門番Aと呼ばれる勇者曰く、“表示”は便利だ。
勇者生活いちにちめっ、そのよんっ!
目の前にあった階段をどんどんと上り、王様の居場所を目指す。NPCな衛兵に訊けば、王様は三階の謁見室にいるらしいのだ。……めんどくさいから、謁見室ぐらい一階に作ってくれよな。
ちなみに、さっきから文句たらたらだった門番Cも、さすがに今は黙っている。そらそうだ、生まれて初めて『立つ』以外の行為をしたのだ。いくら疲労を感じない身体でも、精神的な疲れは溜まるだろう。
そのうち慣れさせてくしかねぇな。コイツには、俺の代わりに戦ってもらわなければならないのだから、鍛えねぇと。
そんなバカで自己中(自覚アリ)なことを考えながら階段を上りきり、やっとのことで謁見室に辿り着く。こっからが、王様とのご挨拶である。めんどくせぇから任せたぜ、門番Cっ!
「……王様に粗相のないようにな!(王様! こっ、この度、勇者様に連れられ、パーティに参加することとなった門番Cでありますっ!)」
ぷっ!! こ、これはウケる! なにこれ、王様本人に向かって『王様に粗相のないよいにな!』だって? 超おもしろいんですけど、超おもしろいんですけどぉぉ!!
「おぉ勇者よ、死んでしまうとは情けない」
そしてなぜ王様は勇者が死んで、王城にワープさせられて復活した時の言葉しかしゃべれないわけ?! やばい、やばすぎる! 腹筋崩壊するっ! これもバグの影響か?!
つか、王様が内心でなにを思ってるのか、非常に気になるのは俺だけでありましょうかっ!!
「王様に粗相のないようにな!(お、おい、勇者様! 助けてくれよっ!?)」
「いいえ」
「王様に粗相のないようにな!(なしてぇぇ?!)」
ふっ……哀れな。ニヤケ笑いが止まらない。
その後俺たちは、言葉が通じないのに『王様から“銅のつるぎ”とやくそう×5と200Gを渡された!』という表示で話を進められ、王城から出る事となった。
最近、“表示”の便利さに気付いた俺の名は門番A。門番Cを巧みに操り旅に出る、姑息な(自覚アリ)勇者サマさっ!