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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

空席

作者: ユキ0506

暴力、嘔吐、死ネタが入ります。苦手な方はご遠慮ください。

私の左側の席は、もう二週間ほど空席になっている。


そこの席の持ち主は品川美紀子(しながわみきこ)。成績は良い方で、顔は美人ではないが不細工と言う訳ではなかった。そんな彼女が学校に来ていない理由は簡単、自殺、である。原因は単なる「イジメ」。しかし彼女が自殺した事を皆知らない。皆個々に日常を送っている。皆、そこが「空席」だと言う事に関係ないよというように---。



某女子中学校3年2組出席番号1番相川唯加(あいかわゆいか)2月6日生まれB型、それが私のプロフィールである。私は、窓側から二列目の一番後ろと言う席を確保していた。友達はそこそこいるし、疲れるような友達関係は持ってないし、私にとってはまぁ幸せな毎日だった。

しかしある時、私はクラスメイトが美紀子に対しての陰口を叩いてるところを聞いてしまった。内容は、「大して可愛くないのにでしゃばるよね」「勉強してないくせに頭いいとか。ムカツク」「なんか性格良く振舞ってて八方美人。だから嫌われるんだよ。性格良い訳じゃないくせに」と言うものだった。私は、陰口くらいと思ってそれを無視した。


次の日、私はいつも通りに学校に登校した。何気ない、変わらない毎日の風景。私はそんな朝の休み時間を楽しんでいた。

ガラッ。

と、教室のドアが開く音がした。瞬間、教室のどよめきが壊された。信じられない静けさが教室を包みこむ。何事かと顔をドアの方へ向けると、そこには美紀子がいた。美紀子自身も驚いたらしく、怪訝そうな顔で教室に入ってきた。不思議な空気のまま、美紀子は歩みを進める。しかし次の瞬間、美紀子が転倒した。私から見れば、足を引っ掛けられた形で。

「アンタ、なにすんのよ」

「......」

美紀子に睨まれた生徒、牧原理伽(まきはらりか)は毅然とした態度で無視をした。

「ねえ」

「...」

「ねえっつってんでしょ」

「チッ...五月蝿ェなあ...」

「はあ!?」

美紀子がキレた。まあ、仕方ないだろう。

「アンタが足掛けたんでしょ!?謝ったらどうなのよ!?」

「待ってよ、品川が足元に注意しないからいけないんじゃないの?」

「そうだよ、自分が悪いんじゃん。理伽に謝れ」

「他人(ヒト)のせいにするとか最低ー」

次々と理伽の周りに生徒達が集まる。悪いのは明らかに理伽なのに、いつのまにか美紀子が悪者扱いされている。私はそれをただ呆然と見ていた。なんで美紀子があんなに責められているんだろう。私は右隣の北島詩織(きたじましおり)に尋ねた。

「ねえ、理伽のとこってどうしたの?なんか空気悪いね」

「あれ唯加知らない?昨日、理伽が美紀子をイジメることにしたって宣言したの」

「え、どーいうこと」

「んー、理伽のことだし退屈しのぎじゃないかな」

「...はぁ?」

意味が分からない。退屈しのぎにヒトをイジメるなんて。私は立ち上がって美紀子を助けにいこうとした。しかし詩織がそれを制した。

「ちょっ、やめなよ唯加」

「なんで...」

「唯加が美紀子助けたら、次の標的唯加になるよ?」

「......」

私は最低だ。私がイジメられたくないという理由で美紀子を見過ごすなんて。


そして、美紀子へのイジメがはじまった。



「痛っ、いやだっ、やめてっ」

今日も聞こえる美紀子の悲痛な声。今現在、美紀子は複数のクラスメイトに蹴られている。床にうずくまり小刻みに震える。そこに一人が木製の野球のバットをもってきた。一人はバットを大きく振り上げ、勢いよく美紀子の背中目掛け振り下ろした。

「がっ」

美紀子の口から奇妙な声が漏れる。それを見て笑うクラスメイト達。何度も、何度も美紀子の背中を殴りつける。その度に美紀子が喘ぎ、皆からは笑い声が溢れる。

「うぇっ、ぇっ、ぉぇええぇぅっ、っ」

数十回殴られると、美紀子はその場に嘔吐した。

「うわっ、きったなー」

「ちょっとー教室汚さないでよ」

「あたし達知らないからー。ちゃんと片付けておいてよね」

キャハハハハハ。

全てを美紀子に託し走り去る。私は見て見ぬふり。だって、私には何も出来ないから。



そして、それ、は雨の降る日だった。

ざー。

下校時刻、皆が下駄箱に密集する時間帯だった。私は外に出て安っぽいビニール傘を差した。私はふと、上を見上げた。雨の中、傘も差さずに屋上に立っている人物がいる。

美紀子だ。

確認できた。あれは絶対美紀子だ。何しているんだろう、そう思った時だった。

美紀子の、体が、宙に浮いて、そのまま、


落下した。


ざー。

無機質に雨が音を立てる。とても大きな音がしたから、辺りは騒がしくなった。美紀子は、


目の前で、肉塊となっている。飛び散った美紀子の肉片が私の足元にこびりつく。頭はざくろのように弾け、紅が美紀子の周りに広がる。

心拍数が異常な程速くなる。鉄の香りが鼻をつく。あぁ、今、


美紀子が死んでいる。


ざー。

ざー。

ざー。



その後美紀子は回収されもう葬儀も済まされた。学校側、イジメのグループ側からは品川家に謝罪をした。多数は処分を受け、残りは変わりなく日常をすごしている。


しかし、私は未だに心に傷が残っている。目の前でヒトが死んだこと、イジメのグループがしてきたとても凄惨な暴力、そして何より美紀子を助けなかったことへの自責。私があの時、美紀子を助けてあげられてたら。今となってはもう遅い。

だから、わたしはこれから一生美紀子のことを背負いながら生きていく。


私はもうこんな後悔しないように強く生きていきたい。



誤字脱字、ありえない表現があるかもしれませんがその時はお知らせくださると嬉しいです。また、ここまで読んでくださってありがとうございます。初投稿なので色々と拙いですが、よろしくお願いします。

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