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44.




「――――あ、マイちゃん、よかった……気が付いた?」

「……ノアール?」


 ゆっくりと開けたマイの視界の先に、心配そうな表情で自分の顔を覗き込んできているノアールの姿が目に移った。

 天井や部屋の景色が見慣れたものであったことに、自室のベッドの上であることが分かり、マイは首を傾げた。


「何でここに……? わたしの部屋だよな……?」

「あ、ごめんっ。部屋は勝手に入ったけどカギ開いてたし、ほら、昼にラピスちゃんからマイちゃんがちゃんとご飯食べるか見張っててって頼まれたから来たんだけど……来たらマイちゃん部屋の中で倒れてたんだよ」


 言われてふと窓の外に目を向けてみれば、日は傾き始めていて、もうそろそろラピスが帰ってくるだろう時間になっていた。


「昼からずっとわたしの様子見てたのか……? 医者でも呼んで放っとけばよかったのに」

「いやあ、思ったけど……オレ動けなくて」

「動けない? 何でだ?」


 ベッドの上で身体を起こしつつ、ふと自分の左手が何かを掴んでいることに気付き、マイはそれを引き上げてみて、「えっ」と声を上げた。

 自分の手にくっついてきたのは、ノアールの右手であり、ノアールの小指を何故かしっかりと握りしめていた自分の手に、マイは思わず固まった。一方ノアールは、気まずそうに笑いながら自分の頬を左手で掻きつつ、へらりとした笑いを浮かべる。


「最初服の裾握られてたんだけど〜……外そうと試行錯誤してたらいつの間にかこうなってて? マイちゃん何か悪夢でも見てるみたいに苦しそうだったんだけど、オレの指握ったらそれちょっと和らいだから、まあこのままでいいか~って……」


 言っている途中で、マイは慌ててノアールから手を離して、顔を真っ赤にさせた。


「すっ、すまない! 意識がなかったとはいえ、すまないっ」

「いやあ、別にいいよ〜。ところでマイちゃん何で倒れてたの? なんか意識失う前頭痛いって言ってたけど、もう大丈夫?」


 聞かれてマイは一瞬息を飲みこんで、すぐに「さあ?」と首を傾げた。


「あまり覚えてないが、貧血だったんだろうか……な? 今は何とも」

「まあ、倒れてた時顔真っ白だったけど、今はそんなでもないし……頭はもう痛くない?」

「ああ、全く」

「じゃあよかったけど、んーアルガちゃんに一応報告しとこうかなあ」


 明日からパーティで狩りに行く予定があるため、そんなことを言ったのだろうノアールに、マイはすぐに「止めてくれ」と言った。


「今は何ともないんだから言わなくてもいいさ。な?」

「え~……マイちゃんあんまり信用ないしなあ」

「お前の目から見ても大丈夫そうだろう? ほらっ」

「まあ、嘘吐いてる感じはしないけど……」

「だから大丈夫だ。寝不足で貧血だっただけだろう、多分」

「ん~……」


 そう話している時だった。


「ただいまですにゃ〜っ。だんにゃさまどうかしたにゃ〜? 床に……」


 そんな声が聞こえて玄関のドアが開き、トコトコと寝室までやって来たラピスは、部屋の中にノアールが居たことに「にゃっ!?」と身を引いた。


「ラピスお邪魔したにゃ!? 今日は帰らにゃい方が良かったにゃ!?」


 そんなことを言い出したラピスに、今度はノアールが顔を真っ赤にして「違う違うっ!!」と慌ててラピスに詰め寄った。そうして、かくかくしかじかこうだったとノアールが説明すれば、ラピスはすぐにマイの元へと駆け寄り、ぴょんっとベッドの上に飛び乗ってくる。


「だんにゃさまっ! 大丈夫にゃっ!? ラピスが居にゃい間にそんにゃことににゃっているとは……!」

「あ、ああ、もうすっかり。それよりもせっかく昼ご飯を準備して行ってくれたのに食べれなく……」

「そんにゃのいいにゃ! にゃっ、今から消化のいいものでも作るにゃあっ」

「あ、じゃあオレその昼ご飯温め直して食べてってもいい? さすがにお腹空いた~」

「す、すまない、ノアールもわたしのせいで……」

「もういいって! ご飯食べようよ、みんなで。ラピスちゃん、オレそこそこ料理できるけど何か手伝う?」

「じゃあお願いするにゃあ」

「わたしは着替えたらそっちの部屋に行くよ」

「はーい」

「にゃっ」


 何を作るか軽く話し合いながら、寝室から出て行くノアールとラピスの後ろ姿を眺め、マイはふと微笑んだ。


 そうして思う――この穏やかな情景に。


(……わたしは、いつまでここに居られるのだろうな)


 そんなことを。

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