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勇者編①変な夢


 ふう、変な夢を見た。なんだったんだろう。とりあえず起きよう。今日も槍を振るわなければ・・・。



 「おはようございます」

 シオンは早起きだ。いつも通り部屋に朝食を持ってやってきた。



 「おはよう」


 「まだ少し眠そうですね」



 「昨日変な夢をみてね」


 「変とは?」



 「吸血鬼が出る夢」


 「なるほど、それは嫌な夢ですね」



 「そうだよ。魔王と同じ種族だし」


 「はい」


 ふう、今日も朝食は美味しい。元の世界では一人で食べてたが・・・シオンと朝食を食べるのが習慣になりつつある。不思議と落ち着くのだ。シオンはお姉さん気質なのだろうか?お母さん・・・ってほどは歳が離れてなさそうだしね。



 「そういえば今までの勇者はどんな能力を持っていたの?」


 「色々ですね。炎を剣に纏わせたり、稲妻を飛ばしたり、有名なのはそんな所です。一番詳しいのは王様ですね。お会いされますか?」


 情報は必要だ。なんせ自分の能力はまだ不明。過去の勇者を知ることで参考になる可能性はそれなりにある・・・といいな。




 僕が王様に会えたのは三日後だった。




 「うむ」


 「過去の勇者の能力について教えて欲しいです」



 「うむ、シオンには聞いたか?」


 「炎や稲妻が有名だとは聞きました」



 「うむ、そうだな」


 「自分の能力を覚醒させるためにぜひ」



 「うむ、わりと多種多様なのだよ。戦闘に直接使える能力に目覚めた者とそれ以外の能力に目覚めた者がいる。そして後者の方が多いのだ」


 

 意外だ。勇者と言えばすごい破壊力のある攻撃で敵を薙ぎ払えそうなイメージがあった。



 「うむ、そうなのだ。例えば・・・変わった能力を挙げるとどこか遠くの声を聞こえるようになった者や、普通の人には見えない者が見えるようになった者もいる。千里眼のようなものだな」


 「なるほど」



 「自分の肉体を強化する能力、水や風や土を操る能力を得た者もいる。ただ、わりとバラバラなのだ。戦いを続けているうちに目覚めることが多いが、それ以外のことをしていて目覚めた者も一定数いる。故に必ずしも・・・能力だけを考えれば戦場に出る必要はないのだ」


 「わかりました。ちなみにレベルのようなものはありますか?」



 「レベル?」


 「戦い続け敵を倒し続けることで強くなるような」



 「無いとはいえない。たまに人間で突出して強くなるものが存在する。否定はできない。ただ確認はできん」


 「わかりました。ありがとうございます」



 「うむ、聞きたいことがあったらまた来なさい」


 王様は忙しそうだ。とりあえず聞きたいことは聞けた。また来よう。


 こうして僕の日々はゆっくりと流れていた。




・・・・・・・・・・




 まだ僕は自分の能力に目覚めていなかった。少しだけ焦っていた。敵は強い。幸い僕も少しずつ成長している。


 だが、顔を合わす魔王軍の強大さを見ると焦るのだ。今は魔王軍が手を抜いているからいい、だがもし本腰を入れて攻めてきたら?その時点でもう終わりだ。


 僕は焦燥感に駆られていた。僕の中のシオンが少しずつ大きくなるうちにその焦りは大きくなっていった。




 「王様、お願いがあるのです」


 「うむ」



 「僕が召喚されたあの場所を見学させてください」


 「・・・・・・なぜだ?」


 王様は歯切れ悪かった。相変わらず無表情だったが、どう見ても乗り気ではなかったのだ。



 「能力に目覚めたいのです。僕が召喚された場所を見ることで何かのきっかけになれば・・・そう思ったのです」


 「・・・・・・今すぐは駄目だ。少し待ちなさい」




・・・・・・・・・・




 王様にお願いしてから一週間後だった。ようやく僕はあのときの場所にいた。



 へえ、最初は周りをじっくり見るような余裕がなかったけど、この部屋は正六角形の形をしているのかな?うん、測ってないからわからないけどそんな感じがする。


 なんだろう、部屋の中はどこを見ても凄くきれいだけど掃除したのかな?僕は掃除で一週間も待たされたのだろうか。別に汚れてても気にしないのにね。


 なんだろな、何箇所か大きな穴が地面にあいている。穴の大きさは2メートルくらいだろうか。


 穴の数は6個あった。なんだろう?召喚のためのお供物でもこの穴に入れるのだろうか?もしそうなら結構大きなものだな。僕は見学を済ませた後、王様に質問することにした。



 「王様、あの穴は何を入れる穴ですか?」


 「うむ、あれは勇者召喚システムを起動させるためのそうだな。言うならば燃料のようなものを入れる穴だよ」



 へえ、僕の想像は当たっていたな。やっぱりそうだったか。


 「具体的には一体何を入れるのですか?」


 「うむ、そうだな。大したものではない。この国でよく取れるものだよ。安いものではないのだが・・・そうだな。そこまで高くはない。その程度のものだ。勇者が気にするようなことではない」



 王様は具体的に何を入れるのかは教えてくれなかった。まあ、あの口ぶりならそれほど負担は大きくないのだろう。


 それにしても一定のコストを払ってどんな能力を持った勇者が現れるかわからないのか。まるで転移前に流行っていたゲームのガチャみたいだな。僕はちょっとだけ笑っていた。




 

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