第11話
――Sideアリシア
かーくんに手紙を渡しちゃった…。これでもう暫くはかーくんに会えない。でもさよならは言わなかった、絶対に再会してみせる!
石鹸が売れに売れてこれなら大丈夫だと思ってた。お貴族様からの注文はいつも大量だし、予約も半年先まで埋まってるしね。
でも、だめだった。お父さんが香辛料仕入れに出発する日に「ヘレナ様のご令息とアリシアが婚約したから」なんて、ひどいことを言うんだ。ひとの婚約を勝手に決めないで!って怒ってみたけど「資金援助の条件だったんだ、許してくれ」と言われては強く言えなかった。私が石鹸作りマシーンとしてどこかに売られていく可能性もちょっとは考えたけど、これじゃ似たようなものじゃない…。
やっぱりお貴族様は無条件で援助してくれるほど優しい存在じゃなかったんだ。リーネフ国最強と言われてて、学園時代からアイドルかなんかのように沢山の人に慕われてて、そんなヘレナ様に私も憧れてたんだけどな…。
お相手はカイト様っていうらしい。前世の海斗と同じカイトだからまた困る。妹のメイ様みたいに町に出てくることはほとんどなく、魔物の森で戦ってるらしい。金髪碧眼の超絶イケメンだとか?その瞳に見つめられたら目が離せなくなるとか?うん、目を合わせないようにしよう。万が一目を奪われたりしたらかーくんに申し訳ない。
悩んだ末に私は商売などで使う契約魔法であることを思いついてヘレナ様に直談判にいった。
……………………
「ヘレナ様、私には大切な幼馴染がいます」
「そのようね」
「私は将来彼と結婚したいと思っています。そしてそれが叶わないなら駆け落ちも考えています」
ヘレナ様の目が一瞬細まった…。こわい。
「ふぅん、それで?」
「私が幼馴染の彼以外とのせ…性交渉の禁止を契約魔法で契約しました!」
「ふむ。うちに嫁いでも白い結婚で離婚を目指すというわけね、なるほど」
「はい、資金援助して頂いたのに申し訳ありません。援助して頂いたお金は、その婚約期間中に必ず返しますので、もしカイト様に傷がつくのが嫌でしたら婚約破棄でも――」
「――白い結婚ねぇ…。ふふっ、いいわよ。(できるものならね)」
なんか最後に小声で何か言ってたけど聞き取れなかった。でもいいの?嘘でしょ?
「とりあえず話はわかったわ。私もあなたが気に入ったわ。是非ともうちの嫁に欲しいわね」
「それは…ありがとうございます?」
なんかあっさり許されて拍子抜けしちゃった。そんなに息子のカイト様に自信あるのかな?私はそんな簡単に落ちる女じゃないよ?
「とにかく今は石鹸作り頑張ってちょうだいね。今供給を止めたら全国のご婦人方が暴動を起こすわよ」
「はい。これからずっと生産施設に籠って作業するつもりです」
「そう。何かあったらいつでも来なさい。カイトにも会わせたいし、あなたなら歓迎するわよ」
「はい…、その時はよろしくお願いします」
……………………
うーん。今考えてもどうして許されたのかわからない。貴族なら後継者問題とかあるんじゃないのかな?16歳の成人とともに結婚するみたいだから、3年で離婚しても19歳…。まだなんとかなる?
「とりあえず石鹸作り頑張らないとだね」
奥の研究室を私の部屋にしてベッドも運んでもらおう。そして敷地いっぱいに結界を張ってそこで3年間過ごす。許可した人だけ通れるようにしたらいいよね。カイト様にはもちろん会いたくないし、お貴族様と婚約してるから迷惑かかったら困るからかーくんにも会うわけにいかないし。
「でも、かーくんに会えないの寂しいな…。寂しいよかーくん」
……………………
――Sideカイト
アリシアの手紙を読んだ。
・資金援助の条件としてヘレナ様のご令息と婚約させられた…俺だよ?
・白い結婚で離婚を目指す…嫌だよ?
・どうしよう…誤解とけ?
うん、どうしよう。あの時咄嗟にカールなんて言わなければよかったかな…。
「母上!どうして勝手に婚約なんて――」
「あら、好きあってるならいいでしょう?」
「うっ…そうだけど、そうじゃなくて彼女誤解しちゃってるみたいだし」
「あの子幼馴染の彼以外との性交渉の禁止を魔法契約したなんて言いに来たのよ。度胸あるわよね」
「ぇ…」
「それに、髪と目の色を変えてただけだし顔合わせたらすぐばれるわよ。メイもリンもすぐわかったでしょ?」
「それはまぁ、そうだけど」
「じゃあ問題ないわね。私も気に入っちゃったし、あの子は是非ともうちに欲しいわ。カイト、逃がさないでちゃんと捕まえておきなさいよ」
「はい……」
あぁ…。よく考えたら悪いのは身分を隠してた俺だけだった。よし、謝りに行こう!
……………………
「アリシアと話がしたいんだけど」
「あの、失礼ですがどちら様でしょうか」
「えーと、子爵家のカイトといいます」
「あ、お嬢様の…これは失礼しました。ですがお嬢様はこちらにはおられません。研究室のほうにいらっしゃいます」
「そうですか!ありがとう、行ってみます」
ううむ。次期当主として貴族らしく振舞うようにって言われてるけど難しいな。どうしても敬語使っちゃうわ…っと、これは結界か?まずいな…。誰か来るまで待つしかないか。
と、馬車も通れるちょっと大き目な庭門の前で座り込むカイトだった。




