7話
その部屋は、床から壁に至るまですべてが純白の大理石で設えられており、天井には巨大なシャンデリアが美しく輝いています。
部屋の中央には、巨大な円形の丸テーブルが鎮座しています。
そこに座る八人の男女は、さながら伝説に語られる「円卓の騎士」のような威厳を放っていました。しかしその実態は、クロエの家族です。
椅子から立ち上がったクロエが、今日起きた衝撃的な出来事を家族に説明していました。
【円卓に集いし一家】
①クロエ。異世界転生少女です。黒髪でやや小柄な体格をしており、大人しそうな見た目に見えますが、案外喧嘩っ早く、男子に対しては鉄拳制裁も厭いません。いまだに男性だった時の感覚が抜けておらず、注意しなければ、つい男言葉になってしまいます。
②飼い猫・あずさ。クロエの隣に座る、銀の尾を持つ黒猫です。当然のように人間の言葉を使い、クロエの前ではいつもお姉さんのようにふるまっています。
③母・ソシエール。シャンパンゴールドの髪に赤い花飾りを揺らし、微笑みを絶やさない女性です。家族の食事を作ることに生きがいを感じていますが、掃除と洗濯は嫌いなので、お手伝いさんにすべて任せています。
④父・ボルゾイ。二メートルを超える長身に、レトロなスーツを身に纏い、ティーカップを傾ける男です。娘にちょっかいを出しては怒られるということを、何度も繰り返しています。
⑤祖父・ロットワイラー。がっちりとした体躯で椅子を軋ませる老人です。足元には愛用の杖を置き、ボケたふりをして家族を笑わせる機会を伺っています。
⑥祖母・コリー。黒曜石のような瞳に眼鏡を光らせ、静かにクロエの話を聞いています。息子であるボルゾイを、いまだに子ども扱いしています。昔は相当に「やんちゃ」だったと噂です。
⑦祖父・ブルーム。青黒い髭に覆われた、巨大なマリモのような見た目をしています。かなりの無口な人物で、孫であるクロエですら、数回しか声を聴いたことがありません。しかし家族に対する愛情は深く、一人でいることを嫌います。
⑧祖母・ガルーア。鋭い目と尖った耳が特徴的です。お風呂をこよなく愛する彼女は、いまも風呂上がりでした。家族の中で唯一、肉よりも魚を好んでいます。
「なるほど、話は大体理解した。肝心なのはここからだ……クロエ、お前はこの件をどのように処理したいと思っているのか、聞かせてくれ」
クロエの説明が終わったところで、父のボルゾイが落ち着いた口調で話しました。クロエはしばらく考えてから、口を開きます。
「できるだけ穏便に済ませたい」
その言葉に、一同は驚いたり頷いたりと、反応は様々でした。
「穏便というのは、今から教会に殴り込み、教皇の首を取ってくることを言うんじゃな?」
祖父ロットワイラーが嬉しそうに言いましたが、祖母コリーによって即座に否定されます。
「あなたは何の話を聞いていたのですか。大事なことを言っているのですから、しっかりしてください」
「すまんすまん。ところでソシエールさん、昼飯はまだかな?」
「何を言っているんですか、お義父さん。もう食べたじゃないですか」
「そうかそうか、そうじゃったって。食べとらんわい!」
ロットワイラーは大爆笑を期待して家族の顔を見渡しましたが、反応はそれほどでもなく、非常にがっかりしています。
「父さん、今はそんな話をしている場合じゃない。教会の連中が、クロエを攫いにやってくるかもしれないんだ」
「すまんかった。しかし穏便と言われても困るな。ワシは暴れるのは得意だが、交渉や策謀などは専門外だ」
腕を組んで唸るロットワイラーに代わり、祖母コリーが穏やかな口調で尋ねました。
「クロエは、どうして穏便に済ませたいと思うの?」
「それは……今の生活が好きだから」
クロエは、円卓に座る家族の顔を見渡します。
「この家にいるのが好きだから。もし教会と大きく揉めるようなことになれば、この静かな暮らしがなくなってしまう。みんなも、今と同じ生活はできなくなる。それが嫌なんだ」
「ふむ……」
しばらくの静寂の後、父ボルゾイが穏やかな笑顔を浮かべながら、話を切り出しました。
「というわけで皆さま。クロエが望む穏便な解決をするために、どのような行動を取るのが最適なのか、一緒に考えましょう。家族が一致団結すれば、この程度の困難は、きっと乗り越えられるはずです」
皆が頷くのに合わせて、母ソシエールが柔らかい笑顔で言いました。
「その前に、まずはお昼ご飯をいただきましょう。とても美味しいカルトッフェルスッペが出来上がっていますよ」
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