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サイドストーリー 第三次おっぱい大戦


 「肩が重いです」


 戦争のきっかけはそんな何気ない一言からだった。




 世界で一番高い山がある。有名な山だ。名前はご存知だろうか?そう・・・ロマ山だ。別名はナイア山だ。


 標高は驚異の98センチだ。



 これはもうどうしょうもないほどのぶっちぎりに高い山だった。畏敬の対象であり敵対心を抱くことすら恐れ多い。そんな山だった。




 では世界で二番目に高い山はなんだろう?


 それはかの有名な詩音山だ。かつては89センチだった。それでも脅威だった。


 ところが、ところがだ。最近の自然環境の変化により詩音山は気付けば93センチになっていた。


 そりゃあ肩も重くなるだろう。俺の膝に乗りながらそんなことを言っていた。



 それだけならまだ何も問題はなかった。では次だ。



 目の前には2つの山があった。世界で一番低い山と二番目に低い山だ。


 二番目に低い山は妹山だ。別名リサ山ともいう。


 標高は驚異の72センチだった。恐るべきことに2年ほど全く高さが変わっていなかった。鳥の胸肉を食べようと牛乳を飲もうと何も変わらなかった。そんな恒常性に優れた山が妹山だ。



 では、一番低い山はなんだろう?それはかの有名なアリシア山だ。出会った当初は驚異の標高71センチだった。妹山以下のいわば砂山だった。


 ところがだ。アリシア山の持ち主は努力家だった。頑張り屋さんだった。その結果アリシア山は標高69センチにまで減退した。多分頑張りすぎた。努力が裏目に出た。



 状況の整理は終わった。さて、小競り合いはリサ山の噴火から始まったんだ。




・・・・・・・・・・




 「なにそれ?自慢?」


 リサの声は刺々しかった。


 最近の詩音はリサを煽ることを覚えたらしい。どうしてそんなことをするのか聞いてみたんだが、リサのことは嫌いではないが恨みがあるらしい。


 欲しくて欲しくて仕方ないものを散々見せびらかされた恨みがあるそうだ。だから、ついついちょっとした復讐でリサ山に火種を注いだらしい。そんなことを後日俺の膝に座りながら言っていた。



 「いえ、事実を言っただけですよ」


 「へえ」


 

 「リサさんはいいですね、お兄さんに甘えたら肩を揉んでもらえるのでしょう?知ってますよ」


 「・・・」


 機嫌の良いときのリサはわりと甘えただった。人目のないとき限定だったが理不尽にあれしろこれしろとよく言われたものだった。だが、なぜそれを詩音が知っている?見てたのか?


 「私は家に帰ったら一人ですから、肩を揉んでくれる人が家に欲しいです。お兄さん、一緒にお家に住みませんか?三食ご飯出しますよ。お小遣いも出ます。もう働かなくていいですよ。一生家にいればいいです。むしろそうしてください」



 なんだろう・・・ある時期から急にやたらと同居を勧めてくる。週3回勧誘されている。ひどいときは週7回勧誘されている。とりあえずスルーしたいが出来ないのが辛い。スルーするとほっぺたを膨らますんだよな・・・可愛いんだがスルーすると不機嫌になるから後が怖い。



 この前のことだ。俺がついつい詩音との約束の時間に遅れたことがあった。寝坊したんだ。うっかり疲れすぎてて寝坊したんだ。


 起きたら何故か枕元に詩音が座っていた。こちらを見つめて座っていた。一瞬座敷わらしでも出たのかと思って喜んだがよく見たらどう見ても子供じゃなかった。あと、明らかに詩音だった。


 どうやって鍵を開けたのか聞くのが怖い。最近束縛が強くなってきた気がする。ある意味、ワガママを遠慮なく表に出すようになってきた。いい傾向なのだろう。俺の理性は果てしなくしんどいけど。自由な自慰の時間がほしい。貞操帯をつけていても辛いものは辛いんだ。最近ブラジャーの素材をワイヤー入りのものから柔らかい素材のものに変えやがったんだ。抱きついている時の俺の反応を見て変えたらしい。


 極めて悪質な犯行だった。



 さて、考え事をしていたらアリシア山の持ち主が何故かワナワナと震えていた。怒りを抑えるように震えていた。珍しい。基本的に内罰的な性格をしているアリシアだ。他人に怒ることなど見たことがない。



 「わ、私も・・・肩がこりました」



 空気が凍った。一番肩が軽そうなアリシアが告げた言葉にリサの表情が凍っていた。



 「勘違いなのでは?明らかに軽そうに見えますよ」


 詩音が容赦なく突っ込んでいた。何故か理由は知らないが、詩音はアリシアに冷たかった。初対面から不倶戴天の敵の如く冷たかった。


 最初は普通だったんだ。アリシアと俺が会話しているのを見た瞬間からものすごく冷たくなった。廃ホテルで初めて会ったときの目よりも冷たい目でアリシアを見ていた。



 「か、肩が・・・重いです。う、嘘じゃないです。とっても重いです」


 やめてくれ。明らかに無理がある発言はやめてくれ。聞いてて辛い。あと、いい加減もう少しコミュ障を治せ。身内以外にもちゃんと話せるようになってくれ。


 

 頼む。誰か助けてほしい。空気が重い。誰か来てくれないかな。



 「おやおや、仲良くやっているね。いいことだ。とてもいいことだよ」


 ドミさんだった。最近仕事がうまくいっているらしくご機嫌のドミさんだった。わりと世話焼きで頼りになる人だった。俺はドミさんを見つめた。助けを求めて見つめた。


 「おやおや、若いねえ。今から大乱交かい?ちゃんと避妊はするんだよ。まあ出来たら出来たでそれはそれでいい。家族が新しく生まれるのはいいことだ。良かったら私が名付け親になりたい。ちゃんと考える。幸せになれるように考える。君たちには幸せになって欲しいんだ。そうだ知ってるかい?画数とか大事だよ。学校に通ったときにね、変に虐められたりしないようにあまり変な名前はよしたほうがいい。例えばそうだな・・・詩音の子供なら・・・そうだな、詩音のシをとって女の子なら汁婆(シルバー)、男の子ならシコルスキーとかいいんじゃないか?」


 最近質の悪いブラックジョークにハマっているドミさんだった。聞いた瞬間不味いと思った。明らかに駄目な親がつける名前だった。そして言った相手が悪かった。あまりにも悪かった。


 ふと見ると詩音は黒光りする鈍器を振りかぶっていた。とてもとても大きく振りかぶっていた。


 ドミさんは遠い遠い星になった。



 死んだなと思ったが普通に生きていた。


 

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