3.赤と踏切
◆
僕は、ブラック派だ。
白木さんは、お子ちゃまカフェオレだ。
先生が、校門をガチャリと閉めると、僕達が二人でいる理由が途端に無くなった。
僕は自転車、白木さんは近くの電停を経由して帰るらしい。
「それじゃ、これで」
「え、嘘でしょミカケ君」
「ん?」
「乗せてってよ、電停まで」
「え、二人乗り!?」
「良いじゃん! 学校の坂道をスーって降りたところにあるから! たったの一分!」
「……けど、ほら、周りに人が多いから」
高校生ともなると、男女の二人乗りは照れる。
しかも、付き合ってないし。
「そんなの気にしてんの? お子ちゃまかよ!」
「いや、白木さんのそのカフェオレの方がお子ちゃまでしょ」
「ふん! 良いじゃん別に! 甘い物好きなの! とりあえず、乗せてってよ!」
と、白木さんは僕の自転車の後ろに跨った。
そして、僕の肩を両手で強く握る。
柔らかく、しなやか。
「なに、照れてんの? お子ちゃま」
「ち、ちげえし! じゃ、いくぞ!」
僕は地面を蹴り、いつもよりちょっぴりだけ重たい自転車を坂道の方へと流した。
思ったよりもスピードが出るが、涼しくて良い。
だが、背中は妙に熱いと感じる。
『黒井、もう少し他人と関わればどうだ?』
僕は、他人と関わるつもりは毛頭ない。
ただし、こんなにも無理やり付き合わされるとなるとそうも行かなかった。
と、僕は言い訳をしている。
街灯がちらつく。
黒と白が交互に混ざる夜の下校道は、実に清々しい。
「ねぇ、ミカケ君」
「なに?」
「恋バナしようよ」
「こ、恋バナ!?」
「そうよ! 悪い!?」
「いや、良いけど。特に僕は何もないよ?」
「ふーん。私はある」
「じゃ、言ってよ」
「何で私からなの! ミカケ君から!」
「だから無いって」
「何にも? 今、好きな人とかは?」
「好きな人は居ないよ。僕、ずっと一人だし」
「ふーん、そう」
車輪が回る音が響く。
周りの視線が少しだけ恥ずかしい。
そして、静寂。
電停。
赤い。
踏切の音。
「私は、今、居るよ」
呟き、白木さんは自転車を降りた。
僕は少し汗ばんだ背中を感じ、何故だか心臓が熱くなった。
「じゃ、また明日ね!」
「う、うん。また明日」
僕は白木さんに手を振ると、カッコつけて立ち漕ぎで坂を登っていく。
汗が止まらない。
今日、僕は白木さんに色々なものを奪われた気がする。
パレット。
椅子。
絵の具。
それと――。
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