第14話
「学園に行ってると思ってるはずだから油断して朝散歩とかしてないかな?」
それから30分後、器用にトボトボと走っているカイトの姿があった。普段は15分程度のランニングに留めているのに、だいぶ粘ったようである。そうして城の城門に近づいてきた所でなにやら騒がしい気配がした。
「ですから、そんな大きな魔狼を4体も連れてここを通すわけにはいきません!」
うん?魔狼?と顔を上げたら、こちらに向かってくる見慣れた毛並みの狼が見えた。
「だーかーらー!依頼された魔道具を持ってきたんですってば!ってあなたたちどこいくの?」
お!魔道具できたんだ?じゃああの人はエルフなのかな?
「「「「ワウッ!」」」」
「うん、おまえ達久しぶり!元気だったかぁ?」
またもみくちゃにされた。そのブンブン振ってる尻尾、俺に当たるとバンバンいうようになったんだけど?前はファサ~ファサ~だったよね…。
「キミは…勇者様なの?」
「ち、ちがうちがう!」
「だって――」
「さぁ行きましょう!お話は中で伺います!騎士さんあとは任せてください。」
この人も見えてるものが違うのか油断ならないな。
「カイト様…城内にはもうほとんどアレなので、お気をつけください。」
うん、騎士達もいないからね、魔狼から目を離すなということかな?
「うん、ありがとう。」
「カイト様……まさか今日から早速らんにんぐにでかけるとは。」
リンがやってきて悔しそうな無表情をしているよ。
「リン、ちょうどよかった。応接室使えるかな?」
「はい、大丈夫です。」
「じゃあ案内してもらって、ついでに同席してもらってもいいかな?」
「もちろんです!こちらです。」
密室に女性と二人きりはまずいからね。アリシアを嫉妬させない悲しませない、これ大事。今はもっと重要な問題があるけども…。
……………………
「こちらがフェンリル様にお使いを頼まれた魔道具です。」
場所は変わって城内の応接室。リンが手早く入れてくれた紅茶を一口つけたところでテーブルの上に差し出されたのはカセットコンロみたいな台座の上に直径30センチくらいの鍋のようなもの…というか鍋だね、が乗ったものである。
「使い方は……えーと、あれ?急いで出てきたから聞くの忘れちゃった。テヘッ」
おい!大事な所!……しょうがないので手に取って眺めてみる。ここがスライドして開くようになってるね。そして台座の側面真ん中辺りにこれみよがしに大きなボタンがあるね。うん、だいたい使い方わかったかな。
「なんとなくわかったのでいいですよ。」
「よかった。それじゃ後はキミを誘拐して帰るんだけど、その前にこの町にはショウガヤキテイショクある?」
「……生姜焼き定食はありませんね。というかなんでそんなの知ってるんです?」
なんかこの人誘拐するとか言ったぞ…。
「昔、勇者様が作ってくれたんですよー」
「え?勇者様って100年前の?」
「そうそう!たぶんそのくらい。」
ふむ。やっぱりエルフなのかな?
「え、そんな目をしてどうした――あーなるほど、これでいいかな?私はエルフのララノアよ。よろしくね。」
と言って魔道具かな?魔法かな?姿が変わってアニメなんかでよく見る金髪翠眼の長耳な美人さんになりました。
「そういえば名のってなかったですね、カイト・ランカスターです。よろしくお願いします。」
「キミ、ランカスターなんだ。だからその髪と目の色なんだね、納得。」
「なんか納得してますが…。生姜焼き定食はないですが、カレーライスならあるみたいですよ。」
「カレーライス!?勇者様が材料ないしちょっと僕じゃ作れないけど食べたいなぁって言ってたあのカレーライス!?」
「たぶんそうだと思います。」
「よし、食べに行きましょう!すぐ行きましょう!」
「えーと、僕はやることがあるので――」
「いいえだめです!食べた後そのまま縛り上げて森に連れて行くんですから!」
あれ、さっきスルーしてあげたのに本気で誘拐する気かいこの人。リンの気配が変わったぞ。
「じゃあ、ちょっと森に行って魔物を間引いてくるので待っててもらえますか?」
「待てません!勇者様が夢にまで見たカレーライスが待ってるんですよ!」
待てない人かぁ…。逆に縛り上げて置いておこうかな?
「あ、ちょっと待って!今、姫様みたいに縛り上げようとしたでしょ!やめて!」
「アハハ、ソンナコトシマセンヨヤダナー」
いつも縛られてる人なのかな?
『マモノ…オレタチ…カッテヤル』
「え?念話できるようになったの?」
『エルフノサト…キケン…タスケテアゲテ』
エルフの里が危険だって!?
『カイト…モドルマデ…マモノ…カッテオク』
「そうか…。わかったよ。」
これはエルフでは対処できない問題がありそうだな。
『ボーケンシャ…オレタチノコト…ツタエテオイテ』
「あーお前たちを襲わないようにってことだね、わかった。」
「話は決まった?すぐカレーライス行く?縛らない?キミは縛るけど。」
「うん、行ってもいいけど縛っちゃダメだよ。」
「えー、だってフェンリル様が身動き取れなくしておいてくれたほうが種を搾り取りやすいって…」
「あいつかー!!まったく!種はあげませんから!」
「カイト様?」
「いやいやちがうから!リンも変な誤解しないでね!」
そうして母上と冒険者ギルドに銀色の毛並みの狼はフェンリルなので絶対襲わないようにと通達してもらう手配をしてからカレーライスを食べに町へでかけるのだった。




