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元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜  作者: 野菜ばたけ
第三章:エレンと一緒に、牧場仕事をしに行きます

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第37話 スキル『召喚士』を使いたい

 


 途中、冒険者を呼んだり、彼らの作業を遠くから眺めたりと、いつもと違う事もありはしたものの、いつも通りの時間に仕事は終わった。


「いやぁ、皆エレンが大好きみたいだねぇ。動物が素直に動いてくれたお陰で取っても助かった」


 夕方。

 リステンさんはそう言うと、俺たちに木造りの箱を「はい」と渡してきてくれる。


「二人のおかげで助かったよ! それからその羊君もね! これ、今日絞ったヤギミルクだから、持って帰って」


 箱の中には、瓶が六本。

 それぞれ牛乳が入っている。


 うちで飲む牛乳は、主にモォさんから絞っているものだが、山羊のミルクとは味わいも適した用途も違う。


「うちのミルク、エレンちゃんに美味しく食べさせてやんな!」

「これだけあれば、アレが作れますね」

「あれって、なに?」


 隣でエレンが首をかしげる。

 そんな彼女に、俺はニヤリと笑って言った。


「プリンを作る。美味しいぞ?」





 プリンを作るのは、意外と簡単だ。


 卵にミルクを加えて混ぜ、器に入れて蒸せばいいだけ。

 完成品にお好みで上からはちみつを加える事で、甘みを調整して食べる。


 牛乳よりも柔らかく、さっぱりとした味のプリンになるのが特徴だ。

 源次郎が生む毎日の卵は朝ご飯になって消えるので、帰りに卵を買って帰った。

 いつも通りの帰宅後ルーティーンを経て、早速晩飯と並行作業でプリンを作る事にした……のだが。


「やりたいのか?」

「うん!」


 隣に寄ってきたエレンが興味津々な目でウズウズしていたので聞いてみたところ、返ってきたのはもちろん嬉しそうな即答だった。


「まーぜまぜ」

「めーぇめぇ」


 両手でスプーンを持って混ぜるエレンと、その隣でエレンに調子を合わせているメェ君を、俺も器をしっかりと固定しながら見守る。


 混ぜ終わったら、今度は俺の指示通りに器に液体を流し込み、ここからは俺に交代だ。

 一人二回分。

 動物たちにもおすそ分けするので、人間用に小さい容器を四つ分と、大きい容器に一つ作る。



 器を竹で作った蒸し器に入れて、火にかける。

 後は時間が経つまで放置。


 その間に、いつもの晩御飯づくりをする。


「ねぇスレイ」


 自分の作業――サラダの千切って盛り付けを既に終えたエレンが、火にかけた蒸し器をすぐ近くでジーッと見ながら俺の名を呼んだ。

 隣には、メェ君も行儀よく座っている。

 俺は作っている野菜入りスープをゆっくりかき混ぜる手を止めず、「んー?」と返事をし先を促した。

 

「あのね。エレン、メェ君のお友だちをよびたいの」


 『作る』ではなく、『呼びたい』。

 その言い方を聞いた俺は、すぐさまそれが「召喚士のスキルでもう一匹動物を呼び出したい」という意味だと悟る。


「んー……。一緒にいるの、一匹だけじゃあエレンが寂しいのか? それともメェ君がそう望んでいるのか?」

「スレイは、はんたい?」

「いや、そんな事はない」


 家は広い。

 一頭くらい増えたところで別に困りはしないだろうし、養う金も問題ない。


 俺が気にしたのはあくまでも、召喚がどちらの希望なのかという事だ。


「新しい場所に飛び込んだ時、大歓迎された方が嬉しくないか?」

「うれしい! ジェームスさんもリステンさんもやさしくて、エレンうれしかった!」

「だろ? うちの動物たちは別にいいけど、同じエレンの召喚動物のメェ君には、大歓迎されてほしいなと思って」


 ついでに言うと、何故急に今日召喚したいという話をしてきたのかも、若干気になっている。


 この一週間、まったく言ってこなかった事だ。

 まぁここにも慣れてきたから、そろそろ前々からやりたかった事を……と思った可能性も、大いにあるけど。


「よびたいのは、エレン。でもメェ君も『たのしみ』って言ってるよ?」

「そうか。……エレン、ちょっとメェ君を借りてもいいか?」

「? いいよ」


 小首を傾げながらも許可をくれたので、エレンの隣にいるメェ君に「ちょっとおいで」と促した。


 火を消してから、台所を出る。

 リビングを抜けて庭に続く縁側に腰を下ろすと、その隣にメェ君も座ってくれた。


「ちゃんと聞いておきたい。メェ君は本当に、エレンの召喚動物が増える事に納得しているのかを」

「めぇ?」

「召喚士が複数の召喚動物を持つというのは、意外とシビアな話なんだよ。召喚動物同士が仲良くできずにトラブルになる場合がたまにあるから」


 メェ君は、エレンの事が大好きだ。

 だから単に同居動物が増えるというだけなら未だしも、自分とまったく同じ境遇、つまり同じ『エレンの召喚動物』という条件の動物相手に、仲良くなる事ができそうかは半々だと思った。


 あくまでも俺の印象だ。

 しかし実際に召喚動物同士のいざこざが起きる可能性がある以上、きちんと話をしておくのは必要な事だと思った。


 だから呼び出した。

 エレンが一番のメェ君だからこそ、エレンの前でエレンの希望に否が言えない可能性もあると思って。


「呼び出した後にもし折り合いがつかなかったら、最悪の場合、召喚解除をすれば動物は消える。しかし、どこかに送り返されるのか、はたまた消滅するのかはまだ解明されていない」


 難しい話だ。

 少なくともエレンには、今の話の半分も理解できないような小難しい言葉を使っている自覚がある。


 しかし、これも俺の印象だが、メェ君はエレン以上におそらく大人の会話を理解している。

 振る舞いからそう感じる。




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