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ガーゼ


その翌々日、歌唱発表会が開かれた。寄付、ボランティア募集の意味もあり、教会で定期的に開かれるものだ。




 教会の庭にひな壇を設置、人々がそれを見に来る。午前中のスケジュールを終えて、あとは午後12時半~2時半まで、いろいろなだしものを披露して、最後にまた一曲おえようとしていた2時15分ごろにそれは起こった。




 プラグは、最前列でうたっていたが、背中に何か妙な感触があった、木でつつかれたような、やがてそれが人の指だとわかると、一定のリズムで、歌にあわせるように小突かれていることに気づいた。


(チッ)


ちょっかいをかけているのは、斜め後ろで歌っているペペロだろう、よほど先日の件が腹に立ったと思える。


(おい、弱虫、雑魚、音程ずれてるぞ)


 とそれに続いて


(クスクス)


 と笑い声が聞こえる。


「~~♪」


 それでもプラグは歌い続けた、前をみるとマルグリッドが微笑んでいる。それだけでよかった。


「おい、マルグリッドにいたずらをしてやろうか」


《キッ》


 と睨め付けるプラグ、それでもごまかす、マルグリッドが不安そうにこちらをみていた。汗を流しながら、少しマルグリッドの事が不安になったプラグは思わずつぶやいた。


「俺本人じゃなくて、周りの人間に八つ当たりしかできないなんて、よほど俺と戦う事が怖い臆病ものに見える」


 すると、今度はクスクスという笑い声は、ペペロにむいた。ペペロは赤くなった。拳を握り締め、こちらをにらめつけるように指揮をしているアイリーンをにらめつける。異変に気付くアイリーン、だがその時にはすでに遅かった。ペペロは顔を真っ赤にして、息をする事もわすれ、こぶしを振り上げたと同時に振り下ろし、プラグの頭をぶん殴った。


「貴様ああ!!!!」


「……ッッ」


 騒然となる会場。逃げ出す人々もいた。それでもプラグは、体をかばうだけで、腕で打撃を防御し続けながら、マルグリッドを見つめていた。




「えらかったわね」


 夕方、マルグリッドの部屋でプラグがプラグに包帯やガーゼで軽い応急処置をされていた。


「いてて」


 消毒液が傷口にしみた。


「別にあんたに甘えなく手も俺は大丈夫だ、もう大人になるんだから」


 そういって、プラグはその部屋をあとにした。エリサがその部屋から出てきたプラグに話しかけようとしたが、プラグは通りすぎていった。


「気にするな、俺が望んでしたことだ」




 夜、むしゃくしゃしてエリサか取り上げた人形にあたるアイリーンがいた。ぼろぼろになった人形。


「なんで子供たちは!!どうしていうことをきかないの!!なんで!!!」




 また別の場所で、罰として地下牢に閉じ込められているペペロ。アイリーンの折檻によって体のあちこちに傷があった。ふと気づくと、そこへ続くつきあたりの階段から足音がして、そこにエリサがたっていた。


「ごはん、もってきたよ、それに消毒薬と包帯」


「私にかまうな」


「誤解しないで、マルグリッドの頼みなの」


「クッ……!!」


 ごはんをたべながら、消毒と応急処置をされているペペロ。格子のすきまからで、エリサは非常にやりづらそうだった。


「なあ、なんであいつは、私をとめようとしたんだ」


「……」


 エリサは一瞬沈黙した。


「わかってる、お前の差し金だろ、それはいいんだ、あいつ自身は――」


「やっぱり、ペペロは彼の事が好きなのね」


「なっ!!!」 


 ペペロは顔を真っ赤にする。


「まあ、嫉妬ともいえるか、でもいいけどさ、彼は――この孤児院に引き取られるまでの事をしっているでしょ」


「ああ、知ってるさ、札付きの悪って感じで、何がそんなに奴を変えたんだ」


「マルグリッド……といいたいところだけど、それだけじゃないかもね、きっと彼の中に、何かあったのよ、神聖なものが」


 そういってエリサは胸元の星型のペンダントをなでる。


「彼は夢を持っているの、彼は人間のほうが“オートマタ”より信用できると思っている、それがなぜかは知らないけど、人間の楽園を作りたいと思っている」


「ばっかじゃねえか」


 ペペロは、パンをかじりながら吐き捨てた。


「本当にバカだと思うなら、こんなに彼に執着しないでしょ……」


 エリサがそういうと、ペペロは黙り込んだ。


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