サイドストーリー ドミさんの恋あるいは愛
「久しぶりだね」
「・・・・・・」
「まだそうしているのかい、ロマ」
「・・・・・・」
「辛いのはわかる。わかるとも」
「・・・・・・」
「君とは古い付き合いだ。君の身に何があったかも知っている」
「・・・・・・」
「だが、だがね・・・いつまでもそうしていても・・・何も解決しないだろう」
「・・・・・・」
「初めて会ったときのことを覚えているかい?つい昨日のことのように・・・吾輩は覚えているよ」
「・・・・・・」
「美しかった。君はとても美しかった。必死だったな。何かを求めて必死な君の姿を見たとき・・・吾輩は初めて恋を知ったよ。あるいは愛かもしれないな」
「・・・・・・」
「吾輩は君を見捨てないよ。他の誰が見捨てようとも・・・たとえ君自身が自暴自棄になり何度も捨てようとも。吾輩だけは君を見捨てない。君の笑顔が見たいんだ。もう一度見たいんだよ」
「・・・・・・」
「ロマ、そうしていても何も変わらない。あの子たちを見なさい。辛いことがあっても必死に頑張ってるじゃないか。詩音を見なさい。あれほど辛いことがあっても必死に生きている・・・まるで昔の君のようだよ。なあ。諦めるなロマ。諦めたら駄目だ、ロマ、諦めの先には何もない。何もないんだよ」
「もう・・・放って・・・おいてくれ」
「だめだよ。君を放っておけない。そんなにつらそうな顔をしている君を・・・放っておくことなんてできない」
「お願いだ・・・もう・・・死にたいんだ」
「ロマ・・・残酷なことを言う。君は死ねない。何をしても死ねない。死ぬことは諦めろロマ。そして生きて幸せになるんだ。あの子達のように、幸せになれるように・・・悲しいじゃないか。ずっとそのままでいるのか」
「頼む・・・お願いだから・・・頼む」
「・・・また来るよ。身体を大切にしなさい」
「・・・・・・」
男は去っていった。どんな表情をしていたかはわからない。ただ、おそらくは・・・きっと苦い顔をしていただろう。
ロマはいつまでも顔を伏せていた。何もかも諦めていつまでもいつまでも・・・顔を伏せていた。




