第16話
カレーライスを食べた後、黒髪に変身してミース商会に魔道具を置いてきた。そしてそのままエルフの里へ向かおうとしたらリンが「カイト様のこここ、子種を守らないといけないので同行します。」なんて、真っ赤になった無表情で言ってきた。でも城が手薄で心配なので、そんなことには絶対にならないからと説得して城に戻ってもらった。ごめんね、今お城に戦える人少ないんだ。まだまだ子供な妹を守ってやって欲しい。
「カレーライスは刺激的な味でしたねぇ、カイト!ハッハッ…」
「うん、初めて食べるとちょっとビックリするかもですね。」
「というかキミ、ずるくないですか?ハァフゥ…」
「いえいえ、こんな原生林の道なき道をその速度で走れるエルフさんのほうがずるいと思います。」
「いやいやいやいや!だってキミ、空飛んでるじゃん!精霊も興味津々なのかいっぱい纏わりついてキラキラしてるし!なんでエルフの私より精霊に好かれてるの!ハァハァ…」
森に入って「いくわよ!」と言い出して走り出したララノアさんが早すぎて早々に諦めて空を飛んだ。草が足にまとわりついてきて走り辛いんだよね。
「落ち着いてください。ドラゴンが飛べるのに、僕らが飛べないわけがないじゃないですか、やだなぁ。」
「飛んでる人なんて見たことも聞いたこともないんだけど…。ゼェハァ…」
「しょうがないなぁ。婚約者のいる身で女の人と手を繋ぐわけにはいかないから…ここでいいかな。」
「うわぁ、これは楽ちん…だけどなんか不満しかない…。」
「あれ?首根っこ捕まえて運んでも丸くならないんですね?」
「なりません!私は獣人達とは違います!というかお姫様抱っこに変更を所望する!」
「もう、騒がしい人だなぁ。」
「勇者様はよくやってくーれーたー!」
「お、あれは…」
そんな感じで騒がしい道中を進んでいると、薬草らしきものを摘んでる狼獣人の少女を発見。
「やぁ!きみはこの間の薬草握りしめてた女の子だよね?」
「……フェンリル様に気に入られてたニンゲンの姿をしたバケモノ。」
「ちょっと待とうか!なんかそれだとホントにバケモノみたいだからせめてバケモノみたいなニンゲンにしてよ!」
「……しょうがない。この薬草を集めてきたらニンゲンであることを許してあげる。」
「わかった!よし、ララノアも手伝って!」
「はーい」
そうして薬草集めに精を出す3人。獣人の子は指定したのとは違うのを集めてるようである。なんか前回も魔物に追われながらも薬草しっかり握りしめてたしなんかわけありなのかな?
「どうしていつも薬草集めてるの?」
「お父さんが足を怪我しちゃって治らないの…。」
「それって毒かなんか?」
「うん。ちょうどその足元のトゲのある花。」
「これかぁ。触っても大丈夫?」
「手で触ったら手が腐り落ちるよ。」
「うわぁ!危なかった。」
「カイトそんなことも知らないのかー!森で生きるには常識だぞー?」
「知らなかった。ララノアさんも知ってるってことはエルフには治療する方法ある?」
「ないんだよね。もう腐る前に切り落とすしかない。」
「え、ってことは」
「ありがとう。もう薬草は十分集まった。これからはバケモノのニンゲンって呼んであげる。」
「ありがとう…なのかな…。俺はカイト。」
「……私はフィーネ。」
「私はララノアよ!」
「よし、じゃあフィーネの家に案内して!」
こっそりさっきのトゲのある花で実験してみた。これならたぶんいけそう。
……………………
「ただいま。」
「おかえり、ねね。」
「弟いたんだ。お邪魔しますね。」
「弟クンかわいいね~。」
「ララノアさん、ちょっと弟君と遊んであげて。」
「はーい。」
「じゃ、フィーネさんお父さんの怪我見せて?」
「こっち。」
奥の部屋に案内してくれた。
「なるほど。これは…。」
フィーネのお父さんの怪我見せてもらったんだけど、これはヤバイ。確かに切断したほうがいいのかもしれない。
「薬草に麻痺の毒を混ぜた物でなんとか痛みと進行を抑えてるけど…。」
「ちょっと試したい魔法があるんだけどいいかな?」
「さっきこっそりやってた蒼い炎?……いいよ。もう限界だしいっそ燃やして消毒――」
「大丈夫!燃えないから……ほら」
アリシアのとこに置いてきた蒼い炎を出す。
「ほんとだ。熱くない。」
「じゃあやってみるね。」
イメージする。周囲を燃やさない炎が作れるなら、望むものだけを燃やす炎も作れるはずだ。虫刺されのように腫れ上がってそれが腐ってくるようなので、燃やすのは毒と毒によって腐ってきてる皮膚。どこまで入り込んでるかわからないけど、ゆっくり様子見ながら蒸発させていこう。さっきトゲのある花に試した時毒素だけ燃やせたようだしね。
「……腐ってる部分が消えていってる…。」
外側は問題ないね。中心地はちょっと深いけど、これなら…。
「よし、あとはポーションかけてっと。これでどうかな?」
「すごい、キレイになった。ちょっとお父さん起きて!」
あっ、そんなにバシバシ叩かなくても。
「んあ?どうしたフィーネ?うぐ、足がいた――くない?」
「見て、お父さん!足まだ痛む?」
「いや、痛くない。ずっと針で刺されてるような痛みがあったんだが…。」
「成功したかな?とりあえず暫く様子見て、何かあればフレアソードのお城に連絡くれれば飛んでくるよ。」
「ありがとう。カイト。」
「どういたしまして。やっとバケモノが消えたね。」
「カイトさんっていうのか。本当にありがとう。これで子供達にまた遠慮せず肉を食わせてやれる!」
「今度はあの毒の花には気を付けてくださいね。」
きっと今まではフィーネが里の人からわけてもらったりして食いつないでいたんだろうね。うん、直せてよかったな。
『すぐ来ると思って毛づくろいして待ってたのに、いつになったら来るんだ!』
あ、やば、フェンリル様がお怒りだ。
「え、カイトさんを番いにしたい?ニンゲンだぞ?いいのか?」
「カイトの子ならきっとこの里の誰よりも強くなる。」
あれ?あっちでもなんか妙な話になってるな。よし、退散だ!
「あー、フェンリル様が早く来いって怒ってるんで行きますね、あと俺の番いはもう決まってるからごめんね!じゃあね!」
「あ、カイト待って――」
「え?カイト?」
逃げるようにフィーネの家から飛び出して行くカイトだった。




