27話
素晴らしく豪華なお風呂を満喫したクロエは、魂が抜けたようにソファでぼーっとしていました。
貸してもらった白いドレス――真珠のように輝く装飾が大量に散りばめられた、明らかな高級品を身にまとっています。
本来であれば、これほど可愛らしすぎる衣装はクロエの好みではありません。しかし大雨のせいで、持っていた服はすべて使い物にならなくなっていたのです。
そこへ、あの白スーツの執事が朗らかな笑顔で現れました。
「お食事の準備ができました」
「いえ、私は……これ以上お邪魔するわけには……」
帰ろうとする素振りを見せるクロエでしたが、執事はそれを遮るように、静かに料理名を告げます。
「今夜は、自家製ザワークラウトを添えたシュヴァインスハクセをご用意いたしました」
「っ……!」
それは、クロエの故郷――ジャーマニーの味。
料理名を聞いただけで、思わず喉が鳴りました。クロエの頭の中は、久しく忘れていた故郷の香りで満たされていきます。酸っぱいキャベツと、香ばしく焼き上げられた肉の脂……。
気がつけば、ふらふらとダイニングルームへ足を踏み入れていました。
「あら、思っていた通り凄く似合っているわ」
満面の笑みを浮かべているのは、妖艶な美女――カトリーヌさんです。きっと彼女は、自分の考えなどすべてお見通しなのだろう、とクロエは思いました。
けれど、抗えません。
他愛のない話を交わしながら、実家の母が作る味にも負けないほど素晴らしい、本場の故郷料理を堪能し、腹いっぱいになったクロエ。
丸洗いされた猫のように、彼女はすべてを諦めた顔をしていました。
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