表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

門番Aは改名しても『王様に粗相のないようにな!』がお似合い。

 門番生活三ヶ月といつかめっ!



 はっ! ゆ、夢? 夢なのか? そ、そりゃそうだよな、うん。まず、俺が勇者になれるわけねぇし。つか、俺はふざけすぎだ。バカじゃねぇの。夢の中での行動とはいえ、自分の行動に嫌気が差す。悪いことしたな、門番Cには…。

 そんな鬱な気分に浸ってる俺が、門番Bとしりとりをする気になれるはずもなく。ただただ呆然と立ち尽くした。……もし、もう一回やりなおせるなら、もっと真剣に門番Cと頑張りたい。素直にそう思えるが、そんな機会は二度とないのだろう。これは、罰だ。


 やっべぇ、なんでこんな鬱な考えばっかり頭の中で渦巻くのだろう? 夢の中での出来事なのに。あぁ、なんか気晴らしになることねぇかなぁ。



『勇者が現れた!』


 ……なぜに?! なんで勇者時代の“表示”が現れるわけ?! こんなんじゃ、気晴らしになんかならないからねっ??!


「王様に粗相のないようにな!(なんで勇者が……)」

「いいえ(今日はしりとりしないのな?)」


 勇者はそう言って、俺の横を通り過ぎていった。……お、俺、なんで勇者の言ってることが理解できるんだ? つか、なんでこの勇者は俺たちがしりとりばっかやってることを知ってるんだ?!

 俺はパニクり、背を向けて入城しようとする勇者に向かって、思わず声をかけてしまった。


「王様に粗相のないようにな!(お、お前! しゃべれるのか?!)」

「はい」


 おぉぉ! 俺、勇者の言葉を理解してる!! すげぇ、テンション上がるっ!!


「王様に粗相のないようにな!(じゃあ、ちょっとしゃべってみてくれよ?!)」

「はい(そう焦んなっての。これでいーんだろ? ほれ、しゃべったぞ)」

「王様に粗相のないようにな!(おぉぉ! すげぇ、ホントに俺、勇者としゃべってやがるっ!!)」


 こ、この喜びは、同僚の門番Bにも伝えてやらなけきゃもったいないっ!!


「王様に粗相のないようにな!(ほら、門番B! 俺、勇者としゃべってるよ!!)」

「どうぞお通りください勇者様!(はぁ? お前、さっきから何言ってんだ? 勇者様はさっきから『はい』と『いいえ』しか言ってねぇぜ?)」


 ……ん? なんか俺、このやり取りを聞いたことがあるような気が……。つか、この勇者のあくどい笑み、どこかで見たことあるような気がする。あれはなんだったっけか……んーと、鏡?

 って、うぉぉい?! 俺?! 俺じゃん! 俺だったりしちゃったりしてるじゃないですかっ?! じゃああれか、俺は今まで、門番Cと思って俺をいじめてたわけなのか?! これは、とんでもない罰だな、おい。罰が自業自得過ぎてもう逆に笑えてくるよっ!!


「はい(おもしろいっ!)」


 これは、俺が門番Cを連れ去る前兆……つか俺、今は門番Cなのか?!


「はい(おい、門番C! ちょっと来いっ)」

「王様に粗相のないようにな!(うぇえ?! ちょ、なにぃぃ?!)」

「はい(俺の代わりに戦え、以上。じゃ、王様と謁見するのもヨロ。だから来い)」


 くっ……このままじゃ、また俺が壊れて暴走して、罰を受けるという無限ループに入ることになるんじゃねぇか?! それはマズイっ! 止めてやる! あんなバカなこと、二度としたくねぇ。

 強く念じる。せめて今だけ、コイツを止める力をくれ。


「おい、調子のんなよ…」


 念じたのに意味があったのか、普通にしゃべれる。これが、俺の更正する最後のチャンスだ。


「勇者だからって、他人に迷惑かけていいわけじゃねぇんだよ! あんたはさっさとハッピーエンド目指して、地道にレベルアップしてこいボケェ!!」


 なぜか動く身体を動かし、勇者の背中にドンッと蹴りを放つ。背中から押し出された勇者は一気に城門をくぐりぬけ、マップ移動のせいで姿が見えなくなった。

 これでいいのかは俺には分からないが、こっちの“俺”は真面目に勇者をやってくれると非常に嬉しい。勇者としての体験は、あんたに任せた。俺は、門番を続けるさ。これも、ゲーム上重要な仕事の一つなのだから。



 俺は、今日も今日とて城門に立つ。相棒の門番Bと毎日毎日しりとりをしながら、通り過ぎる様々な勇者たちに『王様に粗相のないようにな!』という言葉をかけ続ける。名前を門番Aから門番Cに改名した(もしくはさせられた)この俺は、バグの多いRPGのしがないNPCである。

 おっと、次の勇者様のお通りだ。今日も、いつもの定型文、いっときますか。


「王様に粗相のないようにな!」



 ―――――fin.

おまけ


「リップ」

「プリクラ」

「ラップ」

「……プール」

「ループ」

「また……えと、プッシュ」

「シュリンプ」

「………………プラス」

「スープ」

「……プラスチックっ!!」

「クリップ」

「………んぎゃああぁぁぁあああ!! どんだけ“プ”で回すんだ、いじめなのかいじめだろうそうだろう?! もう考えつかんわボケぇぇぇえ!」

「ふふん、まだまだいっぱいあんじゃねぇか。プルトニウムとかプラスドライバーとかプリン・ア・ラ・モードとかプロフェッショナルとかプログラムとかプログラマーとかプレーンオムレツとか、な。ほら、たっくさん」

「……もうそれ、全部言えないじゃん」

「うん」

「……もうしりとりやだぁぁあ!!」


……今日も平和にしりとりは続いております。




と、いうわけで、これで完結だったりします。


一応、短編として作っていた作品なので…。


続編や番外編のリクエストをしてくだされば、もう少しこの門番A君の話を書いてみたい気もしますが、出来はおそらく期待できないでしょう。


このような稚作に最後まで付き合っていただき、ありがとうございました!


それでは、また柚雨の他作品、もしくは続編でお会いしましょう!


……続編は、希望薄ですが。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ