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# 4 閑話 冒険者ギルド二階、その一室にて

2023/06/07

エルフの血石反応の内容を

~火属性の属性に

から

~エルフだけが持つマナの感覚器官に

と以上のように変更いたしました<(_ _)>



 マロニー西大陸の人間族。そこから海の如く広大な龍河に分かたれたマロニー東大陸を治めるエルフ族。そして、別の大陸から渡って来た侵略者たる獣人族との三つ巴の長き戦乱が治まり二百年と少しばかり。


 かつて、西のマロニーは大小無数に王と名乗る者共が好き勝手していた。が、長き闘争の末に悉く粛清されるか、もしくは強国の僕として吸収されていき今や西は中央・南方・北方の三国として治まり、長く戦火に苦しめられていた民にもやっと安寧の時代が訪れていた。



 その中央。南方と北方を仕切り、両国の橋渡しをも担う西大陸の粋…チャント・ナベルカ。その王国の首都からほど近い城塞都市シオ。中央では最も大きな“冒険者ギルド”が置かれ栄えている。人口も都市の住民戸籍を持つ者達だけでも1万を軽く超え、商人や冒険者。他国からの駐屯員を含めると再繁期では2万近くまで達するのではないかとの声もある。


 実際、王族…現国王オカベリオン・フォン・ナベルカ8世の居城がある王都アルジの人口でも六千と数百程度なので、シオはその倍かそれ以上の人間が集まっていることになる。



 その城塞都市の栄えある冒険者ギルドの二階部分。大陸のあらゆる情報が集まる収集機関でもあり、各ギルドマスター達が寄合を行う場ともなっている。その一室。各ギルドのギルドマスターを代表する冒険者ギルドのギルドマスターの私室に、三名の人物の姿があった。



「はぁ~…」

「溜め息を吐くのは止しな、坊や。妖精に幸せを奪われてっちまうよ」

「まあ。お気持ちは察せますがね…」


 

 そこに居たのは傷のあるスキンヘッドの大男。冒険者ギルドのギルドマスターであり、各ギルドからの生贄…いや、代表として認められた元冒険者のディッグマックスである。似合わない上等な南方由来のスーツを窮屈そうに着込んでいる。パッツパツである。


 そんな素手で熊を仕留められそうな男を坊や扱いする老婆。いや、そう呼ぶと当人は遺憾なので婦人と呼ぶが、シオの魔術師ギルドのギルドマスターであるトラティー。


 鈍く光を反射する頭に不憫な視線を向けているもう一人の男。線の細い白髪交じりの壮年の男性。だが、他の2名と比べるまでもなく品が良い。この男の名はグレミオ。シオの商会を取り纏めている商業ギルドのギルドマスターである。



 その城塞都市でも地位の高い順から数えて十指に入る三人が浮かない顔をしているのには訳があった。



「うう~む。まさか…俺達只人(ただびと)地底人(ドワーフ)との混血(・・)が実際にいたとはなぁ」

「…もう一度聞くけど、グレミオ。間違いないんだね? 単にドワーフ似の男って訳じゃあないのかい」

「ええ、検査(・・)を行った門番から確かに報告が上がってますからね。……かくいう私も未だに信じられませんが」



 今日になって突如姿を現したとある男。黒髪黒目、短く刈った髪に丸顔に見慣れない風貌の顔付き。だが、雰囲気的には何処の出身かは不明だが…この世界でいう人間、只人に近い容姿とも見受けられる。



 因みに、只人とは(ただ)(取り立てて値打ちや意味がないくらい普通の意)を文字通り指した言葉である。これはかつての対戦開始後にエルフ・ドワーフから呼ばれる呼称が定着したものだ。まあ、多くの民が内心は遺憾に感じている時期もあるにはあった。戦時は他種族からの単なる挑発や侮辱の類と思われていたことも手伝っている。


 が、聞けば納得の理由がある。先ず、自分達…只人はエルフとドワーフに比べて脆弱である。肉体的な強さであればエルフは只人同様かやや華奢であったが、最も違うのは寿命と魔力だろう。


 先ず、只人はどう頑張っても百年生きるかどうか、医学の発展なくモンスターなぞの脅威が幾らでもあるこの世界の平均寿命は五十にも満たないだろう。それと比べてドワーフの寿命は二百年から三百年程度は悠にあるし、何よりも屈強な肉体は病にも強い。エルフに至っては千年も生きるとされている。しかも不老種族故にいつまでも若々しい肉体を保っていられるのだ。


 次に魔力。この世界のありとあらゆるものに魔力という一種のエネルギーや要素などが含まれている。また、総じて生物は肉体から一切の魔力を抜かれると例外なく死に至る。つまり、生命力にも強く結びついている絶対的な存在である。しかしだ。これまた、只人は個人差はあれどドワーフ・エルフ両種族に大きく魔力で劣る。そして、魔力自体の影響にも弱い。無理に肉体に膨大な魔力を流し込むと、簡単に魔力中毒症なるものを発症してそれは惨い最期を遂げてしまうのだ。実質、戦前から目覚ましく進歩・開発が進んだ魔力を扱う技法…即ち、“魔術”であるが。それを行使するのにも未だ只人には大きな障害が残っているのだ。



 そんな種族的な差と戦時の歴史から未だ種族間には互いに根深い問題が存在している三種族だったが、戦いが終結し、只人が治めるマロニー西大陸諸国とエルフが治めるマロニー東大陸を実質統治している大国ソイソーとの間で終戦と平和条約が交わされると大手を振ってエルフとドワーフが只人の国に姿を見せるようになった。


 まあ、朱に交われば赤くなる。という言葉があるように、端的に言えば男と女が同じく存在する種族なのだから時代の経過と共に他種族間との混血が生まれた。特に有名なのがハーフエルフである。無論、只人とエルフとの混血だ。因みにだが他種族との混血はどういう理由なのか、只人を介さないと生まれない。


 ただ、ハーフエルフに関しては戦前から既に存在を確認されていたし、数もそれなりにいる。次いで獣人との混血も存在し、主種族からの混血への差別は今の時世においても根深いものがある。


 そんな中で、唯一未だ確認できていないのがドワーフとの混血であった。



 実はドワーフはかなりの堅物で信心深い上に種族的な団結が強かった。故に掟などの取り決めも厳しい。特に他種族との交流は戦後かなり規制が緩くなったが、婚姻に関してだけは頑なに認められておらず、過去に実例も存在していない。


 ドワーフという種族は個人の恥をドワーフ全体の恥と当然の様に考える為、尚更に只人との間に子を設けようとはしないのだろう。


 一説によれば、只人が好きなドワーフは変態として扱われるという見解すらあった。



 少し長くなったが、話を戻すことにする。


 そのドワーフとの混血児と思われる男が如何にしてそう判断されたのであろうか。


 実は件の男は入門時に門番から検めを受けた際に四色のそれぞれ色が異なる石を四度、顔に近づけられたり、素手で握らせられたりしていた。


 その男は一向にその行動に何の意味があるのか? と首を傾げていたのだが、それは血石と呼ばれる特殊な代物。それぞれの石が極々近距離か触れた者の微々たる魔力に反応する。それぞれが種族を只人・エルフ・ドワーフ・獣人と識別するのに用いられる。これらの石に一切反応しない者は、この4種族外のいわゆる西大陸では“亜人”と分別される雑多な種族となるわけである。



 そして、その検査の結果。男に対して石は二度小さく光って見せたのだ。


 …只人の石と――ドワーフ(・・・・)の石で。



 故に門番達は初めて確認された只人とドワーフとの混血だと大騒ぎし、速やかに男を冒険者ギルドへ引き渡したのである。



「なあ。トラの婆さん。石の誤反応だったってことは…っ」



 羊皮紙を睨んで顔を顰めていたディッグマックスが顔を上げたと同時にテーブルの上、否。正確にはディッグマックスの直ぐ顔の横で火花が散った。



「熱っ!?」

「全く…ギルドマスターになったってのに口の利き方が一向に良くならない奴だよ。次にアタシに対してデリカシーの無いことをほざいたら、そのいい感じに脂が浮いている頭に火を点けてやるからね…」



 そう言って老魔女が慌てる大男をギロリと睨みながら自身の咥えるパイプに火を入れて煙を吹かす。



「坊や。血石が何に反応するかくらいちゃんと知っておきな。只人の石は魔力の質に反応すんだ。只人は他の種族と違って無属性(・・・)って決まってんだからね。エルフのはエルフだけが持つマナの感覚器官に、獣人のは逆に魔力を一切検知できない時に反応する。アイツら魔力を外部に出力する器官(デバイス)を持ってないからね。獣人の混血は上手く手足や耳やら尻尾を隠そうとするが、それで見分けられる」



 火傷を心配して頭を摩る大男がムスッとした顔で黙ってその話を聞いている。



「でだ。ドワーフのは他種族とは明確な違いである“毒への抵抗力”。これの有無に反応する。ドワーフはやたら頑強な肉体を持ってるが真の脅威はその毒物への圧倒的な強さなんだ。毒の沼地だって保護魔術無しで平気で渡れる連中なんだ。そりゃあ長年、毒ガスやらヤバイ魔力で満ちた地下で暮らしてきただけはある。そんなドワーフの石が反応したんなら……間違いないね」

「「…………」」



 ディッグマックスとグレミオが沈黙を以ってしてトラティーの見解を肯定する。



「ですが…」



 痩身のグレミオが口を開く。その視線は取り調べ兼身分検めの書類である羊皮紙に向けられている。



「私としては複雑な気分ですな。まあ…彼が我ら只人寄り(・・・・)である事は確かでしょうな。あくまでも私見ですが、余り敵意を感じませんでした。ただ、困惑している様子も見受けられましたね。私も先程…ドワーフ文字どころか大陸共通文字を書けないと言われた時は、流石に驚きましたがね?」



 彼は文字が書けないその男の代筆を務めていた。



「……アンタ達が一番に顔を暗くしてる理由は…その名前(・・)だろう?」

「…ええ、まあ」



 グレミオがその場を何とか取り繕うと苦笑いを浮かべる。



「――それにしても…“ドワブ”、か」

「確か、古代ドワーフの言葉で“ドワーフを否定する”…という意味だったと記憶していますね」



 大男がグレミオの声を聴いて小さな唸り声を上げる。



「まあ、ドワーフは種族の団結が強い。だから、最低限の教育はどんな出来が悪くてもちゃんとやってるもんだ。…だのに、字が書けないって話を聞いてから嫌な予感がしてたんだ。恐らくアイツは中々にしんどい人生を歩んで来てるんだろうぜ。まあ、それでも俺達への態度から鑑みて、育ての親が只人だったって可能性が高いかもな」

「ですね。ですが、恐らくは名はドワーフの親が付けたのでしょう。余程、同族に対して恨みがあったのかもしれません」

「だよなあ…。だが、国法に従ってこの地に所縁無し、無一文のアイツを野に放り出す訳にはいかんし、何より俺の目覚めも良くねえしな。取り敢えずは三日はギルドで保護せにゃならん。……だから経費の捻出も兼ねて領主様には報告しなければならん。流石に王侯貴族まで話が上がるこたあねえと思うが。…気が重い」

「精々頑張んな。なんせディッグマックス…昔はやんちゃ坊主の冒険者だったアンタも、今やシオのギルド代表なんだからね。まあ、何にしろ城下のドワーフ達との接触には気を配るこった。貴重なドワーフ達を工房街から追い出す訳にもいかないからね」

「ああ」



 大男がテーブルの羊皮紙を丸めて懐に仕舞い込み、ギギっと音を立てて席から立った。



「俺は領主様の元に報告してくる。が、もう少しアイツと話してくるとしよう。歳の頃も俺と同じかさして変わらない程度に見えたしな」

「私も同席しましょう。代筆の序に、ですよ」

「フッ…まあ、構いやしないが。アンタ達はギルドマスターとして表沙汰に立ってんのを忘れんじゃないよ? 少なくともギルドで揉め事だけは起こさないでおくれよ」



 遅れて残りの2名も席から立ち上がり、部屋から退室していくのであった。



 

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