6話
機関車のように白い息を吐きながら走るクロエとあずさの目の前に広がったのは、まるで幻想の世界から切り取られたかのような光景でした。
人の背丈をはるかに超える白い薔薇の生け垣が、屋敷の敷地をぐるりと囲むようにそびえ立っています。
雪を薄く被りながらも、無数の白い花々が狂おしいほどに咲き誇り、そのあまりの美しさに、思わず息を呑んでしまうほどです。
その生け垣を挟み、鮮血ような色をした、重厚な金属製の両開き扉がありました。
そこに立つのは二人の門番。
磨き上げられた金属の鎧は雪を弾き、その手には鋭い槍がしっかりと構えられています。
彼らが守るのは、断崖絶壁立つ巨大な白亜の屋敷です。「白薔薇屋敷」――その通称は、この場所の美しさと怪しさを、同時に表現しているかのようです。
「リュウ! ケン! おいっす!」
急ブレーキをかけ、ふたりの門番の目の前で立ち止まったクロエが、かなり気さくな挨拶をしました。
「おや、随分とお早いお帰りですね。しかも、息を切らすほど走って帰って来るのは久しぶりのことです。何か事件でもありましたか?」
右側の兵士が喋り終えると、左側の兵士が同意を示すように頷きました。
「察しが良いな、ふたり共。その通りだよ。たぶん今から、教会の奴らが大挙してやってくると思う」
「ほう! これはずいぶんと楽しそうな……失礼。随分と大変な状況ですね。さすがはトラブルメーカークロエ様です」
「それって褒めてないよね?」
「どうでしょうな」
「とりあえず家族に相談してくるから、守りはよろしくね」
「了解いたしました」
赤い両開きの扉がゆっくりと開かれました。近隣の者どもは噂します。許可なく「白薔薇屋敷」へ侵入し、生きて帰って来た者はいないと……。
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