第10話
「校長先生にうまく交渉できたよ。ついでに資金援助もしてくれるって。だから今日、あーちゃんのお父さんに領主様のお城で詳細をつめてほしいんだ。訪ねるのはヘレナ様ね。」
「ホント!?かーくんすごい!ありがとう!早速お父さんに伝えてくるね!」
と言ってダッシュでお店に戻っていくアリシア。久しぶりに明るい顔になっていた。
「おまたせ。かーくんホントにありがとね」
「俺はお願いしただけだよ。すごいのはヘレナ様にそこまでさせたあーちゃんの石鹸だよ」
「それでもだよ。平民がお貴族様に交渉なんて考えられないもん」
「それはあるかもね。ところでさ、あの家買わない?」
「え、あの家?なんで?」
「学校の敷地に隣接していてあれも領主様のとこの持ち家らしいんだよね。それであそこを改築して新商品の生産施設兼開発研究室にいいんじゃないかなって。敷地広いし馬車がそのまま入れる倉庫も建てれるかなって。」
「なるほど。でもそんなに大がかりにしても魔力込められるの私しかいないよ?」
「そこなんだよね…。あーちゃんの魔力を蓄えておいて使用できる魔道具なんてあればいいね」
「それは難しいね。魔道具を作ってるのはエルフらしいんだけど、どこにいるのか謎なのよね。生存してるのかどうかも…。」
「エルフか…。うーん。」
フェンリル様にお願いしたらなんとかなりそうな気がする。今度こっそり行ってみようかな?
「とにかく、当面の間は頑張るしかないんだね!」
「そうだね。ヘレナ様曰くソフィアに渡したら王家にも伝わって国内全土どころか隣国まですぐに広まるわよって。」
「ソフィア様って辺境伯様の…、どどどどうしよう?」
「うん、がんばろう!疲れたらマッサージしてあげるからさ」
「まだマッサージがいるような歳じゃないんだけど…。まいっか!とりあえず我が家をたてなおすために石鹸量産がんばるぞー!」
「おー!」
……………………
商会の従業員から信用できる人を2人助手につけて、アリシアが学校から帰る頃に合わせて素材の調達や段取りしておいてもらって学校終わり次第作りまくるという日々を過ごしてついに卒業式の日を迎えました。石鹸の売り上げは好調です。
アリシアパパも前回の契約済みの分の香辛料を引き取りに向かいました。今回は母上にお願いして王都の選りすぐりの冒険者を2パーティ用意してもらいました。我が領内からもベテラン冒険者連れて行ってて「またきたら返り討ちにしてやる!」と息巻いていたそうな。そして次からの香辛料を仕入れるところを探してくるそうな。
そんなわけで色々と順調にいって安心してたんだけど、アリシアパパが出発した日からアリシアの様子がまたおかしい…。なんかあったの?って聞いても大丈夫としか言わないし、ホントにどうしたんだろ?
「かーくんと一緒に過ごせた学校楽しかったね!絶対に忘れないから!」
あれ?微妙にふっきれた顔してる?
「俺も!あーちゃんがいたから楽しかった!」
「卒業式終わったら、他の女の子に捕まらないでね」
「うん、わかったよ」
……………………
思えばこの6年間でガリガリだった孤児院の子達も立派な体格になってきたし、家の手伝いの単純作業でガチガチになりがちな農家の子達もよい成長できたと思う。魔法に関しても全員無詠唱で魔法打てるようになったし、剣術も騎士を目指せるレベルになったと思う。王都の学園を目指す子もチラホラ。
卒業式が終わって最後の教室で、なんか熱い視線を感じてそちらを見ると、リンが無表情でじっと見てた。こっそり微笑んでみると、ちょっと嬉しそうな無表情に変わった。
さて、他の女の子に捕まったらダメなんだっけか…。そうだ、アリシアと手を繋いで脱出しよう!おっとまだ女の子達と泣きながらお話してるな。
「カール、今までありがとう。王都の学園でも会ったらよろしくな」
「こちらこそありがとうだよ。落ちることは無さそうだし、王都でまた会おうな!」
と話しかけてきたのは冒険者夫婦の子で、男子では俺の次に剣術が強いやつである。学園卒業したら子爵領に帰ってきて子爵様の騎士になるって言ってたっけ。その時はよろしくね。
「カール!孤児院出身の俺達はこの町で冒険者になるから、帰ってきたら酒でもおごってやるぜ」
「うん、楽しみにしとく。強い魔物にあったら逃げるんだよ?」
「わかったよ。ところで孤児院の2.3年生の子達がカールと結婚したいって騒いでるけどどうする?」
「いやいや、それは困る。俺にはあーちゃんがいるし」
「だよなぁ、カールは諦めろって言っておくよ」
「よろしく頼む」
こいつは孤児院出身メンバーの中では頼れる兄貴分みたいな感じで、強敵と出くわしたとき無茶しなきゃいいけど…。
「かーくん、ちゃんと女の子に捕まってなかったね、えらいえらい」
「そんな捕まるわけないじゃん」
「んー…。だってほら」
と言って出口に視線を向けるアリシア。そこには5年生の女の子達がうるんだ瞳をカールに向けていた。
「あれってもしかして…」
「そういうことだろうね。ほら、こうして帰ろう?」
そうして、がっちり左腕に抱き着いたアリシアに護衛されて無事に校舎から抜け出すのだった。そして……
「あー、これでもう学校にくることないね。楽しかったなぁ」
なんて言ってみたけど、アリシアは真剣な顔で
「かーくん、ごめんね。絶対かーくんのとこにお嫁にいくから待っててね。なんとかするから」
そんなことを言いながら、唇に触れるだけのキスをされた。
「やっとファーストキスあげれたね。長かったよ。これ、読んでね」
ぼーっとしてる間に手紙を渡して走り去っていったんだ。




