第21話
昨日は酷い目にあったけど、あの後刀をくれたお姉さんにお礼を言い、ついでにドワーフと縁があればこれのもう少し小ぶりなやつも作って欲しいと頼んでみた。
「それなら直接行って頼んでみてもいいんじゃない?神竜様もいることだし。」
「それってどういうこと?」
「あら知らないの?ドワーフの住処はドラゴンの岩山の地中だよ。」
「うむ!ドワーフは火酒とかいう酒をくれるのじゃ。妾達は剥がれた鱗や欠けた爪をくれてやるのじゃ。」
「なるほどね。」
帰りは神竜様とドワーフの住処経由でってのもアリかもしれないな。
……………………
「えー、本日はお集り頂きありがとうございます。今回の燃えにくい蔦の件を受けて、今後のためにもエルフさん達にも高温の炎を作れるようになってもらいたいということで講習会を開きたいと思います。」
そんなわけで声掛けして集まったのが若手30人。というかもうエルフの年齢はどうなってるのかわからないので見た目で判断すると、小学生から高校生くらいまでの30人ですね。この中の何人ができるようになるかな?
「魔法はイメージが大事なので、早速僕が出してみようと思います。」
そう言って直径30センチくらいの蒼炎を5メートルくらい上に出して浮かせる。これは調整なしの熱々のやつだから1万度超えてるかもしれない。
「それではまず皆さんにやってもらう前に、火の温度を上げるにはどうするんでしたっけ、太陽クン。」
「はい、酸素を効率よく送り込む必要があると思います。」
「そうですね。それと?」
「え?それと?」
「はい!その隣のハッとした顔の瑠奈クン、わかりますか?」
「えっと、燃えやすい燃料にするとよいんじゃないかなって。」
「よろしい。ではわかりますね皆さん。炎を作る時に込める魔力を、それ自体を燃えやすい性質の魔力にして込める。そして酸素がうまく供給されないと火は燃え上がらない。そのことをふまえてやってみてください。」
「はい!先生!酸素ってなんですか?」
「うん、ララノアクン、良い挙手ですね。酸素とはまぁ、生き物が呼吸をする時に吸い込んでるものです。例えば、ここに土魔法で密封された透明な箱を用意します。その中に蠟燭を火を点けて入れます。はい、どうなるか見ててください。」
「消えたのじゃ!」
「そういうことです。ではこの両側に穴を開けて空気が通るようにすると…」
「火が消えないのじゃ!」
「そうです。この空気の中に火が燃えるための酸素が存在しているのです。」
「ということは妾の炎も酸素を意識すれば?」
と言って上を向いて空気を吸い込む神竜様…ハッ!
「やめろやめろ!どこでブレス吐く気だよ!」
慌てて駆けて行って口を塞ぐ。
「むぐ!むぐぐ!そうじゃった、ここでやったら怒られるのじゃ。」
「できましたよカイト!見て下さい!」
おお!姫様やるなぁ…なるほど、酸素供給を精霊のリリィに手伝ってもらってるのか。
「リリィとの協力技とは考えましたね。でも蔦を燃やすには十分でしょう、合格です。」
「やりましたね、リリィ!」
「カイトさん、僕たちもできました!」
「うん。君達は簡単にできそうだと思ってたけどやっぱりできたね、合格です。」
「「ありがとうございます。」」
「あとはその蒼炎をイメージするだけで簡単に出せるように練習してね。」
「わかりました!」
ララノアは「酸素…酸素…」とぶつぶつ言いながら口をパクパクしている。神竜様はブレスしかやる気が無いのか姫様にもらったオヤツを食べておとなしくしている。さて子供達は…お、黄色っぽくなってる子が何人かいるな。がんばれ。
……………………
結局あの講習会では異世界人2人と姫様しか蒼炎にまで達しなかった。黄色まで到達した子はいたので、練習してればそのうちできるようになるでしょう。ララノアさんは蒼炎の玉は出せなかったけど、得意の弓で「蒼炎の矢!」とか叫んだらホントに矢に蒼炎が付与されてておったまげたなぁ。どうなってるのあの人?あれで蔦を狙い打てるなら十分合格だよね。
「というわけで。」
「え、カイトさんそんなラノベ主人公みたいなことするんですか。」
「いや、ごめんごめん。二人と話しておきたいことがあってね。」
「なんですか?」
「うん。二人のクラス?は魔法使いだったんだよね?」
「はい、そうです。それで最下級職だって言われて――」
「それたぶん嘘だよ。」
「え?」
「この世界では僕らやエルフ達、フェンリル達のような魔法の使い方は一般的ではないんだ。よくある詠唱して術式を構築して一つづつ放つという感じで、火系統なら火の魔術師と呼ばれるんだ。」
「は!?そうです!魔術師のクラスに選ばれた人達は上級職ですとか言われて調子にのってました!」
「やっぱりね。こうやって魔法使ってみたらどっちが強くてやっかいかわかるよね?」
「はい!イメージ次第でいろんな魔法使えるのは強みですよね!」
「そういうこと。魔法使いは何やらかすかわからないから成長する前に死ぬ確率が高い場所に追放したんだろうね。ましてや異世界人ならなおさらだ。」
「なるほど。じゃあ僕達は最高のクラスをもらえたということですか?」
「それについては、他にすごい勇者とか聖女とかあれば別だけど、魔法使いの可能性は無限だと思っているよ。ただし、魔力量がよく成長した幼少期にこっちにいたわけじゃないから、そこはちょっと燃費のいい魔法開発するとかで補ったほうがいいかな。」
「すごい!カイトさんありがとうございます!最下級とか言われて不安しかなかったけど、これからの努力次第でこの世界でも生きていける気がしてきました!」
「うんうん、よかったね。あと、さっき姫様と神竜様にもあげてきたんだけど、コレあげるよ。」
「これは、石鹸?」
「え?見せて!うわぁいいにおい…。こっちじゃ水浴びして拭くだけだったから石鹸欲しかったんですよ。」
「そうだと思ったよ。でもここで使うのは泉汚しそうだし我慢しようね。城に戻ったらお風呂あるからさ。」
「「お風呂……」」
あら、お風呂と言ってまた泣き出しちゃったね。わかるよ、日本人なら入りたいよね、お風呂。フェンリル様の元じゃ濡れタオルで拭くことすらもできなかっただろうなぁ…。
「カイトさまー!」
リン?どうしてここに?というか一緒に走ってる銀髪の美女は誰…そのすごい魔力は…銀髪?
「ウルリック様がお亡くなりになりました、至急城にお戻り下さい!」
第2章 戦の兆し 完




