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異世界転生したけどまた幼馴染とのんびり暮らしたい  作者: 黒井あたる
第2章 戦の兆し
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第13話

「カイト、いや、王子に負けて次席だった俺を差し置いて首席を勝ち取った新入生代表様と呼んだ方がいいかな?」

「やめてください、兄上!」


 それは忖度というやつじゃ…。しかもそれ、どこからどこまでを呼ぶつもりなの?まさか王子からじゃないよね?


「冗談だ。学園始まるまでずっと屋敷に籠って手紙ばかり書いていると聞いたぞ。大丈夫か?」

「ええ、大丈夫ですよ…。」

「なんなら王都の美味しいものがある店教えるぞ?これでも1年早く来てるからな。プリンというものがあるんだぞ。」

「プリン?プリンって黄色くてプルプルしてる?」

「そうだ。美味いぞ。」

「兄上そこ教えてください!」


 アリシアとメイと母上にもおみやげに買っていこう。アリシア喜ぶだろうなぁ…。


「どうした急にニマニマして…。」

「あ、なんでもないです。」


 王都まで1カ月の長旅を経て無事にフレアソード子爵領組は全員王立学園に合格し入学を果たした。貴族の従者などもいるが、純粋な平民はうちのメンバーだけなので、中には嫌な視線を向ける貴族も居た。皆には騎士を目指すなら他の貴族に嫌われたとしてもうちで雇ってやるから遠慮せずに模擬戦で実力を見せつけてやれと言ってある。それでも揉め事に発展するならランカスターの名を出すよ?


 この国では初代国王が決めた軍を持つことが許されるのは貴族では国境防衛のある辺境伯のみというものがある。そして各町などにいる衛兵は全国統一組織の国の管轄である。うん、町の様子は衛兵から報告上がって王家に駄々洩れなんだ。ただ、駐屯費用の半額は領主側が負担ということになってるので、領主側としてはそれほど邪険にされたりもしない。


 それで唯一許されてるのが、騎士を家格に応じた人数分雇い入れて騎士団を結成すること。子爵家だと50人。辺境伯家は100人という具合。これに戦時中となると農民などからなる民兵を徴兵して騎士一人につき100人づつ付けて指揮させる。まぁうちだと5000人までいける計算になるけど、全領内の人口でも3万人いかないので無理ですよと。この世界では魔力を日常的に使用していて、魔力の扱いは一般的には女性の方が長ける。なのでよく訓練された女性とかはともかく、老人や子供を連れて行くわけにはいきませんからね。


 ちなみに貴族の家格は、

公爵=辺境伯>侯爵>伯爵>>子爵>男爵となっているよ。伯爵までは上級貴族で、他にも一代限りの準男爵とか騎士爵とかあるけど、そちらは騎士団の保有は認められていない。


「おっと、ランカスターの二人とも一緒に居たか。よかった。」

「先生、どうかしましたか?」

「二人に緊急の手紙が来ている。どうも帝国が部隊を国境に寄せてきたらしい。」

「「――!」」


……………………


「これは…とんでもなく快適だな。」

「本当に、カイト様はすごいですね。」


 学園に入学したばかりだというのに、辺境の地に兄上・リンと戻っている最中である。来る時は約20キロおきにある宿場町に宿泊してきたが、今は馬車を浮かせて宿場町を一つ飛ばしで移動している。街道も現代日本のように整っているわけではないので、普通なら一日20~40キロの移動がせいぜいだが、馬車を浮かせてしまえばあとはお馬さんがちょっと早歩きするだけなので40~60キロ走破することも可能なのである。


 そして問題の手紙の内容だが、国境が極度の緊張状態によりじいじが国境砦に向かうので、俺に帰ってきて領地防衛せよとのこと。魔物も何やら増えてるのでこちらも帝国がかんでるのかもしれないと。


 国境の状況次第だが、そのまま学園には戻れない可能性が高いが、戦時特例としていちおう休学してこいとのこと。


「辺境の地が心配なのでできるだけ急ぎましょう。なんなら馬も浮かせて飛ばしますか?」

「いや、さすがにそれはまずいだろう。ただでさえ地面をなめるように走って怪しげなのに。」

「頑張っても2週間はかかる…か。帝国ぅ…。」

「子爵領経由で先に下してやるから我慢してくれ。」

「わかりました。」


 この帝国とは我が国の東側一帯を広範囲に支配しているハイドレーン帝国であり、元々は小国だったが周辺諸国に侵略戦争をしかけ大帝国となった国である。この大陸統一でも目指しているのか今も北方諸国とうちとにちょっかいかけてきてるのである。


「しかし帝国は今回本気で攻めてくる気ですかね?」

「わからないがこちらの手紙にはかなりの部隊がきてると書いてあったな。」

「じゃあこれから戦争が始まると考えておいたほうがよさそうですね。」

「そうだな。俺達はまだ成人してないし留守番だろうけど。」


 戦争か、やはりどこの世界でも起きるんだね。


……………………


 たっぷり2週間かかってやっと我が町まで帰ってきた。もう少しで広場だ、アリシアいないかな?


「くっ、この匂いは…。」

「なんだこの恐ろしく食欲をそそる匂いは!」

「いつだったかカイト様が体につけてきた匂いに似てますね。」


 え?そんなに匂った?ていうかいつ俺の匂いかいでるの!?母上ならまぁ、ハグする時もあるしわかるけど、リンとはしてないよね?と思ったけど、俺の脱いだ服はリンが回収してるんだった。


「なにかわからないがカイト、今度食べさせてくれ。」

「わかりました。あれはカレーライスという料理の匂いですよ。」

「今日はここで泊だし食べてみたいがあの行列ではな。今は城に戻って状況確認を急ごう。」

「まぁ、人気なのでそのうち辺境伯領にも広まりますよ。」


……………………


 コンコンコン


「母上カイトです。兄上もいます。」

「はいりなさい。」

「「失礼します。」」

「カイトお帰りなさい。ギルも無事で何よりだわ。ずいぶん早くて驚いたわ。」

「あ、実は馬車を少し浮かせて2週間の行程に短縮してきたので、なにか問い合わせがあったらとぼけておいてください。」

「……なるほど、そういうことね。わかったわ。それにしてもよくこちらを優先してくれたわね、良い判断だったわよ。」


 そうして今の状況を話してくれた。国境に対峙する敵は2万でこちらは1万。あちらから仕掛けてくるも父上の采配で巧みに撃退している。また、帝国領のほうから魔の森へ入って暴れまわっている連中がいるらしく、それから逃げた魔物がこっちに流れてきているんだろうとのこと。これが1週間前に入った情報。


 こちらが随分少なく見えるけど、砦に守備隊5000残し、万が一のため辺境伯領都にも5000残している。各地で更に徴兵する事態になれば、この領都組が吸収して戦場に向かうことになっている。


 じいじ、もう50歳過ぎたのに大丈夫かな…。


「冒険者達も頑張ってくれてるけど、カイトにも魔物の間引きにまわってほしいの。」

「わかりました。」

「ギルは明日朝一で出立して、うちの騎士も15人連れて行って向こうでじいじの所に合流させてあげて。そして城でソフィアを守るのよ?こういう時こそ暗部の動きを警戒してね。」

「はい、わかりました。」

「よし。湯浴みをしたら夕食を作ってもらって食べたら休みなさい。疲れたでしょう。」


 そうして退出させられたけど、母上の執務机には書類が山盛りだった。きっと森にも出てたりしたんだよね。騎士もじいじが出立の時に20人連れて行ってるそうだから、今回の15人連れて行ったら残りは15人。最低限しか残らないし城内は母上に任せて俺は外で頑張りますか!


「せっかく帰ってきたし朝のランニングしないとなー」


 と言いながらアリシアの研究施設への道のりを思い描いているカイトだった。

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