32話
「あずさはどう思う?」
ふかふかのベッドに身を沈めながら、クロエは傍らで丸まっていた黒猫――あずさの背を、優しく突いて興味を引きました。
「あの人は、クロエのことを何も分かっていないわ」
その声は、落ち着いた知性と包容力を感じさせる、「年上の優しいお姉さん」のトーンです。
「王都警護騎士だっけ? よく知らないけど、警察みたいに王都の治安を守る職業なのかな。なんだか格好いいよね」
クロエが頬を膨らませると、あずさはクスクスと喉を鳴らして笑いました。
「クロエには、全然合ってないと思う」
「なんでよ!」
「だってクロエは、治安を破壊する側の人間だもの」
「そんなことないでしょ!」
「もし警察みたいなものだとしたら、上下関係だとか規律だとかに厳しい組織ってことでしょう? 耐えられないと思うわ」
「ぐぐぐぐ……」
「新聞配達なんて、もっと論外よ。クロエに早起きができるはずがないのだもの」
「それじゃあ、どうすればいいっていうのよ」
不貞腐れた表情で、クロエはグラスを傾け、喉を潤しました。
「それよ」
「え?」
繊細なカットが施された高貴なガラスコップの中には、この世界には存在し得ないはずの、漆黒の液体がありました。――しゅわしゅわと弾ける気泡を湛えた「コーラ」です。
「貴女には、特別な魔法があるじゃない」
あずさはニヤリと、悪戯っぽく笑みを深めました。
「水を完璧に操り、物質の構成すら書き換えてしまう。その力を使って、商売でもしたら面白いんじゃないかしら?」
「なるほど……」
「上官の命令に従って街をパトロールするよりも、そっちの方が、ずっと貴女らしい刺激的な生き方だと思うわよ」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。
評価を頂ければさらに喜びます。
☆5なら踊ります。




