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邂逅



 だがそれがすぐに錯覚なのだと気づいた。貫かれたかに思えた腹部を漁っても、特段傷などついていない。しかし、体を動かそうとすると異変に気付く、鈍くなり、緊張して、硬直してうごけなくなっていた。


 《ズサッ》


 そこへ降り立つもう一つの影。ペペロはすぐにそれがカルシュだと気づいた。


「お前……!!」


 その時、ペペロはその状況にもかかわらず耳なじみのある声がすることに気づいた。


「孤児院の皆は大丈夫だ、それより、なんでこんな夜に会おうだなんて、いや、本当に心配はいらないよ、アイリーン」


 アイリーンという言葉、それで気づいた。声の主はグイン神父だ。彼らがこの路地付近にいるのだ。右をみるとせまい港湾にコンテナが並んでいる。そうか、アイリーンと神父が出来ているという話があったが、あれは本当だったのだ。




 ぼーっとめを正面にむけると、いまプラグが腹部を貫通する一撃を食らった瞬間だった。


「!!!!……プラ……グ?」


 明らかに致命傷だ。逃げなければいけない。あるいは助けを……けれど、体が動かない。


「に……げ……ろ」


 プラグがペペロに手を伸ばす。ペペロはその血まみれの手をみて、より一層体が硬直した。


「い、いや、いや、だ!!」


 その瞬間、何が原因なのか、頭が急に動き出して体もそれに伴ってひるがえって全速力ではしりはじめた。しかし、振り返った瞬間、彼女は絶望した。


「ふひひ」


 敵は―謎のオートマタはこちらをみて、笑った。まるで三つ目のフクロウの様、水中用のスーツのようにゴーグルが三つついた目。つぎはぎがリベットで入念に締められている。こいつは、ただものじゃない。何か恐ろしい陰謀でつくられた科学兵器だ。だからこそわかった。全速力で走ろうと関係がない。しかし体は全力で走った。


「いや……だ!!!」


 それが一瞬にして自分の背後にせまり、片腕、するといつめと鱗でできたようなてをふりあげて振り下ろす瞬間、死を覚悟した。その瞬間だった。


“ズキュウウウゥウウ”


 弾丸のような音と、青い閃光、あまりに素早い自分と同じほどの体躯が、彼を突き飛ばした。


“ドオオォオオン”


 ふきとばされたオートマタは、その一撃で両腕が吹っ飛んで、民家の壁に沈み込んで、動きをためた。


“シュウゥウウ”


 その時、その突き飛ばした人間に目をやるペペロ。


「お前……青の力、アシュヴァ」


 この世界の人間は誰もが知っている。今現在差別され、あらゆる人間から敵意を向けられている“青の魔力”の使い手、それが今目の前にいる。


「誰かいるのか?……」


 そこにかけつけて、騒ぎを見たのは、先ほどまで彼らの傍でアイリーンと話をしていた、グラン神父だった。


「……」


 ペペロは暫く身動きがとれなかった。彼女はずいぶんプラグの事をかばい、その後プラグはこの夜の事を神父に見逃されるのだが、ペペロはプラグの、先ほど確かに打ち抜かれたはずの腹部が修復されているのをみて、彼に対しただならぬ不安を覚えたのだった。

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