12話
蒸気機関車が長い吐息を漏らしながら停車したのは、午前二時四十五分でした。
パリストン北駅の出入り口から姿を現したのは、ライダースジャケットを着た黒髪の転生少女、クロエでした。
新天地への期待に瞳を輝かせているかと思えば、その真逆です。疲労と睡眠不足、そして腰の痛みに、顔を大きく歪ませていました。
「二十一時間も汽車に閉じ込められるのが、こんなにも辛いとは………」
苦笑い混じりの声が、リュックサックの中から聞こえてきます。
「一等寝台じゃなくて、一等車の切符を買ってしまったせいね。いい勉強になったんじゃない?」
「一番いい席は一等車だと思い込んでいた。まさか寝台車があるなんて、思わなかったよ。痛たたた………」
クロエは呻き声を上げながら、自分の腰を叩きました。
「時間も時間だし、真っ暗なのかと思ったら、意外ににぎやかね。パリストンは」
「そうだね………」
あずさの声を受けて、クロエは改めて辺りを見回しました。
目の前に広がるのは、街灯に照らされた絵画のような街並みです。慣れ親しんだジャーマニー国の空気とは違い、街全体が浮かれているように見えました。
「なんていうか、建物が白っぽいな」
「建築に使っている石材が違うんでしょうね………ところで、まず最初はホテル探しでいいの?」
「もちろん! 近くにあって、一番立派そうな……あのホテルにしよう」
クロエが指さしたのは、深夜とは思えないほど眩い光を放つ、五階建ての巨大な建築物でした。
建物の外壁は乳白色の石灰岩で造られており、外灯の光を反射して、神々しく輝いています。
「それじゃあ、馬車に乗って………」
「いや、歩いて行くよ」
クロエは、きっぱりと言いました。
「椅子に縛りつけられていたせいで、体がバキバキなんだ。少し動かしたい」
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。一晩寝れば、すぐに良くなると思う」
ようやく旅の高揚感を感じ始めたらしいクロエは、ホテルを目指して、軽快に歩きはじめました。
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