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9.別れと旅立ち

最終話です。

 ◆


 そして、彼女を送り出す。


 新幹線。


 彼女の両親、友達、そして僕は、新幹線に乗る彼女を見送る事になった。


「元気でな、アマネ」

「寂しくなったら帰っておいでね」

「うん、お父さん、お母さん!」


 涙のお別れだ。

 僕も泣きそうになってしまう。


「ミカケ! いつでも東京に来てね」

「おう! いつでも行くよ!」


 そして、ベルが鳴った。

 そろそろ出てしまう。

 僕は黙ってアマネを抱きしめる。


「アマネ。これからもずっと一緒だからな!」


 すると、アマネはついに涙腺ダムが崩壊し、


「うん! 東京でも頑張るからぁ!」


 ポロポロ泣き始めてしまった。


「それじゃ、また!」


 アマネは重そうなキャリーケースを引っ張って行く。

 僕は手伝おうか迷ったが、それよりももっと大事なことがあった。


「お父さん、お母さん。これからも、僕達のことをよろしくお願い致します!」

「あぁ。娘を頼むな」

「頑張りなよ」


 ――と、僕は出発する直前の新幹線に飛び乗った。



「え?」

「ん?」


 プシューと音がして、新幹線の扉が閉まる。


「ななな、何してるの! チケット買ってないでしょ!」

「え、買ってるけど、ほら東京行き」

「いつでも来てとは言ったけど、今日今すぐじゃなくて!」

「いや、僕も東京帰るよ」

「か、帰る?」

「うん。だって、僕の学校は東京だし」

「……!」


 途端、アマネは合点がいったようで笑い始める。


「AO入試!?」

「そ、ゆ、こ、と!」


 AO入試。

 専門学校に入る際に受けるテストの事だ。

 時期は秋頃に行われることが多いが、時折一月頃に行う事もある。

 僕は、『美術の専門学校』のAO入試を受けた……という事だ。

 で、落ちてたら進学せずにアマネの元で職を探す予定だった。

 アマネの脛を齧るみたいな格好悪いことがなくて本当に良かったよ。


「ちなみに、僕の家は既に引っ越し済みのピッカピカだ」

「そこまで計画してただなんて……! だから、東京に行けって言ったのね! あぁ、なんか私、バカみたい!」

「そうだよバーカ、父親にも母親にも騙されてたんだよ」

「そこまで根回ししてたの!? どうやって!」

「ん、青山さんからアマネの住所聞いてー、で、アマネさんの彼氏です、ドッキリ仕掛けたいでーす! って」

「バカすぎる! 本当にあり得ないんだけど!」


 と、アマネはぷんすかと自由席にドカンと座った。


「あの、ところでさ」

「何よバカ」

「今日、アマネの家に荷物置いたらさ、僕の家に来ない?」

「えっ」

「……一緒にお風呂に入ろうよ。ウチの風呂、広いからさ」


 すると、アマネは顔を真っ赤っかにしてポカポカ肩を叩く。


 だが、唇を尖らせながら、


「いいよ。別に」


 彼女のその表情があまりにも愛らしく、僕は頭が沸騰しそうになる程熱くなってしまった!


「か、可愛くねぇなぁ」

「ふん。でも、ちょっとだけ楽しみ」


 新幹線は走って行く。

 目的地は東京。

 そして、僕達の未来はまだまだ先にあるのである。


 ◆


 僕は、夢を追う事にした。

 隠していたが、僕は絵を描き続けていたい。


 気付けば、僕のパレットの上には黒と、モリモリになった白があった。


 黒は何にも染まらない。

 赤、青、黄色、何を混ぜても黒になる。


 ――ただ、白だけは違った。

 白だけは、僕のパレットを明るくしてくれるのである。


 ただ、君さえ居てくれればいいんだ。

 そう思えたのは、きっと君のおかげだよ。


 ありがとう、アマネ。


「はい、缶コーヒー」

「ありがと……カフェオレかーい」

「しっしっし。借りは返したぞ」

「そうだな。次からは僕が返す番だ」


 そうだな。

 僕のパレットだけじゃ、まだまだアマネの事を本当の幸せにはできないかもしれない。


 だから僕は思うんだよ。


 これからは、たくさんの色で僕のパレットを埋めなきゃ行けないなって。

 色鮮やかに彩る為に――。








 絵の具を探しに行こう。

 この、魔法のパレットを彩る為に。


 〜fin〜







あとがき


三時間で完成させた作品です。

筆が止まらず、一気に書き上げました。

ミカケとアマネが結ばれて本当に良かったです。

また、この世界観で続編も書く予定ですので、今後とも是非。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

是非、評価・感想をお願い致します。


また、これからも青春をテーマにした作品を投稿して行く予定なので、ぜひ私のフォローもよろしくお願いします。


また、レビューをしていただけたら作者が吹き飛びます。


では、また次回作でお会いしましょう。

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