな。

 最近は世界を巻き込んで色々あったので面白かったが、少し前の日本が当事国になるのは嫌だったな。戦争だけは勘弁。こんな屑でもまだやり残したことは結構あるし。


 結局、これといったニュースはなく、俺はニュースサイトを閉じる。それから起動したままの掲示板専用ブラウザを前面出し、ニュース関連のスレッドを見ていくが、これまた関心のあるニュースは無かった。

 深いため息をついて自分のやることのなさに鬱になる。久しぶりに真面目に大学に行くかと頭に過るも結局億劫になり、ベッドで横になった。




 俺には幼なじみが居た。女の幼なじみだ。漫画やアニメや恋愛シミュレーションのような美少女で毎朝起こしにきてくれて、兄妹のような関係だけど実は俺のことを好きみたいな事はなかった。親が親しかっただけで俺とその幼なじみは関係は良好とは言えない。話さないわけではなかったけど、一緒に遊ぶような関係でもなかった。挨拶する程度の関係。

 正直、俺自身、彼女に好意は無かった。それでも彼女が高校二年の時に彼氏が出来たことを知って、すごいショックを受けたのは覚えている。全く仲よくもなかったし、彼氏でもないのにNTRされたような気分を味わった。それから俺は余計に彼女との接触を避け、彼女の情報を知ろうとしないようにしていた。


 大学も県外を希望して、受かるはずの地元の大学を蹴った。

 結局、俺は逃げたのだ。




 異臭が鼻をついて目が覚めた。

 嫌な夢を見ていた気がする。思い出したくもない嫌な夢。

 心臓をきゅうっと締め付けられ、呼吸が苦しい。

 俺はベッドから降りると冷蔵庫から飲みかけの2リットルのコンビニで売ってるお茶を取り出し、ペットボトルの蓋をあけそのままラッパ飲みする。

 のど仏を鳴らしながら残りを一気飲みすると、空のペットボトルを床に放置。そのままベッドに尻を落とすと左手で髪を掻きあげた。


「俺、なにしてんだろ……」


 思わずそう呟いてしまった。

 目が熱くなり、視界が歪んでいく。


「なにやってんだよ……俺」


 目から涙が溢れ出て、頬を伝って顎の先までいき、そこで滴となり床に落ちる。

 瞼を閉じると溜まっていた涙が一斉に落ちて太ももを濡らした。



 


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