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元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜  作者: 野菜ばたけ
第四章:スキル相談室に仕事が来ました

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第44話 スキル相談室への久々の依頼



 とりあえず幾つかの服を手に取って見てみたが、うまく選べる気がしない。


 どうせなら似合うものを買ってやりたいが、そもそも似合う似合わないは何を基準に推し量るのか。

 散々眉間に皺を寄せて唸った俺は、ギルドで貰った助言を思い出した。



 店員さんに相談し、色や形を見て選ぶ。

 普段使いの二着分もどうにか選び終えた頃には、何だかゲッソリと疲れてしまった。


 しかしまぁ。


「んふふっ」

「め~♪」


 店員さんから服が入った袋を受け取ったエレンも、その隣のメェ君も、上機嫌なのでよしとする。


「麦わら帽子は本当によかったのか? あんな間に合わせで突貫工事の代物ではなくて、もっとちゃんとしたやつが売っているのに」


 買おうとしたら「要らない」と言われた帽子について言及すると、「エレン、スレイとおそろいの帽子がいいもん!」という言葉が返ってきた。


「でもあれ、大人用のに穴を空けてリボンで顎紐付けてるやつだぞ?」


 間違っても、あまり見栄えがいいものではない。

 苦笑交じりに言った俺に、エレンはぷくぅーっと頬を膨らませる。


「エレン、スレイとおそろいがいいの!」

「そ、そうか」

「そうなの!」

「ぷぅ!」

「いてっ!」


 エレンの勢いに押されていると、ぷぅちゃんに頭突きをお見舞いされた。

 患部の顎をさすっていると、店員さんに笑われてしまう。


「仲良しなんですね」

「動物たちは、本当にこの子の事が好きで」

「貴方も含めての話ですよ」

「え」


 今のどこを見て、そう思ったのだろうか。

 少なくともこの子ペンギンと俺は、仲がいいようには見えまい。


 そんなふうに思っていると、彼女が「あの」と口を開いた。


「間違っていたら、すみません。もしかして元王都暮らしの冒険者スレイさんではないですか?」

「え、はいそうですが」


 俺、名乗ったっけ?

 いや、名前はエレンが呼んでいたのを聞いたのか。

 でもじゃあ『元王都暮らし』と『冒険者』というのはどこで?


 そんな俺の疑問に答えたのは、彼女の次の一言だった。


「冒険者ギルドのドラドさんから、先日『女の子と一緒に麦わら帽子を被ってギルドに来る、元王城お抱えのスキル研究家の人』のお話を聞いて」

「え……あー、もしかしてドラドが昨日言いに来た?」


 俺の問いに、彼女は頷く。


「スキル相談室に、お仕事のお話をしたいのですが」


 相談室への依頼は、半年ぶりだ。

 




 昨日、ドラドがうちに来た理由。

 彼がこの地を出る前に俺に話しておきたかった事というのが、「もしかしたら『スキル相談室』に依頼が来るかもしれないぞ」だった。


 彼曰く、大切な物が家からなくなり、それが少々特殊なものだったので、ドラドに相談が来たのだと。

 そしてドラドは俺を紹介したのだと。


 紹介したところ、相談するかを少し悩んでいる様子だったから、いつ実際に相談が来るかは分からないが、もし決心してギルドに話しに来たら、受付経由でその話が行くようにしておくからと、ドラドは言って帰っていった。


 その依頼主(仮)が、今正に依頼主(正式)となって目の前にいる。



「その、あまり周りには言えない話で。ドラドさんは元々父と仲が良くて知っていたから相談したら、貴方に頼るのがいいって教えてくれたんです」


 店の二階に通された俺は、ある部屋を前にその人――イーレさんの声を聞いた。



 室内には、色々な品物が置かれている。

 どれも、服屋の売り物にはならない木工品。

 それを見てエレンが「わーっ!」と目を輝かせたので、すかさず「人の部屋の物を勝手に触るなよ」と釘をさしておく。


 普通の人がパッと見たところで、おそらくガラクタにしか見えない物の数々。

 しかし俺には。


「どれも魔道具ですね、それも古い」

「流石、ドラドさんが紹介してくれただけありますね」


 そう、すべて魔道具だと看破できた。



 魔道具は、『魔道具師』という名のスキル持ちが作り出すものだ。

 つまり正しく、スキル研究家の領分である。


 俺も王城にいた時に、魔道具については数々の相談を受け検証をした。

 それなりに役に立てるだろう。


「それで? どの魔道具の使い方が知りたいのですか?」


 そう尋ねながら振り返る。



 想像していたのは、光を見つけたような依頼者の顔だ。

 しかし彼女から返ってきたのは、遠慮気味な目と「あ、いえ、そうではなく」という否定。


 じゃあ何を依頼したいのかと思えば、彼女は意を決したように言った。


「なくなった魔道具を探してほしいんです!」




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